月見呟(5)「デリバリー型社員食堂」

「あげまん、さげまん、そのままん」

古田式・ワンランク上のプロ野球観戦術 (朝日新書)

 

 まあ結局、ヘタに運気を上げられても困るし、下げられるのはもちろん御免だ。そうなると、プラマイゼロでフラットな女性、「そのままん」が一番ということになる。そういう女性は、顔は整っているけど特徴がない、フラットな顔をしている。年をとっても長持ちする顔だ。30代で色気がちょっと出てきて、40代でモテまくる。そういう女性は、一体どこで何をしているのでしょうか? 

 

 

日本初のデリバリー型社員食堂

 

「月見 呟(つきみ つぶやき)」

月見呟は、調理法から飲食店経営に至るまで、数々の革命を起こした料理人・経営者である。

料理に関する幅広い技術・知識・経験を生かして数多くの人材育成をし、世に数多くの名料理人を輩出したことでも知られる。

40代で料理人として一線から身を引き、様々な形で食に携わった後、50代で経営者・人材育成の道へと進む。そこで数多くの食材、人材、店舗の再生・復活を成功させ、後に月見再生工場と呼ばれるようになる。

経営者としての集大成は、日本有数のフードサービス・IT企業「コケックス」。その始まりは小さな弁当屋だった。元事務員で後に右腕となる昔田、元運転手で後に人事部長となる飯口など優れた人材を発掘し、事業を拡大していく。

 

 昔田はその情報収集能力、狡猾さと演技力で月見を見事にだまくらかし、絶大なる信頼を受けるに至った。その後の彼の活躍は、推して知るべしところである。

 

 ところで、昔田という人物の発掘は、果たして月見再生工場の作品と言っていいのだろうか? 結果だけ見れば、単なる事務員がその後役員レベルまで出世した。昔田にまんまと騙されたとは言え、埋もれていた才能を見出し、その能力を開花させるきっかけになったのは間違いない。一つ参考までに、後年に昔田が語った内容がある。

 

「月見さんの素晴らしさは、その純粋さにある。彼は合理主義で現実主義だが、非情になりきれないところがある。だが、彼のその甘さが、この会社に数多くの運と出会いをもたらした。運というのはイレギュラーなもの。ビジネスの世界にあって、彼の甘さはまさにイレギュラーであり、会社の運命を変えてきた。最も、時として悪い方向へ進んでしまうこともあったが(笑)」

 

 さて、月見再生工場が育てたもう一人の人材、「飯口(めしぐち)」も紹介しよう。

 ビジネス街のど真ん中にあった弁当屋は、放っておいても客が来た。しかし、その味をより多くの人に知ってもらいたいということで、月見は昔田とアイディアを練っていた。

「弁当屋は繁盛しているが、客の多くは近くのビルで働く人だ」

「もっと遠くの人にも、弁当を食べさせたいと? 」

 

「そうだ。どうすればいい? 」

「客に来てもらうんではなく、こちらが行けばいいんですよ」

 

「弁当を配達するのか? 」

「いえ、現地で作っちゃいましょう」

 

「なるほど。ビジネスビルの前で調理か。悪くない。キッチンを積み込んだ車でも用意して、か」

「いいえ、もう、オフィスの中に全部持ち込んで、そこで調理しましょう。弁当社員食堂ごと、デリバリーするんですよ」

 

 これは斬新なアイディアだった。移動式の弁当屋や店舗ならいくらでもあるが、社員食堂を丸ごと移動させる、社員食堂のデリバリーというのはそれまでにないアイディアだった。例えば昼間だけオフィスに伺って、数時間だけ社員食堂を提供する。少人数の会社やオフィスが狭いなど、様々な制約から社員食堂を設置できない企業やビルはたくさんあるが、この方法ならコストも抑えられて、無駄が全くない。場所によって現場での調理、調理済み食品の持ち込み、弁当の配達など使い分けることもできる。

 

 さて、このようにして始まったデリバリー社員食堂だが、そこには現場を支える腕利きの料理人がいた。彼女の名は「飯口 希(めしぐち のぞみ)」。ご飯の「飯」に「口」、フードサービスをするために生まれて来たような人物だが、当時は会社の運転手をしていた。若干22歳の彼女は不思議な人物だった。目鼻立ちは整っていて、顔のパーツもすべて綺麗。しかし、全部合わせると全く特徴のない、フラットな顔なのだ。男から言わせると、綺麗なのだが性欲が湧かない、なんとも言えない女性だった。

 

続く

今日の格言

「彼は合理主義で現実主義だが、非情になりきれないところがある。だが、彼のその甘さが、この会社に数多くの運と出会いをもたらした。」(昔田)