【2018新作新譜】『Tranquility Base Hotel & Casino(トランクイリティ・ベース・ホテル・アンド・カジノ)』(アークティック・モンキーズ)レビュー[解説,評価,感想]

2018年5月12日

【5月11日発売】約5年ぶりの期待の新作!
アダルトでシックなサウンドに大変身!

Tranquility Base Hotel & Casino(トランクイリティ・ベース・ホテル・アンド・カジノ)』(2018年)


トランクイリティ・ベース・ホテル・アンド・カジノ

現時点で唯一の新曲公開⇒ #6「Four Out of Five」
 

アルバム解説

ミドルテンポのアダルト&シックな作り!

これまでとは全く異なる曲調

 このアルバムはこれまでのアークティック・モンキーズとは全く異なる作品となった。一言で言うと、全編に渡ってポエトリー・リーディング、ミドルテンポのアダルトでシックな作り、ピアノ・ロック、ジャズ、R&Bといった曲調で貫いている。映画のサウンドトラックのような仕上がりと言っていいかもしれない。とにかく、これまでのギターロックを期待していては肩透かしをくらう。しかし、じっくり聴き込むとこれまで以上の深い世界に浸ることができる。もはや新しいバンドが新しいアルバムでデビューを果たしたと言ってもいいほどの変身ぶりである!

アークティック・モンキーズらしさもしっかり

 しかしながら、そこにはしっかりとアークティック・モンキーズのリズムとメロディがある。あまりの方向転換に驚いてしまうだろうが、個々の楽曲の奥にしっかりとこれまでのアルバムで築いてきたものが垣間見える。そんなアルバムと言っていいだろう。ギターやドラムの音は控えめだが、全体としての雰囲気を大切にしたつくり。音と音の隙間を重視したつくり。バンド編成にピアノが加わり、随所に印象的な効果音を加えたつくり。今回のアルバムはこういった表現で説明がつくかもしれない。唯一これまでと変わらないのは、字余りで言葉を詰め込んだアレックスのボーカルだろう。そのボーカルも、色気と円熟味が加わって大きな進化を見せている。いくら説明をしてもしきれない、実際に聴いてもらうのが一番のアルバムである。

楽曲制作の経緯等

ピアノで作成された楽曲群

ギタリストのジェイミー・クックは、英国の音楽誌『MOJO』のインタビューでこう明かした。「ピアノとヴォーカルのみで、ギターはなかったんだ。アルはこう考えていたんじゃないかな。“これはアークティック・モンキーズになるのか、それとも自分は別の場でやるつもりなのか?”って。僕はこうも思った。これは間違いなく、ギター・ヘヴィなアルバムじゃない。いつも通りの僕らってわけじゃない」

ターナーは「これまでやったことがない方法、ピアノで曲を書くよう自分を仕向けた」と話している。「それにより、以前は行くのが難しかったところへ行くことができた」という。

引用元:アークティック・モンキーズ「新作は、いつものようなギター・ヘヴィな作品ではない」(BARKS)

 後述するが、本作はアレックスがピアノで作った曲が中心となっている。そして、ジェイミーが語っているようにアークティック・モンキーズの特徴であるギター中心のヘヴィーサウンドとは違ったものになっている。前作もそれまでの作品と大きく方向性を変えたが、あくまでも「ギターサウンド」であった。ここに来て、その代名詞をも投げ捨てて生まれ変わろうとしているというわけだ。

各メンバーの作品に対する感想等

「モンキーズの前作はすごくアメリカっぽかったってよく言われるんだけど、個人的には今作はその傾向がより顕著だと感じてるんだ」(アレックス・ターナー)

多くのアークティック・モンキーズのファン、特に『AM』での唸るようなギターサウンドを期待しているリスナーにとっては、本作が意表をつく内容であることをターナーは自覚している。

「驚いたよ、アレックスがああいう方向を追求しているとは思いもしなかったからね」(ジェイミー・クック ※G)

「過去の作品でもそうだったけど、俺の目標は誰も聞いたことがない、真にオリジナルなドラムビートを生み出すことだ」
「でも今作ではそういう自己主張を抑えた。楽曲を引き立たせるためのドラムを心がけたんだ」(ヘルダース ※Dr)

引用元:アークティック・モンキーズ最新インタビュー:未だ謎多きニューアルバムの全容

 このインタビュー記事が、今作がどんなアルバムかをイメージするのに最適かも知れない。

  1. アメリカ的な作品
  2. ギターサウンドではない
  3. これまでにない方向性
  4. 楽曲を引き立たせるためのドラム

 これにさらにいくつか要素を加えるとすれば、「ピアノサウンド」「ジャズやR&B的な楽曲」となる。これだけ聞いても、これまでの作品とは全く違うアルバムであることが想像できるだろう。アークティック・モンキーズの最大の特徴に「ヘヴィなギターサウンド」「アグレッシブなドラム」がある。この2つが”いい意味で”抑えられており、アメリカ的なジャズ&R&B寄りの新たな楽曲で構成されている、というわけだ。

リリース前の楽曲発表は一切なし!

『トランクイリティー・ベース・ホテル・アンド・カジノ』に収録された11曲を、5月11日のアルバムリリース前に披露するつもりがないことをアレックス・ターナーが明かした。

アレックスはモジョ誌のインタビューの中で「(ギタリストの)ジェイミーがその考えに乗り気なんだ。たぶんドミノ・レコーズの人たちもね」「俺のアイデアじゃないけど、まぁ、理解はしてるよ」と語った。

引用元:アークティック・モンキーズ、ニューアルバムからの先行シングルはリリースせず (mnsニュース)

 こちらも後述するが、現在までにアルバム収録曲の公開は一切ない。アルバムタイトルと11の楽曲名のみが公表され、リリースまでは非公開となるようだ。同じように、アルバムに関する情報も極めて少ない。冒頭で紹介した、1分足らずのトレーラーのみが今回のアルバムの曲調の手がかりとなる。

【収録曲】
  1. Star Treatment
  2. One Point Perspective
  3. American Sports
  4. Tranquility Base Hotel & Casino
  5. Golden Trunks
  6. Four Out Of Five
  7. The World’s First Ever Monster Truck Front Flip
  8. Science Fiction
  9. She Looks Like Fun
  10. Batphone
  11. The Ultracheese

前作で世界的ヒットを記録

 前作『AM』は本国イギリスを始め全世界で高評価をもって受け入れられ、セールスは500万枚を突破。ファーストアルバムの衝撃から約10年を経て、そのキャリアをさらに高めたアークティック・モンキーズ。セールスの詳細を見ると、ファースト以来のイギリスでの100万枚超え&アメリカでの100万枚超えとなっている。

英米でのセールス比較

参考:Arctic Monkeys discography – wikipedia

『Whatever People Say I Am, That’s What I’m Not』(2006)

  • 英:170万枚
  • 米:50万枚

『Favourite Worst Nightmare』(2007)

  • 英:90万枚
  • 米:6.2万枚

『AM』(2013)

  • 英:115万枚
  • 米:135.5万枚

 こういうわけで、ファースト以来セールスが好ましくなかったアメリカ市場でついに100万枚を売り上げ、名実ともに世界的バンドとしての地位を固めたと言っていい。ここからさらに名盤を生み出せるかどうか? 今回の新作はバンドにとって非常に重要な位置づけになること間違いなしである。

情報はまだ少ない

 アルバムについての情報は現在2018年4月23日時点で非常に少ない。新曲も発表されていなければ、公式Youtubeのトレーラーも謎が多い。少ない情報の中から明らかになっていることは、

  • アルバムタイトル:1969年、アポロ11号の月面着陸した場所を指す
  • 収録曲:後述するが、曲名は発表されており、全部で11曲構成となっている
  • 発売日は2018年5月11日(全世界同時発売)
  • プロデュース:ジェームス・フォード(2ndからのプロデューサー)、アレックス・ターナー

 アメリカ版のウィキペディアを見ると、収録曲は全てアレックス・ターナー作であり、誕生日プレゼントのピアノを使って作曲したとのこと。また、冒頭にあげたトレーラーの音は、収録曲のアンサンブルを多数含んでいる。何らかのアルバムのイメージを想起するのに役立つだろう。

【動画で試聴】

これまでのアルバムおさらい

Whatever People Say I Am, That’s What I’m Not』(2006年)
衝撃のデビュー作!
★★★最高傑作★★★


ホワットエヴァー・ピープル・セイ・アイ・アム、ザッツ・ホワット・アイム・ノット

 

アルバム解説

 本作はデビューアルバムかつアークティック・モンキーズの代表作であり、今なお最高傑作という声も高い。発売当時はデビューシングルと共に英国で記録的な大ヒットをし、国内の賞を総なめにした。「オアシス以来の大物」と呼ばれ、これまでに国内での実績はその呼び名に相応しいものとなっている。

 疾走感溢れる性急なギターサウンドで構成され、ヘヴィなサウンドにまくし立てるようなボーカルが乗り、これまでにはない新たなロックを提示して見せた。デビューアルバムとしてはあまりにも完成度が高い。アークティック・モンキーズを知りたいのならば、迷わずこのアルバムから入るべき!

【収録曲】
  1. The View from the Afternoon
  2. I Bet You Look Good on the Dancefloor
  3. Fake Tales of San Francisco
  4. Dancing Shoes
  5. You Probably Couldn’t See for the Lights But You Were Staring Straight at Me
  6. Still Take You Home
  7. Riot Van
  8. Red Light Indicates Doors are Secured
  9. Mardy Bum
  10. Perhaps Vampires is a Bit Strong But…
  11. When the Sun Goes Down
  12. From the Ritz to the Rubble
  13. A Certain Romance

Favourite Worst Nightmare』(2007年)
デビュー作の正統進化系!
★★おすすめ★★


フェイヴァリット・ワースト・ナイトメアー

 

アルバム解説

 衝撃的なデビューから約1年、アークティック・モンキーズは速くもセカンド・アルバムを発表し、期待していたファンを喜ばせた。というのも、その内容はファーストをよりヘヴィに進化させると共に、ファーストには無かった新たな要素も提示してみせたからだ。当然ながら本国イギリスでは再び熱狂を持って迎えられた。

 サウンド面はよりヘヴィかつラウドになり、メタル的な展開も見せている。良い意味で泥臭いサウンドも楽しむことができる。アークティック・モンキーズのファーストが気に入ったなら、迷わずセカンドも聴くべし!

【収録曲】
  1. Brianstorm
  2. Teddy Picker
  3. D is for Dangerous
  4. Balaclava
  5. Fluorescent Adolescent
  6. Only Ones Who Know
  7. Do Me a Favour
  8. This House is a Circus
  9. If You Were There, Beware
  10. The Bad Thing
  11. Old Yellow Bricks
  12. 505
  13. Da Frame 2R
  14. Matador

AM』(2013年)
音楽性を変えて世界的ヒットへ!
★★★名盤★★★


Am

 

アルバム解説

 通算5枚目の本作は、アークティック・モンキーズ第二章の幕開けと言っていい。彼らの基本であるギターサウンドは顕在であるものの、ミドルテンポで音と音の隙間を大切に、そして低音をじっくり聞かせるような曲の展開は、これまでにない新境地を示してみせた。

 本作で注目したいのは、アメリカでのセールスだ。ファースト以来アメリカでのセールスは思わしくなかったが、積極的なプロモーションもあってアメリカで100万枚を超えるセールスを記録。もちろん、これはバンドにとって記録更新となった。

 アレックスも語っているが、R&Bの影響や、発音をアメリカ風に変えるなどの工夫もあり、快くアメリカで受け入れられた。すごいところは、大きな変化を見せながらもしっかりとギターサウンドを核に据えているところだ。工夫されたコーラスと、同じフレーズのリフレインは一度聴いたら癖になる。一言で言えば「ヘヴィなミドルテンポ」のアルバムとなっている。

【収録曲】
  1. Do I Wanna Know?
  2. R U Mine?
  3. One for the Road
  4. Arabella
  5. I Want It All
  6. No. 1 Party Anthem
  7. Mad Sounds
  8. Fireside
  9. Why’d You Only Call Me When You’re High?
  10. Snap Out of It
  11. Knee Socks
  12. I Wanna Be Yours
  13. 2013