月見呟(9)「新城の不良時代」

「人間は振り子」

SHINJO [DVD]

 

 思い切りバカなことをできる人間は、思い切り真面目にもなれる。その振り幅の大きさが、そのまま人としての大きさになる……なるほど確かにそうだ。一生に一度は、振り子を思い切り揺り動かしてみたいね。

 

 

新城の人柄はこうして形成された

「月見 呟(つきみ つぶやき)」

月見呟は、調理法から飲食店経営に至るまで、数々の革命を起こした料理人・経営者である。

料理に関する幅広い技術・知識・経験を生かして数多くの人材育成をし、世に数多くの名料理人を輩出したことでも知られる。

40代で料理人として一線から身を引き、様々な形で食に携わった後、50代で経営者・人材育成の道へと進む。そこで数多くの食材、人材、店舗の再生・復活を成功させ、後に月見再生工場と呼ばれるようになる。

経営者としての集大成は、日本有数のフードサービス・IT企業「コケックス」。その始まりは小さな弁当屋だった。元事務員で後に右腕となる昔田、元運転手で後に人事部長となる飯口など優れた人材を発掘し、事業を拡大していく。

 

 今回も引き続き、月見の前に現れた謎の若者新城の話。新城の生い立ちを振り返る前に、一度話を戻そう。

 

 事業が停滞し、愛弟子の昔田とも距離ができ……月見は毎晩のように新城と飲み明かしていた。料理人として名の知られていた月見を前にしても、新城は変に気を使うこともなく、対等に、同じ実業家として話をしていた。それが、月見にとっては新鮮だった。月見の経歴を抜きにしても、人間50代にもなれば、社会で接する人間の多くは年下。自然と気を使われることも多くなり、気兼ねなく話せる人は相対的に減ってくる。そんな中で、久しぶりに「友人」を見つけたような気になっていた。新城を新たな部下として引き抜けば、会社に多くの利益をもたらしてくれるという確信もあった。

 

 しかし、結論から言うと、新城が月見のところへ来ることはなかった。ただし、その後も友人としての交流は続くこととなる。この時期に、新城はあるアイディアを月見に提案し、それがきっかけとなって新たな事業が始まる。それこそ、後に株式会社コケックスが運営する、ネット上の架空の食品市場「能天気」だ。新城の方も、月見と飲み交わす中で新たなアイディアを得て、実業家・タレントとして復活することとなる。

 

 さて、新城の生い立ちに話を戻そう。幼少期にパソコンにのめり込んでいた新城少年だが、思春期を迎えると興味の対象が移り、いわゆる不良少年になっていく。酒も女もかなり早く覚え、金も早いうちから手にするようになった。この時期の経験が、後のホストでの成功につながったと本人は語っている。

 

 一方で、彼は一般的な不良とは違っていた。中学では成績は優秀な方であり、遊んでいたとはいえそこそこの学力があり、高校は地元の進学校を選んだ。当然他の不良は他校へ進学したが、交流は続いていた。同じ不良なのに勉強ができる新城は、仲間たちから一目置かれていた。当時の友人はことあるごとに「新ちゃんは特別だもな!」と言っていた。進む道は違っても仲良くしてくれる友人達に、青年時代の新城は恩を感じていたという。立場や境遇が違う人間とも対等に付き合う新城の性格は、ここで形成されたのかもしれない。

 

 新城の学生時代の続きは、また機会があったときにしよう。試しに始めたホストのバイトでナンバーワンになり、そこで得た資金で起業。IT系の分野でイノベーションに特化し、見事世界的IT企業の目にとまり、業務提携を開始。日本では少ないアメリカ型のベンチャーで、20代前半にして巨額の富を手にした。快進撃を続ける中、新城は脱税容疑で逮捕されるのだが、その間に実にユニークな経営を行っていた。そのいくつかを、次回紹介しよう。

続く