太宰治と立川談志のコラボ!『新釈落語咄』のレビュー・感想

太宰治の『お伽草紙』をモチーフにした、立川談志の古典落語の新解釈!

新釈落語咄 (中公文庫)

もくじ

『新釈落語咄』のもくじ

 

内容説明

「ガキの頃、太宰の『お伽草紙』を読んだ感動はいまだに残っていて、それを何とか落語に適用したい」と考えた家元が「諸々の咄のあちこちに疑問を投じて、新たな解釈」を試みた極めてユニークな“現代落語論”。

目次

前口上

第一回 粗忽長屋
第ニ回 欠伸指南
第三回 片棒
第四回 湯屋番
第五回 疝気の虫
第六回 だくだく
第七回 長屋の花見
第八回 胡椒の悔やみ
第九回 化物使い
第十回 寿限無 ほか

後口上

解説 爆笑問題・太田光

引用元:新釈落語咄 (1999),立川談志,中公文庫

 

【太宰治の『お伽草紙』について】

 解説の通り、この本は知る人ぞ知る太宰治の名作お伽草紙をモチーフに、立川談志さんが古典落語を再解釈した内容となっています。そもそも『お伽草紙』というのは、太宰治が浦島太郎やカチカチ山といった昔話を、現代風にアレンジした作品です。立川談志さんもお伽草紙が好きなようで、自分も古典落語の再解釈をしてみようと思ったわけです。

 立川談志さんと言えば、落語会では大御所であり異端児、落語の枠を超えて芸能・文化において非常に大きな存在となっていました。そんな談志さんがモチーフにするお伽草紙はやはり名作です。かく言う私もお伽草紙のファンであり、このブログでも紹介しています。

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  お伽草紙は中高生でも楽しめるほどわかりやすく、かつ面白い作品です。太宰治がどうしてこれほど評価されているのか、この作品を読めばわかると思います。

 

『新釈落語咄』のおすすめポイント

談志さんお気に入りの19の古典落語を、わかりやすく解説!落語の入門書としても最適!

 本の構成は、19の古典落語を、各15ページほどで解説、そこに談志さんなりの解釈を交えていきます。警戒な噺家口調による解説はわかりやすく、1話ごとサクッと読むことができます。僕も古典落語はほぼ初心者ですが、とても読みやすく、楽しめる内容でした。

 落語をまとめた本はたくさんでていますが、言葉遣いが古かったり、時代背景が現代と違いすぎているなど、現代人にとっては少々とっつきにくいところがあります。その点、この本では談志さんが要点をまとめてくれているため、無理なく落語の面白さを知ることができます。有名な話もたくさん載っているので、教養としても役立つでしょう。

 

第一回「粗忽長屋」でまずは大笑い!落語の奥深さを知る!

 本の冒頭で紹介されている「粗忽長屋」を読めば、一気に立川談志ワールドに引き込まれます。一部を紹介しましょう。

 さて、落語中の落語は『粗忽長屋』が正にそれそのもので、浅草は観音様の境内に倒れていた身元の判明らぬ”行き倒れ”を見た八公は、「これは間違いなく長屋の熊公だ」といい、その熊公のことを「俺の無二の友達で、生まれた時は別々でも死ぬ時きゃ別々の友達だ」という。「それは違うよ、それをいうなら『生まれた時は別々でも死ぬ時きゃ一緒』というんだ」といわれた八公、「友達だからって何で一緒に死ななきゃならねえんだ、変なことをいうな」と怒り、挙句に、身寄りのない独り者の行き倒れの熊公の引き取り手がないことが判って、「じゃあ熊公当人を連れて来て、当人に引き取らせる」と事も無げにいう。
 相手は驚き、「ちょいと待ってくれよ、じゃあここに倒れているのは誰?」
「熊公だよ、俺の親友、死ぬ時きゃ別の一番仲のいい友達よ」
「それを誰が引き取る、というの?」
「当人だい」
「当人って誰?」
「熊公よ」
「その人は何処に居るの?」
「長屋にいるよ、今、ここに来る前に逢ってるんだから……」
「あっ、それじゃあ違う人だ。この行き倒れは昨夜からここに倒れて死んでたんだよ」
「オイ、そういう妙な事をいうない。それじゃあ話が合わなくなるじゃねえか……」といい、
「このままにして置いてくれ、すぐ当人を連れてくるから……」
 と長屋にとって返して熊公に「お前は死んだぞ」と告げる。
「変なことをいうなよ、俺は死なないよ」
「そういう馬鹿なことをいうもんじゃあないよ、死にたくねえのは判るけど、人間てなぁ死ぬものだ」といい聞かせ、
「でも死んだような気がしねえ」と言い張る相手に、
「初めて死んだのだから、すぐには死んだという気にはならないものだ」と話し、
「昨夜は何処へ行ったい」と熊さんのアリバイを聞く。

引用元:新釈落語咄 (1999),立川談志,中公文庫,pp18-20

 

 少々長くなりましたが、さわりだけでも非常に面白い話です。本の中では、個々の項目は落語と同じように前口上から始まり、落語の大筋を説明、その後に談志さんの解釈が続きます

 

さすがは天才!才能あふれる文章に思わず引き込まれる!

 恥ずかしながら談志さんの落語はまだ聞いたことがありません。ただ、落語には興味があり、桂枝雀さんの本(『上方落語 桂枝雀爆笑コレクション〈5〉バことに面目ない (ちくま文庫) 』)を読んだり、新宿の末広亭に行ったことはあります。また、談志さんはテレビで何度か拝見したことがあり、その言葉の鋭さ、発想の斬新さに驚かされたことがあります。そんな談志さんの文章を今回初めてしっかり読んでみましたが、ものの数分で一気に引き込まれてしまいました。

 まず気がついたのは、文章(言葉)のリズムが素晴らしいことです。あまりにリズムが良いので、気が付くと流し読みしてしまい、内容が入っていないことすらあります。それでも「なんだかわかんないけど面白い」と感じてしまいます。さらに、語彙の豊富さも見事。「落語の家元なんだから当たり前」だと言われそうですが、改めてその言葉の扱いの素晴らしさに驚かされました。

 それから、ここが実は最も重要なのではないかと思っていますが、説明が丁寧でわかりやすいです。落語を聞いたことのない人、落語をほとんど知らない人も想定して、かなり気を使って書かれた本だと思います。その世界でトップにいる人は、深い専門性を持つ一方で、常に大衆を意識し、老若男女誰でも楽しませようという気持ちを持っているものです。この本も、談志さんの心遣いが伝わってくる、非常にわかりやすい楽しい内容になっています。

 

感想

 落語の面白さを知りたい人、談志さんに興味がある人、誰でも歓迎の落語入門書です! かなりおすすめです!

 

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