「ツェねずみ」「クンねずみ」(宮沢賢治)のあらすじ・レビュー

2014年9月20日

宮沢賢治流「ねずみ落語」!

新編 風の又三郎 (新潮文庫)

もくじ

「ツェねずみ」「クンねずみ」のあらすじ

「ツェねずみ」のあらすじ

 古い家の天井裏に住む「ツェねずみ」は、何かにつけて文句ばかり言い、二言目には「弁償しろ」と言います。ある日はイタチに金平糖が転がっていると教えてもらいます。しかし、行ってみればすでにアリの兵隊が取り囲んでおり、持っていたまさかりで足をチクリとやられます。ツェねずみは途端に怒りだし、イタチに文句を言います。「君が余計なことを言ったせいで痛い思いをした」「弁償しておくれ」。ツェねずみはあまりにしつこいので、イタチは馬鹿バカしくなり、持っていた金平糖をすべてねずみにくれてやりました。

 

 こんなことばかりしているため、ツェねずみは友達をなくしていきます。そのうち、柱、塵取り、バケツ、箒といった道具たちと付き合い始めました。しかし、ここでもツェねずみは相変わらず。冬に向けて寒くなるということで、柱が親切心から鳥の毛のありかを教えます。ツェねずみは早速羽を集めにいきますが、その途中の急坂で転んでしまいます。

 「あなたが指図したばかりに」「僕みたいな弱い者をいじめるなんてひどい」。ねずみは強い口調で攻め立てたものですから、柱は怖がってしまい、それ以来口を利かなくなってしまいます。また、ある時はバケツが、同じく親切心から洗濯ソーダをプレゼントします。しかし、それで顔を洗ったところ、ねずみの髭が溶けてしまいます。ツェねずみは同じように怒りだし、「弁償しろ」という言葉を250回も言いました。次第に道具たちも、ツェねずみを見るたび顔をそむけるようになります。

 

 そんなツェねずみにも、まだ付き合ったことのない道具が一人だけいました。何とそれは、針金でできたネズミ捕りでした。ネズミ捕りはもともとは人間の味方だったのですが、今では役立たずのお払い箱。触るのすら汚いという不遇を味わっていました。そんなネズミ捕りは、同じく忌み嫌われているねずみに同情心を感じていたのです。

 ネズミ捕りは優しい声でねずみに呼びかけます。「美味しいエサがあるよ」「扉は押さえておくから」。何度も呼びかけるうち、ツェねずみは仕方なくエサを貰うようになりました。ネズミ捕りもまた、しっかり扉を押さえて、ツェが捕まらないようにしてあげました。しかし、ツェは相変わらず不愛想で、「食べに来てあげた」などと偉そうに言うのです。

 そしてある日、ツェねずみは、はんぺんが腐っていたことに文句を言い「弁償しろ」と始めました。すると、ネズミ捕りはついにカチンときてしまい、針金をギシギシ言わすほど怒ってしまいました。その拍子に、扉の鍵が外れてしまい、ツェは捕えられてしまったのです。

 

ネズミホイホイ

 

「クンねずみ」のあらすじ

 立派な家に住むクンねずみのもとに、知り合いのねずみが訪ねて来ます。ねずみは世間話をしつつ、時事問題について話し始めます。ところが、ねずみがどこかで見知りした小難しい言葉を使うと、クンねずみは決まって「エヘン、エヘン」と咳払いをし、相手の言葉を遮ります。それを何度も続けるので、ねずみは怖くなって帰ってしまいました。そしてクンねずみは、新聞を手にし、先ほどまで話していた相手の愚痴を言うのです。

 クンねずみは、議員になったねずみの記事を見つけては腹を立て、散歩道で二匹のムカデが親孝行な蜘蛛の噂を聞いて、再び「エヘン、エヘン」。そのまま、先ほど新聞で見た議員のねずみの元へと行きます。議員のねずみの議論は立派なもので、舌を噛むような難しいことばをすらすらと並べていました。クンねずみは頭に来て、さらに大きく「エヘン、エヘン」と咳払い。すると、議員のねずみ達は「分裂者だ」と叫び、クンねずみを捕らえ、縛り付け、処刑することにしました。

 捕らえられたクンねずみの元にはたくさんのねずみが集まってきて、「いい気味だ」と騒ぎ立てます。ところが、そこに猫が突然現れます。ねずみ達はたまらず逃げ出し、縛り付けられたクンねずみが取り残されます。クンねずみは、そのまま猫に捕らえられますが、運良く殺されることはありませんでした。ただ、その代わりに、子猫たちの家庭教師になるように言われます。

 子猫に囲まれて震えながらも、クンねずみは教師となり、計算を教えてやります。子猫たちは物覚えがよく、クンねずみが半年かかって覚えた計算を、ものの一瞬で理解しました。すると、クンねずみは気に食わない様子で、いつものように「エヘン、エヘン」と咳払いをしてしまいます。それが子猫の怒りを買い、クンねずみはあっという間に食べられてしまいました。

 しばらくして、親猫がやってきて、子猫たちに言いました。
「何か習ったか?」
「ネズミを捕ることです」

 

「ツェねずみ」の解説・考察

逆恨みのツェねずみ

 二つの作品はどちらも風刺もの、寓話ものの作品となっています。まず「ツェねずみ」ですが、この話は単純な見方をすると、他人の親切心につけこんで、傍若無人、利己的に振る舞う者を描いています。そんなツェが、どんどん友人を無くしていき、付き合う人間も変わり、最後は天敵とも言えるネズミ捕りが唯一の友人となるのです。

 性格に大きな問題を抱える人間でも、いくらか相手をしてくれる人は残っているものです。同じように問題を抱えている人間であったり、性格が優しすぎて気が弱いといった人間です。いわば最後の砦となる人物です。ネズミ捕りはツェのような利己的な者であっても受け入れようと言う、優しい心をもっています。しかし、そのような者を怒らせるとどうなるか? それがこの話のオチとなっています

 

性格破綻のねずみの行く末

 さらに深く読んでいくと、ツェのような利己的・自己中心的な人物は、どんどん友人を失っていきます。一方で、周囲を巻き込む力が強く、嫌われても嫌われても、何かしら付き合う相手を見つけます。ただ、付き合う相手のレベルは徐々に落ちていきます。最初は同じ動物だったのが、次は柱や掃除道具、最後は天敵であるネズミ捕りとなります。

 しかし、敵対する相手と付き合うとなると、何かの拍子に敵同士の関係に戻ってしまうことがあります。人間社会でも、気に食わない相手だがそれしか付き合う人物がいなかったり、気に食わなくとも自分に利益をもたらす人物はいるでしょう。しかし、普段から我慢して付き合っているために、積もり積もったものが何かの拍子に飛び出し、取り返しのつかないほどのダメージを受けるというわけです。

 このように考えると、この作品のすごさは、性格破綻者の行く末をリアルに描いていることとなります。

 

「クンねずみ」の解説・考察

  coming soon……

 

参考文献

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