『女たち(Some Girls/サム・ガールズ)』ローリングストーンズ – レビュー[解説感想,評価,名曲]

2017年12月1日

『女たち(Some Girls/サム・ガールズ)』(1978年)
70年代後半の傑作!
★★名盤★★

サム・ガールズ

『女たち(Some Girls/サム・ガールズ)』 – もくじ

  • アルバムレビュー・解説感想
    • キース懲役刑の危機
    • ディスコと攻撃的サウンド
    • キース・ロン・ミックのギターオーケストラ
    • 70年代後半の傑作
    • 収録曲/名曲を動画で試聴
  • 各曲解説・感想
    • 1.ミス・ユー(Miss You)
    • 3.Just My Imagination
    • 4.Some Girls
    • 6.Far Away Eyes
    • 7.Respectable
    • 8.Before They Make Me Run
    • 10.Shattered

アルバムレビュー・解説感想

キース懲役刑の危機

 1977年2月、キースがカナダで麻薬所持のために逮捕・拘留されるという大事件が起こった。カナダは麻薬取り締まりに厳しく、実刑も免れないという、まさにストーンズ存続の危機である。裁判は10月まで長引き、判決が下される前にレコーディングが始まっている。そういう状況の中で生まれたことが、少なからずこの作品に影響を与えている。

 結論から言えば、キースは執行猶予つきの判決で実刑を免れ、この数年後に本格的にドラッグ治療に乗り出し、共に中毒で苦しんでいた長年の恋人アニタとも別れ、キースの健康状態は回復に向かうことになる。そういった意味で、ターニングポイントになる作品と言うことだ。

ディスコと攻撃的サウンド

 アルバム発売当時はセックスピストルズを始めとしたパンクブームの真っただ中。ストーンズはその格好の標的になり批判を浴びていたが、それを受けて作られたアルバムと言って良い。何せミックジャガーは流行に敏感。自分が攻撃の対象にされたとなれば、それを作品い反映しないわけはない。加えて、当時はディスコブームの最中でもあり、アルバムの冒頭にディスコサウンドを取り入れてもいる。

 結論から言えば、このアルバムは流行をさらっと取り入れつつ、ベテランらしく若きパンクバンドをあしらうかのような、余裕のあるサウンドとなっている。とは言え、中にはパンクの攻撃性を取り入れた曲(#5,7)もある。だがその他の曲を見ればソウルのカバーをブルースロックで仕上げたり(#3)、歌詞にもこだわったカントリーソング(#6)だったり、いつものストーンズらしさも忘れていない。

キース・ロン・ミックのギターオーケストラ

 サウンド面で言えば、アルバムではミックがギターをたくさん弾いている。加えて、キースとロンの掛け合いが絶妙であり、以降のサウンドの基本系を確立していると言って良い。キースとロンの掛け合いにミックまで加わるということで、三つ巴のギターオーケストラとでも言うべきサウンドが随所で楽しめる。

 その中でも、キースはフェイズを強調したサウンド、ロンはスチールギターといった面白さもきちんと見せている。ロンがバンドにとって非常に相性が良かったことが、このアルバムで再確認できる。ストーンズが21世紀もバリバリやっていられるのは、ロンのおかげかもしれない。

70年代後半の傑作

 70年代のストーンズ、前半はまさに絶頂期と言って良い勢いだったが、後半ではなかなか良い評価を得られずにいた。メンバーのトラブルも多かった。キースのドラッグ問題、ミック・テイラーの脱退、キースとミックの対立もこの頃から表面化してきた。そんな中で、パンクからの批判とキース逮捕の危機が、何かしらの変化のきっかけになったのは間違いない。

 久々にアルバムが世間の話題の中心となり、アルバムではキースのおなじみのリードボーカル曲も登場。改めてストーンズの力を思い知らせる傑作となった。

収録曲/名曲を動画で試聴

【収録曲】
  1. ミス・ユー(Miss You)
    ミックがビリー・プレストンとのジャムによって生み出した曲。自身もギターを演奏。
  2. When The Whip Comes Down
  3. Some Girls
  4. Lies
  5. Far Away Eyes
  6. Respectable
  7. Before They Make Me Run
  8. Beast Of Burden
  9. Shattered
【おすすめ曲・Youtube検索】

各曲解説・感想

1.ミス・ユー(Miss You)

 ストーンズ流ディスコと呼ばれるが、その理由はリズムとファルセットを交えたミックのボーカルワーク。ビル・ワイマンのいつものうねるようなリズムは鳴りを潜め、いつになくシャープな展開で楽曲を引っ張っていく(参考:『ザ・ローリング・ストーンズ ライナー・ノーツ』寺田正典(2014)株式会社ミュージック・マガジン,pp52-53)。

 ゲストミュージシャンにはフェイセズでロンウッドと共にプレイしたイアン・マクレガンメル・コリンズといった面々。さらにこの曲だけでなくアルバム全体でミックがギターで積極的に参加している。そのためにキース、ロン、ミックの三人体制の曲がいくつも見られる。

3.Just My Imagination

 1971年発表テンプテーションズの曲のカバー。原曲はフルオーケストラに甘いボーカルが乗るソウルナンバーとなっているが、ストーンズがしっかりロックにアレンジしている。アレンジではやはり3人のギターの絡みが大きな役割を果たしている。

4.Some Girls

 全編に渡ってキースのフェイズのかかったギターリズムを奏で、曲を気だるそうな雰囲気に仕立て上げている。ミックの力の抜けたようなボーカルもしかり。そして次のような歌詞である

【歌詞解説/一部抜粋】

Some girls give me jewelry
ある女は宝石をくれる
Others buy me clothes
ある女は服を買ってくれる
Some girls give me children
またある女は子供をつくってくれる
I never asked them for
頼んだ覚えはないのにね

White girls they’re pretty funny
白人の娘はかなりいっちゃってて
Sometimes they drive me mad
時々こっちまで変になる
Black girls just wanna get *** all night
黒人の娘は一晩中(不適切なため自粛)
I just don’t have that much jam
そこまで滅茶苦茶する気はないよ

Some girls they’re so pure
ある女はとても純粋で
Some girls so corrupt
ある女は堕落していて
Some girls give me children
またある女は子供をつくる
I only made love to her once
たった一回だけなのにね

 グーグルに怒られそうなので一部は伏せたが、全編に渡って男尊女卑でいろんな国の女性をカテゴライズして揶揄している。「子供を~」のところはまさにミックジャガーの人生そのもの。念のため言っておくがアルバムのタイトルナンバーである。アルバムジャケットと合わせて見れば、ストーンズが何をしたかったかよくわかる。彼らだから許される(当時は当然バッシングを浴びたが)曲である。

6.Far Away Eyes

 アルバムの中では随所でロンのスチールギター(ハワイアンのような音のギター)が活躍する。この曲は一番わかりやすく、カントリーとも言える作品に仕上がっている。歌詞を見ればそれも納得

【歌詞解説/一部抜粋】

I was driving home early Sunday morning through Bakersfield
日曜の朝早く、ベイカーフィールドから車を走らせ
Listening to gospel music on the colored radio station
黒人向けのラジオでゴスペルを聴いていた
And the preacher said, “You know you always have the Lord by your side”
「そう、主はいつもあなたの傍にいらっしゃる」と牧師が語る
And I was so pleased to be informed of this that I ran Twenty red lights in his honor
俺はとても嬉しくなった。その言葉のために20回も信号を通りすぎちゃったからね
Thank you Jesus, thank you Lord
ありがとうイエスさま、神に感謝します

 南カリフォルニアにて、主人公は黒人だろうか白人だろうか。ラジオでゴスペルを聞いて、牧師の言葉に気を取られ信号を無視してしまう。そして「神様ありがとう」と、こうくるわけだ。おそらく若者が主人公だろうが、まだやんちゃなところがあるが信心深いという設定だ。なんとなくだが、アメリカ南部の雰囲気を上手く表現していると思う。

7.Respectable

 パンクから槍玉に上げられたストーンズだが、アルバムの中で#5と共に攻撃的なサウンドを展開している。この曲ではキースとロンのギターが入り乱れて素晴らしいコンビネーションを披露している。

 歌詞もなかなか面白いので見てみよう。

【歌詞解説/一部抜粋】

Well now we’re respected in society
俺たちは今や世間で尊敬の的
We don’t worry about the things that we used to be
これまでやってきたことは何の問題もない
We’re talking heroin with the president
だが今はヘロインと大統領について話してるんだ
Well it’s a problem, sir, but it can’t be bent
もちろんヤバいけど、嘘はつけないよ

Well now you’re a pillar of society
そう、君は社会の柱
You don’t worry about the things that you used to be
自分の過去なんて振り返るな
You’re a rag-trade girl, you’re the queen of porn
お前は安い女、ポルノの女王だ
You’re the easiest lay on the White House lawn
ホワイトハウスの芝生で寝ることだってへっちゃらだ

Get out of my life, don’t come back
失せろ、二度と戻って来るな
She’s so respectable
あの女は尊敬に値する
She’s so delectable
とても楽しいしな
Get out of my life
だが失せろ
Don’t take my wife
妻を奪うな
Don’t come back
二度と面を見せるな

 ちょっと難解だが、冒頭の部分はバンドのことを言っているそう。途中からは勢いで作った歌詞だろうか? 当然ミックジャガーが書いたのだから、何か邪推してしまう。妙な女にひっかかって、浮気がばれたといったところだろうか? 最初の二つの内容を結びつけるセンスは面白いの一言。ミックはこういう歌詞を書かせたら右に出るものはいない。

8.Before They Make Me Run

 この時期はキースがカナダにて麻薬密輸の容疑で拘留、裁判中にキースがこの曲を書いたと言うエピソードがある。結果的にキースは数年かけてクリーンアップするのだが、この曲の歌詞の内容を見ると、その当時の心中が見えてくる。

【歌詞解説/一部抜粋】

Well here’s another goodbye to another good friend
また親友と別れの時がきた

Gonna find my way to heaven, `cause I did my time in hell
生きてる間に地獄を見たんだから、せめて天国への生き方を教えてくれ

After all is said and done
やりたいことやって言いたいだけ言ったら

Gotta move while it’s still fun
楽しいうちにまた動き出さなきゃ

Let me walk before they make me run
あいつらが俺を追い立てる前に、早く動き出さなきゃ

 数々のミュージシャンがドラッグで死去・引退し、キースの友人もそうであった。これらの事実を踏まえて歌詞を見れば、この曲の感じ方がまた深みを増す。それにしてもストーンズは、明るい曲調でとんでもない歌詞を歌うことが多い。

10.Shattered