月見呟(10)「人生はまさかの連続」

2016年8月29日

「すべては主観で決まる」

SHINJO [DVD]

 

 商品や作品をつくる上で、客観性を追求して万人に受けようとするのは、至極当然のことに思える。しかし、最終的にはそれを手にするものの主観に左右される。ならば、客観性を追求するのではなく、万人受けする主観性を追求すればいいのだ(意味不明)

 

 

ホストクラブとアメリカ進出

「月見 呟(つきみ つぶやき)」

月見呟は、調理法から飲食店経営に至るまで、数々の革命を起こした料理人・経営者である。

料理に関する幅広い技術・知識・経験を生かして数多くの人材育成をし、世に数多くの名料理人を輩出したことでも知られる。

40代で料理人として一線から身を引き、様々な形で食に携わった後、50代で経営者・人材育成の道へと進む。そこで数多くの食材、人材、店舗の再生・復活を成功させ、後に月見再生工場と呼ばれるようになる。

経営者としての集大成は、日本有数のフードサービス・IT企業「コケックス」。その始まりは小さな弁当屋だった。元事務員で後に右腕となる昔田、元運転手で後に人事部長となる飯口など優れた人材を発掘し、事業を拡大していく。

 

 今回も引き続き、月見の前に現れた謎の若者新城の話の続き。

 ホストで得た資金で起業し、世界的IT企業との業務提携で巨額の富を手にした新城。その後脱税容疑で逮捕されるまでの数年の間、彼は実にユニークな経営を行っていた。そのいくつかを紹介しよう。

 

 彼は元々、環境問題に興味があり、正義感もあった。そんな彼が目をつけたのは、アフリカはスーダン、そのサバンナに住む水牛だった。当時、大規模な環境破壊が原因で、現地でも最大級の牛の群れが行き場を失っていた。世界的にも大々的に報道され、メディアは「難牛騒動」などと取り上げ、牛を救おうと言う声があがった。スーダンの政府は水牛の保護及び買取を許可し、世界に向けて買い手を募集したのだ。そこに新城が飛びつき、日本でのサファリパーク開園を宣言。これが有名な「水牛買収騒動」であり、日本の動物園界、自然保護団体に衝撃が走った。

 

 結論から言うと、楽天家で知られる著名な動物学者の鶴の一声で、水牛買い取りとサファリ開園は白紙となった。

「環境破壊は問題だが、仮にすべての牛が餓死したとしても、1000頭程度ならば自然淘汰でも起こりえる」

 サファリ開園の夢は敗れたが、この騒動は新城の知名度を高めるのに一役買った。

 

 続いて彼は、ホストクラブでアメリカ進出を目論んだ。IT分野での成功に気を良くした新城は、他の経営者に違わず、芸術や文化への進出を考えた。しかし、経営と文化は似て非なるもの、このような異分野への進出は得てして失敗に終わることが多い。ましてや、海外進出も同時に行うとなれば、リスクはさらに高まる。しかし、新城には自信があった。かつてホストでナンバーワンになった自負があった。

 

 アメリカでのホストクラブ経営は、出だしはまずまずであった。外国にホストクラブという文化は無く、男性目当てで来る客はゲイくらい。しかし、女性客が意外と多く、反響はあった。驚くことに、外国人たちはホストを歌舞伎やアニメキャラのように捉えていたようで、日本の新しい流行だと思っていたのだ。

 

 最も多かったのは家族連れや若い男女の団体客であり、ホストのコールをはじめとするパフォーマンスに大喜びしていた。わずか数週間で店は話題となり、州のテレビ局の取材が毎日のように来て、舞台や娯楽施設への営業依頼も殺到。しまいには、ラスベガスのショーへのオファーも来た。それほど、日本のホストのクオリティは高かったのだ。

 

 だが、あくまで新城の本意はホストクラブの輸出。パフォーマンスとして受け入れられてしまったのは失敗に変わりなかった。それでも、1年ほどアメリカで店舗を運営した。この事業は日本のテレビなどでも盛んに取り上げられ、新城の知名度向上をさらに高め、人脈を広げることとなった。そこで新城は、ある会計士と出会う。彼は国内外で数多くの経験を積んでおり、海外進出のリベンジを果たしたかった新城にとって適役だったのだ。だが、この男は過去に横領の容疑で書類送検された過去があった。やはりここでも、新城の会社の会計処理で不正を行い、事件が発覚する前に会社の金をもって国外逃亡。新城の夢はここで一旦潰えるのであった。

 

続く