【70年代前半】洋楽ロックの歴史と年表②[出来事,事件,ムーブメント]

2018年3月7日

新時代を告げるバンドの登場(1969年~)

 ビートルズの解散は当然ながらロック界に変化をもたらした。解散と前後して、多数の新時代のアーティストが登場し、わずか1、2年でロック界は大変貌を遂げる。楽曲構成は複雑化し、サウンド面でも急激にレベルが上っていく。ビートルズは60年代にロックの可能性を大きく開いたが、それを凌ぐ勢いでロックが質・量共に進化していく。

ハード・ロックとプログレッシブ・ロック
レッド・ツェッペリンとキング・クリムゾン

 象徴的だったのは、1969年にデビューしすぐに全盛期に入ったレッド・ツェッペリンとキングクリムゾンだろう。この二つのバンドは共に、70年代前半に黄金期を迎えるハード・ロック、プログレッシブ・ロックの顔、あるいは創始者と言われることもある。

レッド・ツェッペリンの衝撃

 ハードロックの始まりは諸説あるが、レッド・ツェッペリンの音楽性にその多くの要素が含まれている。ギターの強調(ディストーション、ギターソロ)、低音の強調、大音量、シャウトの多用、ブルース・ロック。これらの要素を概ね持っていればハードロックと呼んでいい。もう一つ上げるとすれば、アンプなどの音楽機材の性能向上もハードロック誕生に関係がある。

 レッド・ツェッペリンはまた、他のハードロックバンドと比べて類稀なる演奏力・表現力を持ち合わせていた。印象的なギターリフを生み出すジミー・ペイジ、圧倒的な歌唱力のロバート・プラント、ロック史に残る名ドラマーのジョン・ボーナム、多彩なプレーとセンスを有するジョン・ポール・ジョーンズ。独特のリズムと即興性を有する演奏とブルース色の強い楽曲と、特異性を上げればキリがない。デビュー作で爆発的なヒットを記録し、あっという間にシーンの最前線へ躍り出た。フォロワーも非常に多く、70年代以降のハード・ロックバンドはもれなく彼らの影響を受けていると言っても過言ではない。

革新的なスタイルを確立したキング・クリムゾン

 プログレッシブロックもまた、その起源は諸説ある。しかし、その名をインパクトを持って認知させたのは間違いなくキングクリムゾンである。こちらもデビュー作でいきなりロック史に残る傑作を残した。こちらもプログレッシブロックが持つ要素を万遍なく持ち合わせており、ジャズやクラシック音楽の要素を取り入れ、詞的・哲学的な歌詞で芸術性を付与し、圧倒的なテクニックでロックを全く別の音楽に生まれ変わらせた。

 一方で、キングクリムゾンはハードロック的要素も持っていた。ハードロックを超えてメタル的とも呼ばれるハードなサウンドは、当然ながら後のへヴィ・メタルへと影響を与えている。

コンセプトアルバムの時代

 70年代の2つのロックジャンルにはコンセプトアルバムという特徴的なアルバム構成がある。そのまま「コンセプト」を持ったアルバムと解釈すればいいが、あらかじめテーマがあり、それに沿って楽曲が構成され、多くの場合アルバムの楽曲を通じて物語を形成している。あるいは、各楽曲が組曲のように関連性をもち、アルバム全体で一つの楽曲になっているというスタイルだ。このスタイルにもまたまた起源は諸説あるが、世界一有名なのはビートルズの『サージェントペパーズ』、早いうちに取り入れたバンドとしてはキンクス、現在でも舞台化がなされるザ・フーの『トミー』などがある。デヴィッドボウイもジギースターダストを始めとして多くのコンセプトアルバムを世に送り出した。

 コンセプトアルバムは、70年代に主にプログレバンドによって量産される。その中でも名前を上げなくてはならないのはピンクフロイドである。67年にサイケデリックロックでデビューし、間もなくリーダーのシドバレットが薬物中毒・精神不安で脱退。70年代に入って全く別の音楽性をもって音楽シーンを席巻したバンドだ。彼らが73年に発表した『狂気(Dark Side of the Moon)』は、現在に至るまで世界中のアーティストがアルバム制作をする上で必ず通る「洗礼」のような作品となっている。見事な楽曲構成でコンセプトアルバムを完成させ、70年代における金字塔となった。

 余談だが、当時プログレを好んで聞いていた世代には、大学生がいた。ティーネイジャの時代にビートルズを聞き、20代になって有名大学へ進んだインテリ集団だ。大学時代というのは小説や芸術にそそられるもので、それがあってこそ難解な曲や芸術志向の音楽が許容されたのだ。

ハードロック、プログレのバンドたち

【ハード・ロック】
  • 70年代前半
    • ザ・フー
    • レッド・ツェッペリン
    • ディープ・パープル
    • ブラック・サバス
  • 70年代後半
    • エアロ・スミス
    • クイーン
    • ラッシュ
    • AC/DC

 主だった顔触れはこんなところだろうか。多くがイギリス人バンドで占められる中、エアロスミスはアメリカ、ラッシュはカナダ、AC/DCはオーストラリアと、国籍も多様化してくる。

 改めて見てみると、やはりビッグネームが揃っていて、どのバンドもロック史に残る傑作を少なくとも1枚は残している。中でもレッド・ツェッペリンとクイーンの活躍は目覚ましいものがある。世界的に成功し、500万枚以上の売上を記録したアルバムを何枚も出している。

 とりわけクイーンは個別に項を設けて説明したいくらいだが、それは個別のまとめ記事に任せることにする。今後の年表でも良く顔を出すので、そちらも参考に。

【プログレッシブ・ロック】
  • 5大プログレバンド
    • ピンクフロイド
    • ジェネシス
    • イエス
    • キングクリムゾン
    • エマーソン・アンド・レイク・パーマー(ELP)
  • プログレもやるハードロックバンド
    • ザ・フー
    • ラッシュ

 ジェネシスは有名なアルバムを2枚くらいしか聞いたことがないので、年表には載せていない。しっかり下調べができてからにしようと思う。

 プログレをやるバンドは広い意味ではもっといるが、ザ・フーとラッシュがとりわけ重要。ザ・フーは早いうちからプログレ的要素を取り入れていたし、ラッシュは初期はもろにプログレバンドである。この辺についてはそもそもの話になるが、80年代以降はハードロックとプログレ混合のバンドや、その音楽性の中に両方を内包しているへヴィ・メタルが登場する。そういう意味じゃ、60年代から活躍しているザ・フーから入って、ハードロック、プログレ、あるいはパンクなどに手を伸ばせばいい。ザ・フーはそういう意味でもおすすめである。

去りゆくロックスター

ロックスターの死と27クラブ

 1970年前後は、ビートルズ解散や新たなロックジャンルの確立の他にも、時代の終わりを感じさせる出来事がたくさん起こっている。その一つに、60年代のロックススターの死去がある。そして奇妙な偶然は、27歳という年齢で皆無くなっていることだ。通称27クラブと呼ばれる面々は、ビッグネームばかりである。これはまあ単なる偶然だろうが、一時代の終わりを見る上で参考になる。

 ロックの歌詞には「年取る前に死にたい」というフレーズが随所に見られるが、本当に死んでしまう人は少ない。ある意味でロックの精神を体現したということで、こういったくくりが注目されるというわけだ。

 ちなみに、70年代の終わりにかけて、ロック界の名ドラマーが続けて同じ年齢で死去してしまう。ジョンボーナムとキースムーンだ。彼らは共にハードロックバンドの天才ドラマーであり、プライベートでは親友という間柄だった。両名とも所属バンドの音を支えるかなり重要なメンバーであり、両バンドは共に解散に追い込まれる。ロック界にはこういった偶然がたくさんある。

様々なジャンルの台頭

グラム・ロック(1972年頃)

 70年代に生まれたロックジャンルはハードロックとプログレだけではない。必ず押さえるべきものの一つに、グラムロックがある。アーティストをあげればデヴィッド・ボウイ、Tレックス、ルー・リードなど。

 グラムロックとは音楽性と言うよりはその見た目や容姿、パフォーマンスによるくくりである。グラム(glam)とは「魅力的な」という意味であり、男性ボーカルがアイシャドウなどの化粧をし、両性具有的な雰囲気を出してパフォーマンスするというもの。ただ、音楽的に全く共通点がないわけではない。

  • ギターを強調しつつ、シンプルでクラシカルなサウンド
  • 脱力的な歌唱、低音、ハスキーボイスなど特徴的な歌唱法
  • 人工的、都会的なサウンド、幻想的な世界観

参考:グラムロック – Wikipedia、『ロック史』北中正和(2017)第1版第1刷,立東社,pp162-165

 グラムロックを語る上ではまずはデヴィッド・ボウイを押さえるのがわかりやすい。彼自身のヒット作『ジギー・スターダスト』(1972)に加えて、ルー・リード『トランスフォーマー』(〃)、モット・ザ・フープルへの楽曲提供「すべての若き野郎ども (All the Young Dudes)」(〃)など、グラムロックの中心的役割を果たしている。

カントリーとシンガーソングライター

  • カーペンターズ(1969~83)(米)
  • ジョン・レノン(1969~80※ソロ活動)(英)
  • エルトン・ジョン(1969~)(英)
  • CCR(1968~76)(米)
  • デレク・アンド・ザ・ドミノス(1970~71)(英米)
  • イーグルス(1972~)(米)

参考:『ロック史』北中正和(2017)第1版第1刷,立東社,pp154-159

モータウンサウンドとファンク

 ロックの原型とでも言うべき黒人のブルース、ソウル、R&B、ゴスペルといった音楽は、ロックの成長の影響を受けてその姿を変えていき、各時代で名曲名盤を世に送り出してきた。80年代に入ってディスコやダンスミュージックがついに音楽シーンの最前線に出るのだが、70年代の時点でその兆候はあった。

 ファンク、フュージョン(ジャズ、ラテン音楽、ロック)、アフリカ音楽(アフロビートなど)といった新たなジャンルや要素が加わり、ポピュラーミュージックとの関わりをきっかけに大衆にも広がりを見せる。有名なアーティストとしては、マーヴィン・ゲイ(ソウル)やスティーヴィー・ワンダー(R&B、ソウル)などのいわゆるモータウンサウンド、ジェームス・ブラウン(ファンク、ソウル)、スライ&ザ・ファミリー・ストーン(ファンク)などなど。中でもスライ&ザ・ファミリー・ストーンはまさにロックの歴史の中での黒人音楽の変化を知るのにうってつけだ。

 リーダーのスライ・ストーンはアメリカ生まれの黒人であり、若い頃にロックを聴いて育った。バンドは白人黒人男女混成、デビューアルバムはサイケデリックロックとソウルが混ざっているといった具合だ。加えて、60年代のうちにすでにスターダムにのし上がり、黒人音楽の大衆への認知に多大な寄与をしている。

 フュージョンはもう少しあとの時代になるので、70年代後半にて。

つづき