月見呟(12)「農天気と農業BIG3」

2016年9月3日

「努力と才能の狭間」

田中将大 KISEKI プロ7年間の軌跡と奇跡の無敗記録 [DVD]

 

 最新の科学技術を持ってしても、純度100%の物質を人工的につくることはできない。では、100%とは一体何なのか? それは、はじめから純粋なものとして「そこにあるもの」なのだ。意図してつくることはできない。まさに、天からの授かりものである。それが100%だ。もし意図してできた100%があるなら、それは一人の力ではない。助け合いによって生まれた100%なのである。

 

 

収穫率100%無敗の男「田畑将王」

「日本の偉人シリーズ(19)『月見 呟(つきみ つぶやき)』」

月見呟は、調理法から飲食店経営に至るまで、数々の革命を起こした料理人・経営者である。

料理に関する幅広い技術・知識・経験を生かして数多くの人材育成をし、世に数多くの名料理人を輩出したことでも知られる。

40代で料理人として一線から身を引き、様々な形で食に携わった後、50代で経営者・人材育成の道へと進む。そこで数多くの食材、人材、店舗の再生・復活を成功させ、後に月見再生工場と呼ばれるようになる。

経営者としての集大成は、日本有数のフードサービス・IT企業「コケックス」。その始まりは小さな弁当屋だった。元事務員で後に右腕となる昔田、元運転手で後に人事部長となる飯口など優れた人材を発掘し、事業を拡大していく。

 

 日本中の田舎の農家をIT化し生産・販売・経営まで管理、ネット上の架空の市場でそれらを繋ぐ……新城と月見の雑談から生まれた事業『農天気』。今では株式会社コケックスの顔とも言える事業だが、それを支えた優秀な農家がいる。彼らは日本の農業を変えた「農業BIG3」として今も語り継がれている。

 

 農業BIG3のうち、生産面で農天気を支えたのが田畑将王(たばたまさお)である。田畑将王は、農業の本場とも言える東北で、特殊な栽培方法を長年行っていた。1つは音楽農法である。その始まりは「雨にも負けず風にも負けず」で知られる宮沢賢治の詩の朗読を録音し、四六時中畑の真ん中で流し続けたというもの。過酷な環境、恵まれない境遇に耐え、荒地ゆ根を張ろうというその詩で、野菜のメンタルを向上させようという、あまりに現実離れしたアイディアであった。しかし、不思議なことに詩を聞いた作物たちは見る見るうちに強く育っていった。

 

 考えてみれば、音は波長でありエネルギーを持ち、他のものに物理的な影響を与えることができる。詩の波長が植物にぶつかり、その刺激がなんらかの好影響を与えるという可能性は否定できないのだ。

 

 そんな奇妙な農法を独自に発展させ、田畑はロックを基調とした音楽農法にたどり着く。その方法は季節ごとに曲調を変るというもので、春はボブディランとAOR、梅雨はプログレ、夏はビートルズとAC/DCとアイドルメタル、秋はサイケジャズロック、冬は演歌と北欧メタルという構成だった。この農法は、作物たちに病気への耐性を与えるとともに、魂や情熱、そして喜びといった感情を植え付けた。結果、あらゆる環境への適応力にもつながったと言われている。

 

無の境地と神の子田畑

  田畑が開発したもう一つの特殊農法は、無農薬農法である。より厳密に言えば、動物や昆虫を使った自然農法だ。よく知られているカルガモ、やカブトエビの他、鯉、ヤモリ、てんとう虫、クモ、モグラ、ミミズ、オケラ……あらゆる益虫益獣を駆使した農法であり、動物園農法とも呼ばれた。薬を使わないことで、作物の持つ本来の抵抗力が引き出され、あらゆる環境の変化へ適応する力を引き出したと言われている。

 

 動物園農法の詳細は企業秘密となっているため、様々な噂が飛び交っている。例えば、水害の夜には作物が自ら歩いて高台に避難し、干ばつの際には根を地中深くまで張り、水脈を掘り当てたという噂がある。他にも、収穫率を下げそうな弱った作物は、自ら穴を掘って土に還ったという話もある。また、田畑が開発した最新の作物は、あまりに力を蓄えすぎたために食虫植物のようになり、益虫益獣をも自分たちの栄養分として取り込んでいると噂されている。

 

 噂はまだある。農天気では斬新な栽培方法に挑戦してきた。例えば、無水農法、無光農法、無酸素農法などがその代表例だ。これらの農法はもはや地球上での栽培を前提としておらず、宇宙開発と関わっている。未来の成長産業は宇宙開発であり、投資の一つとして月見が手を出したのだろう。水や光、大気の無い環境で作物をどう育てるか? 現在の田畑は農天気の運営からは離れており、アメリカでの特殊作物栽培実験に参加していると言われている。ちなみにわずかな期間ではあるが、あるプロジェクトでは物理学者の田中尺貫と仕事をしたという話がある。

参考:田中尺貫(4)「アメリカの51番目の州」

 

 これらの噂があながち嘘でもないと言わせるほど、田畑の育てる作物は頑強である。新たな栽培方法を行う際には必ず田畑の品種が利用される。「農天気」を支える大黒柱と言ってもいい存在だ。大自然の力、神の意志すら感じる。月見をして「神の子田畑」と言わしめるだけの男である。

 

続く