月見呟(11)「架空の市場『農天気』」

「自分のことは自分が一番知っている」

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 占いとか適正判断とかいろいろあるけど、人間ある程度長く生きてくると、自分のことがいろいろわかってくる。向き不向き、肉体精神の強さ、能力的な限界も見えてくる。その上で、最大限の結果を出すことや、最大限の幸福を求めることが大切だと思う。他人や世間や常識ばかりを基準にしていると、時として人は誤った選択をしてしまう。気をつけよう。

 

 

農家再生と能天気な男

 

「日本の偉人シリーズ(19)『月見 呟(つきみ つぶやき)』」

月見呟は、調理法から飲食店経営に至るまで、数々の革命を起こした料理人・経営者である。

料理に関する幅広い技術・知識・経験を生かして数多くの人材育成をし、世に数多くの名料理人を輩出したことでも知られる。

40代で料理人として一線から身を引き、様々な形で食に携わった後、50代で経営者・人材育成の道へと進む。そこで数多くの食材、人材、店舗の再生・復活を成功させ、後に月見再生工場と呼ばれるようになる。

経営者としての集大成は、日本有数のフードサービス・IT企業「コケックス」。その始まりは小さな弁当屋だった。元事務員で後に右腕となる昔田、元運転手で後に人事部長となる飯口など優れた人材を発掘し、事業を拡大していく。

 

 今後の事業展開にはっきりとした道筋が見えないでいた月見。若くして成功したが、思わぬ失敗で振り出しに戻った新城。親と子ほども年の離れた二人は、共に経営者であり野心家であり、夢を持っていた。毎晩のように夜の街に繰り出し、安いが味のいい居酒屋でとりとめも無い話をする。

 

 ある日、月見はこんなことを言い出した。

「補助金まみれで後継者のいない日本の農業はどうなってしまうのか? 」。

 新城はこう切り返した。

「日本の農家はある意味で職人的。自分が経営者であるという意識がない」

「後継者がいないんじゃない。若い人からすれば、農家は土地をもっていないとできない、特別な職業だという意識がある」

 

 なるほどそうか。月見は頷いた。では、どうすればいい? 新城は答えた。日本中のど田舎の農家を完全にIT化する。生産管理から販売、経営まで全てだ。個人経営の農家がネット上に自分の店舗を持ち、小売も含めた日本中の人に販売できるようにする。その事業の管理を、月見さん、あなたがやるんだ。個々の農家の店舗を集めたネット上の架空の市場をつくって、あなたが市場の管理人になる。これぞ、平成の農業革命ですよ。

 

 休耕地の再利用もやりましょう。データを全国から集めて、休耕地を若者に貸し出す。何を作ってどう売るか、経営面は彼らに決めさせ、作物は現地の人に作ってもらう。土地は全国に余っているし、やる気があれば農家になることができる。最初に経営を体験させることで、現実的な視点から考えることができるでしょう。

 

 この話を聞いた月見は、ワクワクしてしょうがなかった。しかし、農業という未知の分野に進出することに不安も感じていた。

「確かに面白い話だが、新城くん。農業は利益を出すのが大変だと聞くし、全国の農家がIT化を受け入れてくれるという確証はどこにもないぞ」

「そんなの知りません。でも、絶対楽しいですよ、この事業は! 」

 

「相変わらずの能天気だな……」

「それだ! この架空の市場の名前は『農天気』で決まりだ!! 」

 

続く

今日の格言

「恋と起業は勢いが全て」(新城)