「座頭市」のあらすじ・解説

2017年10月1日

ミュージカルと時代劇の融合!タップダンスに金髪、新時代の座頭市!

座頭市 <北野武監督作品> [DVD]

座頭市 <北野武監督作品> [DVD]

  • 2003年9月6日公開(北野武監督10作目)
  • 監督・脚本:北野武
  • 出演者: ビートたけし、浅野忠信
  • 音楽:鈴木慶一
  • 北野映画最大のヒット作(興行収入28億)
  • 国内外で多くの映画賞を獲得。ヴェネチア国際映画祭では銀獅子賞(監督賞)受賞。
    ※参考:「座頭市-受賞」(wikipedia)
  • 監督が演芸場時代に身につけたタップダンスや殺陣が、作品の中に取り入れられています。
    ※参照:「ビートたけし-前座時代」(wikipedia)

「座頭市」あらすじ/ストーリー

 金髪に朱塗りの杖を持つ、盲目の按摩・座頭の「市」(ビートたけし)。ある宿場町に訪れた市は、野菜売りの「おうめ」の家に世話になる。町の賭場にておうめの甥で遊び人の新吉と、両親を盗賊に殺された芸者姉妹と出会い、町がヤクザの銀蔵一家に支配されていることを知る。
 一方で、病身の妻を持つ、職を失った浪人「服部」(浅野忠信)が町に辿り着き、その腕を買われて銀蔵のもとで用心棒として雇われる。その後彼は飯屋で市と出会い、互いの腕を認め合う。

 優れた聴覚を持つ市は、新吉と共に賭場で稼いでいたが、イカサマを見ぬいたことで、ヤクザともめてしまう。そして、芸者姉妹の仇が銀蔵一家であることを知って、一家壊滅に乗り出す。やがて市と服部は、仇討ちと用心棒という形で決闘をすることとなる。

 

「座頭市」感想

王道の娯楽作品の中で、時代劇とミュージカルを融合

 北野監督も語っているように、座頭市は「娯楽作品」の要素が強い。まず目立つのは、お客さんが観やすく作っていること。北野映画の中ではセリフも多く、登場人物が説明的なセリフを言う箇所もある。また、リメイクということもあるが、ストーリーや設定もシンプルであり、オーソドックスな時代劇と変わりない。その辺が良い意味で「娯楽作品」であり、結果として国内でも広く受け入れられたのだと思う。

 それを踏まえて感想を言えば、座頭市は「典型的な時代劇の中で、どのように人を楽しませるか、どのようにして新鮮さを出すか」を追求した映画だと思う。そして、その方法として、時代劇とミュージカルの融合という形をとっている点がユニーク。映画の中では、例えば数人の農民が畑に鍬を指す音が、そのままBGMになっていくシーンがある。他にも、町の人々が集団で行うタップ、芸者姉妹の三味線と踊りなど、「和風ミュージカル」とも言える作品に仕上がっている。

音へのこだわりと、殺陣シーンの面白さ

 他にも気になったことは、主人公が盲人ということで、「音」を強調した映画だという点。農作業の音、刀の音、博打のサイコロの音、雨の音、大工の金槌の音など、至る所で印象的な音が鳴っていて、物語にアクセントを加えている。他にも見どころはたくさんあって、一つ挙げれば、殺陣シーンは見もの。主人公の市は居合の達人ということで、一瞬で勝負はつくんだけど、いろいろな斬り方、殺し方を見せてくれる。特に、服部と顔合わせするシーン、賭場にて暗闇の中での殺陣シーン、服部都の決闘のシーンは見もの。また、人以外にもいろいろな「物」を斬るのも面白い。

アイディアの勝利

 リメイク作品かつ、勝新太郎と言う大スターの演じた役を自身で演るというのは、はっきり言ってかなりハードルが高い。そこで作品を全く違う角度から捉え、斬新な表現方法を編み出したのは、本当にすごい。「こんなの時代劇じゃない」とか、「時代劇の登場人物が金髪なのはおかしい」なんて批判もあったらしけど、そんなのは全くのナンセンス。

 勝手な推測だけど、おそらく最初にテーマとか表現方法があって、それが上手くハマりそうな作品として時代劇、そして座頭市が出てきた。そういう流れでできた作品なんじゃないか。そうじゃなくても、少なくとも最初から「座頭市やりたいなあ」なんて考えてなかったと思う。だからこそ、思いもよらない「座頭市」が出来上がったのだろう。

 なにはともあれ、とても面白い作品なので、必見です。

 

北野武監督のインタビューから見る「座頭市」(解説・撮影秘話・映画論)

物語 」(北野武)より

撮影のきっかけやテーマについて

  • 浅草の齋藤ママ(齋藤智恵子/浅草ロック座会長)ってのがいて。昔、勝さん若山(富三郎)さんの面倒見てた人で、ほいで、映画化の権利、持ってたの。で、勝さん亡くなって、今度は俺んとこ来ちゃってさ。「これからはたけしのスポンサーだ」なんて言いだしちゃって、弱ったなと思ってたら、「座頭市」を撮ってくれって話になって。
  • あの勝さんをそのままやってもしょうがないじゃない。ほいで、全然違う……「もうアニメの世界だ」っつって(笑)、金髪の、赤い鞘のやつにしちゃったの。あと、下駄でタップやるの、おもしろそうだから。それだけなの、もうほとんどミュージカルみたいなことになんねえかなあと思って。
  • どうせ撮るんだったらものすごい難解な「座頭市」をやってやろうか、と思ったんだけど。でも、それをやると、相当、敵作るなって思うじゃない。そうすっと、「娯楽だな、これ」って、もう完全にそっちに振って。アクションとか音楽とかタップとか、そういう映画になっちゃったけど。

脚本・ストーリーについて

  • あれはほんとに、オーソドックスな娯楽映画の脚本だよね。悪い親分がいて、その黒幕がいて……(中略)敵の剣豪がいて、最後に座頭市と戦うのは間違いないわけで。それで、必ず悪い代官やなんかがいるじゃない? それを入れると、もうだいたい、あんな台本だよね(笑)。
  • 表向きの親分がいて、それと関係ないヘコヘコっしてる奴が、実は裏の親分、っていう。それから、あの女のフリをしてる弟は、大衆演劇の橘大五郎って役者が踊りうまくてさ、そいつを出したいと思って。で、女の姉妹で、肩っぽは実は男で、復讐に燃えていて。それは、黒幕の奴らを狙ってて、それにいつの間にか座頭市が巻き込まれるためには、そのふたりが座頭市の金を盗ろうとする、とか。(中略)だからもう、すごい定番だよね。

勝新太郎の「座頭市」との違いについて

  • 「座頭市」って、勝さんひとりの芸でもってた映画が多いんで。勝さん出ずっぱりでさ。でも、俺の場合は、俺ひとりじゃもたねえもの。とても俺ひとりでやれない。イヤでしょうがなかったもん、セリフ言うのが。もう、めんどくさくてめんどくさくて、その前にもう斬っちゃおうとかさ、ダンスでごまかすとかさ。(中略)サイコロの音でイカサマに気づいて、サイコロ切ったり、ロウソク切ったりするのもさ、もう、なるたけしゃべんないうちにパッパッてやってさ。
  • なるたけ勝さんがやってた座頭市を忘れよう、真似しないように、っていうのあったよね。一発でも同じようなことやると、客は引くと思うからね。
  • あの、最後で座頭市が目ぇ開けちゃうのは……あれはだから、目ぇ開けるんだけど、開いてて見えない人もいるじゃない? 目が開いてるけど、つぶってないだけであって、本人は見えてないかもわかんないというか。見えたのか、見えないのかっていうのがわかんないような、いたずらをしてんだけど。(中略)座頭市って、基本的には目つぶってんじゃない? あれがなんかおもしろくなくて。目ぇ開いちゃったほうがおもしろいなと思ったんだけど。(中略)で、最後、転ぶじゃない? そうすっと、わかんなくなるでしょ。
  • 最後はあの黒幕を斬らなきゃいけないんだけど、あれ殺しても、なんかねえ、インパクトないんだよね。当たり前の構図じゃない。いちばん悪いのが、最後に斬られて、祭りになるんだから。そこが、もうちょっとひっかかるようにしときたくて、ああいう終わり方にしたんだけど。