「その男、凶暴につき」のあらすじ・解説

2017年10月1日

後の名作「HANA-BI」へとつながる、記念すべき監督第1作目!

その男、凶暴につき [DVD]

その男、凶暴につき [DVD]

  • 1989年8月12日公開(北野武監督1作目)
  • 監督:北野武、脚本:野沢尚
  • 出演者:ビートたけし、白竜、川上麻衣子
  • 音楽:久米大作
  • 当初は深作欣二監督、ビートたけし主演、野沢尚脚本という予定のところ、紆余曲折あって自らメガホンを取ることになり、監督デビューを果たした。

 

「その男、凶暴につき」あらすじ・ストーリー

 刑事の我妻(ビートたけし)は、捜査のためには暴力も辞さない人物であり、凶暴な一面をもっている。そんな彼には精神病を患う妹と、数少ない理解者である同僚の岩城がいた。
 ある日、警察署管内で麻薬の密売人が殺され、走査線上に実業家の仁藤と殺し屋の清弘(白竜)が上がった。しかし、その一方で、ある人物が彼らに麻薬を横流ししていたことが明らかになる。

「その男、凶暴につき」感想

 初監督作品ながらその完成度が高く、後の北野映画の原型とも言えるのが「その男、凶暴につき」です。セリフの少なさ、突発的な暴力、予定調和のないリアルな描写など、北野映画の特徴がしっかり出ています。また、主人公は警官ですがヤクザが登場するということで、北野映画の代名詞である「ヤクザもの」でもあります。

 さらに、ヴェネチア国際映画祭でグランプリを受賞する「HANA-BI」との共通点が非常に多いです。警官が主人公で、病気の女がいて、大切な同僚を失い、個人的な事情から辞職し、ヤクザと殺し合いをする。このように、「HANA-BI」の原型とも言える作品でもあります。

 個人的には、初めて見た北野映画ということで、強く印象に残っています。これまで何度も見てきましたが、無駄な説明が無く、テンポよく進んでいくストーリーは、いつ見ても新鮮です。

 

北野武監督のインタビューから見る「その男、凶暴につき」
(解説・撮影秘話・映画論)

物語 」(北野武)より

撮影のきっかけについて

  • 「その男、凶暴につき」は、俺じゃなくて、野沢尚さんの脚本なんだよね。最初は深作(欣二)さんが監督で、俺が主演ってことで始まったんだけど、深作さんが俺のスケジュールと合わなくて、結局、俺が監督やることになって。すると、「この台本じゃ、俺、やる気ない」って。それで、刑事(ビートたけし)が主人公で、「その男、凶暴につき」というタイトルだ、ってとこ意外はどう変えてもいい、ってことになったのよ。

ストーリーのつくり方について

  • まず、ハッピーエンドには、絶対ならないっていう。それで、暴力使う奴は死ぬ、っていう設定だから。だから、主人公は殺されるか、死ぬか。で、不幸な女がいる、っていう。まあ3人いるじゃない、キャスティングが。それが前提で、じゃあストーリーをどうしようって、新聞の4コマ漫画みたいに考えるの。そうすると、妹も本人も死ぬってのは、起承転結の「結」になるじゃない? で、その4コマ漫画の題材が刑事ものってなると、刑事、悪い奴、ひっくり返った、死んだって、って作るだけだよね。
  • 話をおもしろくしようってことは、考えなかったね。刑事の主人公が、ああいうマヌケな死に方で死んでいくなんてのは、日本の映画としては新しいだろ、っていうようなのはあったけど。途中の、便所でボコボコ殴るシーンとか、ああいうのは絶対おもしろいと思ってた。おもしろいっていうか、今までにない撮り方だろうなあって。
  • しゃべんなくていい、っていうのが、映画の基本だと思うんだよね。(中略)普通の映画で、セリフ多いのあるでしょ? あれは映像が悪いんだよ、と思うしね。

イントロとラストの橋のシーンについて

  • たとえば、「その男、凶暴につき」の、最初の1枚の写真は……あれは、タイコ橋のシーンだよね。丸い木の橋。あれを上ってきて、頭からだんだん見えて、2回目は違う奴が上がってくるっていう、あの画かな。(中略)イントロがあって、あそこを我妻が歩いてくると。で、最後に我妻の部下の奴があそこを歩いてくる、っていうのは、サンドイッチみたいに、最初と最期をこれではさんじゃおう、って
  • あそこはね、かなり象徴的なのよ。タイコ橋に上がってきて、頭がちょっと見えてきて、全体が見える、っていう。それで今度は、横歩きになる。で、顔が見えなくて、首から下だけになる、とかね。