「杜子春」(芥川龍之介)のあらすじ[考察,解説,感想]

2017年10月18日

中国の古典作品を芥川龍之介が童話化

蜘蛛の糸・杜子春 (新潮文庫)

もくじ

 

はじめに

 この杜子春という物語は、元は中国の古典作品であり、それを芥川が童話化したものとなっています。そもそも芥川龍之介の作品のいくつかは、有名な「羅生門」などを始めとして、王朝物というジャンルに属します。王朝物とは、平安時代を舞台に、「今昔物語」などの古 典作品を参考にした作品群です。当時の物語に登場する事物について、近代的な解釈をするというものです。

 

あらすじ

 簡単なあらすじを紹介しますと、元金持ちの貧乏青年「杜子春」が路上で仙人に会い、大金を手にします。しかし豪遊してすぐに使い果たしてしまい、 再び貧乏になります。そこでもまた仙人に会い、また同じ事を繰り返します。そして、三度仙人に会った際、杜子春はお金はもういらないと言います。お金の有無によって顔色を変える周囲の人間に嫌気がさしたのです。その代わりに杜子春は、仙人に弟子入りを願います。

 仙人は杜子春に「何があっても声を出すな」とだけ言い、杜子春を谷底に残して去っていきます。それから杜子春は、化け物に襲われ、殺され、地獄に落ち、ありとあらゆる苦しみを味合わされますが、仙人との約束を守って黙っていました。 しかし、目の前で閻魔大王と鬼とに両親がいたぶられる姿を見て、そして、それでも杜子春をかばう母親の姿を見て、ついに杜子春は声をあげてしまいます。そこで杜子春は目を覚まします。

 仙人にはなれなかったものの、杜子春は今後、人間らしい平凡な生き方をすると決めます。そんな杜子春に、仙人は「も しあの時、お前が声を出さなかったら、お前を殺していたところだ」と言い、無一文の杜子春に家と畑を残して去っていきます。

 

考察(解説)

物語のテーマ

 この物語のテーマは人間の情でしょう。有限である金に頼っていては、集まってくる人間も知れているし、薄情さばかり見えてしまうものです。一方、地獄にあっても子をかばう親の姿は、まさに無償の愛です。
 また、物語の中では対比がいくつか見られます。

  • 「裕福な生活と地獄での苦しみ」
  • 「有限な金と無償の愛」

 これらの対立関係が、テーマである人間の情を、各場面で際立たせていると言えます。

普通であることの良さ

 また、杜子春は何度も金持ちになったり乞食になったり、さらに仙人を目指したかと思えば地獄に落ち、最後は平凡な生活を選択します。
 金持ちになるというのは、つまりは富を手に入れるという ことです。そして、仙人になるというのは、不老不死を始めとして、人間を超えた存在になることです。また、地位を手に入れることとも言えそうです。その一方で、杜子春は一文無しの状況や、乞食同然の地位、あるいは地獄の住人という、最低の地位にまで落ちています。
 ここらへんから読み取れることとしては、結局のところ、裕福も貧乏も、幸福も不幸も、限界というところまで見て初めて、「普通」であることの有り難みがわかるということでしょう。

 

おわりに(感想)

 元が古典作品ということで、よくある話と言われればそうでしょう。ただ、実際に物語を読んでみると、杜子春が豪遊するシーンや、地獄での苦しみの描写が非常に手の込んだものとなっていて、非常に面白いです。

参考文献・作品情報

参考文献

作品情報

<年月>

  • 1920年(28歳)7月発表
  • 私生活では、この年の3月に長男比呂志が誕生。中期。

<ジャンル>

  • 「児童文学もの」「少年もの」

<テーマ>

  • 金と人間の情

<ページ数>

  • 21ページ(新潮文庫,2012)