月見呟(14)「C.Jと帰ってきた昔田」

2016年8月20日

「タンクトップ黒縁メガネ論」

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Andruw Jones by Keith Allison

 

 ギャップにはいろいろなものがある。いかつい顔した甘党の男だったり、童顔でドSの女だったり、まあいろいろある。最近のトレンドは、インテリと筋肉の融合だ。スポーツ選手なんかを見ても、筋肉質にお洒落なスーツを纏い、黒縁メガネなんかをする姿がよく見られる。スポーツ選手は、とことんフォーマルなファッションを追求すると、非常に格好がいいものだ。

 このパターンは逆でも通用する。IT系の細くて白い会社員が、ジムに2年ほど通ってガタイが大きくなるとなかなか味がある。あえて日焼けせず、白いままでいるのも面白いだろう。コンピュータばかりと思っていたけど、あなたって力持ちなのね! といった具合である(やる気なし)。

 

 

アメリカ留学でMBAを取得した昔田

 

「日本の偉人シリーズ(19)『月見 呟(つきみ つぶやき)』」

月見呟は、調理法から飲食店経営に至るまで、数々の革命を起こした伝説の料理人・経営者である。

料理に関する技術・知識・経験は間違いなく日本一であり、数多くの人材育成をし、世に名料理人を輩出したことでも知られる。

40代で料理人として一線から身を引き、様々な形で食に携わった後、50代で経営者・人材育成の道へと進む。そこで数多くの食材、人材、店舗の再生・復活を成功させ、後に月見再生工場と呼ばれるようになる。

経営者としての集大成は、日本有数のフードサービス・IT企業「コケックス」。その始まりは弁当屋だった。元事務員で後に右腕となる昔田、元運転手で後に人事部長となる飯口など優れた人材を発掘し、事業を拡大していく。

 

 岩手の農村で日本の農業を学ぶことにしたC.J。農場での実習と並行し、全国の農業について情報収集し、必要があれば全国から収穫物を取り寄せていた。始め彼は、アメリカ流の「大量生産、規格化、流通網の確保」が日本の農業を変えると考えていた。穀倉地帯で生まれ、シリコンバレーで数学を学んだ彼らしい考えだ。しかし、日本では事情が違った。アメリカほどの大量生産は土地の制約から無理であった。一方で、日本の作物はクオリティが高く、地域ごと農家ごとでの品質のばらつきは少ないために、規格化は容易であった。ほとんどの収穫物をそのままAクラスとして流通可能であった。

 

 日米の土地柄の違いはあるにせよ、C.Jは日本の農作物に大きな可能性を感じていた。ただ、彼はあくまでIT系のエンジニア。農業だって始めたばかり。祖父母が農家をやっていたため農作物の販売と農場の経営知識はあったにせよ、本格的な経営となるとお手上げだった。しばらくの間、彼は語学の習得と日本文化の理解に務めることとなった。

 

 留学生が最低限の日常会話を習得するまで、3ヶ月が目安だと言われている。岩手に移って半年ほど経過し、C.Jは岩手弁と民謡、宮沢賢治の詩を習得していた。この時点で彼は村人からひどく愛され、村長の孫であり、村一番の美人娘の婿に迎えようという話すらあった。そんな中、月見から連絡があり、ある日本人を村へ派遣すると話があった。今の君にとって、必ず役に立ってくれる人物だ、と。それこそ、あの昔田であった。

参考:月見呟(4)「策士昔田」

 

 昔田……今は名前も変わって、「新田」となっていた。30歳になった年、新たなことを学びたいと言い残し、彼はアメリカへ留学していたのだ。月見からすれば、昔田はアメリカで経営学でも学んで、そのまま現地で起業でもするんだろう。自分とのビジネスもここまでだ、といった具合だった。確かに、昔田はアメリカで本場の経営学を学んでいた。しかし、彼はMBAを取得するとすぐに帰国し、月見には内緒で会社の新しいプロジェクトへの参加を希望した。半ば強引に岩手のC.Jのいる農村へ向かったのだ。留学中に苗字を変えていたため、月見も彼の動きに気が付かなかったのだ。

 

 さて、留学を終えた昔田あらため新田は、その風貌が大きく変わっていた。ジムで鍛えられた厚い胸板、ノーネクタイにチノパンかデニム、メガネもコンタクトに変わり、時折インテリを思わせる黒縁メガネをかけるくらいになっていた。ただ、性格は相変わらず。鋭い洞察力と観察力、頭脳明晰でずる賢かった。そんな新田は、C.Jと不思議と馬が合った。合理主義のアメリカでは、ずる賢さや利益を優先する考えは、至極当然のものであったからだ。むしろ、理知的でちょっと皮肉屋の新田を、C.Jはひどく気に入っていた。かくして、岩手訛りの黒人とインテリ策士の日本人という、最強のコンビが出来上がったのである。

 

 さて、後でまた話をするのだが、農業BIG3の三人目は、何を隠そうこの新田である。生産の田畑、販売のC.J、経営の新田。C.Jと新田は同じ場所でタッグを組んで業務にあたっていたため、その境界線は曖昧なところがある。その辺については、また次回。

 

続く

今日の格言

「友人や知人となるには理由が必要だが、親友となるのに理由は必要無い」(新田)

 

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