『Sheer Heart Attack(シアー・ハート・アタック)』QUEEN(クイーン)レビュー[解説,評価,感想]

Sheer Heart Attack(シアー・ハート・アタック)」(1974年)
バンドの音を確立した名作!
★おすすめ★

シアー・ハート・アタック

『Sheer Heart Attack(シアー・ハート・アタック)』 – もくじ

  • アルバムレビュー・解説
    • ハード・ロック路線の踏襲とロック・オペラの予感
    • 収録曲/動画で試聴
  • 各曲解説・感想
    • 1.Brighton Rock
    • 2.キラー・クイーン(Killer Queen)
    • 3.Tenement Funster
    • 4.Flick of the Wrist
    • 5.Lily of the Valley
    • 6.ナウ・アイム・ヒア(Now I’m Here)
    • 7.In the Lap of the Gods
    • 8.Stone Cold Crazy
    • 9.Dear Friends / 10.Misfire / 11.Bring Back That Leroy Brown
    • 12.She Makes Me (Stormtrooper in Stilettoes)
    • 13.In the Lap of the Gods Revisited

アルバムレビュー・解説

ハード・ロック路線の踏襲とロック・オペラの予感

 初期のクイーンを語るうえで欠かせないのは、プロデューサーのロイ・トーマス・ベイカー、エンジニアとして参加していたマイク・ストーンの二人。彼らはファーストから4作目「オペラ座の夜」までクイーンの音を支えることとなる(※ロイは『ジャズ』、マイクは『華麗なるレース』『世界へ捧ぐ』でも担当)。ロイ・トーマス・ベイカーは70年代終盤にジャーニーのヒットアルバム(『インフィニティ』『レヴォリューション』)を手掛け、マイク・ストーンも81年にジャーニーの世界的ヒットアルバム『エスケープ』を完成させる。彼はその後スーパーバンドのAsiaのプロデュースでも成功を収める。いずれもプログレッシブロックとハードロック、あるいはAORの要素を持つバンドであり、それらの音楽性がクイーンに内包されていることがわかる。どちらかと言えば、クイーンはあらゆるジャンルの音を吸収し、自分なりの音楽に消化し、状況に応じていろいろなアイディアを出すというバンドだ。そのバンドとしての特徴、つまりバライエティに富んだ音楽性は、まさにこの「シア・ハート・アタック」で顕著に表れている。メインソングライターのフレディとメイの楽曲ははっきりとその特徴が分かれており、それでいて双方が幅広い音楽性を見せている。

 前作「QUEENⅡ」でバンドのやりたいことを徹底的に追及し、本国イギリスで一定の評価も得た。今作の製作にあたっては、メンバーの大きな成長期でもあり、新たな方向性を模索する時期でもあった。その中で名曲がいくつも完成し、本国イギリスでヒットシングルを生み、アルバムも英2位、アメリカでも10位近辺まで達し、バンドは大きな自信を手にしたはずだ。その結果、自作『オペラ座の夜』で世界に衝撃を与えるに至ったというわけだ。

収録曲/動画で試聴

【収録曲】
  1. Brighton Rock(May)
  2. キラー・クイーン(Killer Queen)(Mercury)
  3. Tenement Funster (Taylor)
  4. Flick of the Wrist(Mercury)
  5. Lily of the Valley(Mercury)
  6. ナウ・アイム・ヒア(Now I’m Here) (May)
  7. In the Lap of the Gods(Mercury)
  8. Stone Cold Crazy(Deacon/May/Mercury/Taylor)
  9. Dear Friends(May)
  10. Misfire(Deacon)
  11. Bring Back That Leroy Brown(Mercury)
  12. She Makes Me (Stormtrooper in Stilettoes)(May)
  13. In the Lap of the Gods Revisited (Mercury)
【おすすめ曲・Youtube検索】

各曲解説・感想

1.Brighton Rock(May)

 ブライアン名の代名詞である自作ギターのレッド・スペシャルがフィーチャーされ、その認知度を高めるに至ったのがこの曲である(『全曲解説シリーズ クイーン』(2006)マーティン・パワー,シンコーミュージック・エンタテイメント,初版,p.43)。ブライアン・メイが10代の頃、父親とともに手作りされたこのギターは、100年以上前の暖炉の木材や古いバイクパーツなどの素材を使い、ピックの代わりに6ペンス硬貨を使い、一つのギターであらゆる音を奏でることができる。キャリアを通じてこのギターを使い続けることとなる。重厚なリフ、疾走感あふれるカッティングからディストーション、伸びのあるハイトーンまであらゆるテクニックを楽しめる。3分頃から1分にもわたるギターソロを挟んでいるのも面白い。

2.キラー・クイーン(Killer Queen)(Mercury)

 言わずと知れたクイーンの代表曲。当時の「ハードロックバンド」という彼らには狭すぎる括りを取り払った曲とも言える。代名詞である重厚なコーラス、独立した異なる旋律を奏でるヴォーカルがクイーンらしさを存分に発揮している。シンプルな進行の曲に緩急を与えるギターもしかり。

 歌詞は高級なコールガールを指しているそうだが(『全曲解説シリーズ クイーン』(2006)マーティン・パワー,シンコーミュージック・エンタテイメント,初版,p.45)、フランスが散りばめられていており、金持ちのお嬢様をイメージしても面白いかもしれない。歌詞を合わせて聞くと、よりその特異性がわかる楽曲である。冒頭の2曲でこのアルバムの持つ力が十分にわかる。

【歌詞 ※部分的に抜粋】

She keeps Moët et Chandon
In her pretty cabinet
きれいな棚にモエ・シャドン(※フランスのシャンパン)を飾り
‘Let them eat cake,’ she says
Just like Marie Antoinette
「ケーキはいかが」とマリー・アントワネット(ルイ16世の王妃)のよう

At anytime an invitation
You can’t decline
彼女の誘いは断れない

Caviar and cigarettes
Well versed in etiquette
Extraordinarily nice
キャビアに葉巻、気品あふれる振る舞いにうっとり

She’s a Killer Queen
彼女はキラークイーン(「魔性の女」と言った意味だろうか)

Recommended at the price
Insatiable an appetite
Wanna try?
価値に見合った女、飽くことを知らぬ欲、どうぞお試しあれ

3.Tenement Funster (Taylor)

 ロジャーテイラー作の、怪しげなメロディにしゃがれた低音ボイスから始まる曲は、ヘビーなベースリフを挟んで徐々にその雰囲気を変化させ、最後は感情的になる。ドロドロとした世界に閉塞感と開放感が同居するような、聞きごたえのある曲である。

4.Flick of the Wrist(Mercury)

  フレディ作の何らかのメッセージ性を含んだ曲。攻撃性や激しい感情を感じさせるヴォーカル印象的。

5.Lily of the Valley(Mercury)

 抒情的なフレディの歌がフィーチャーされた曲。2分足らずの尺で美しい悲哀のメロディーを楽しませてくれる。

6.ナウ・アイム・ヒア(Now I’m Here) (May)

 シンプルで力強いヘビーなギターリフに、多重録音の激しいヴォーカルが色付けする。めぐるめく転調が、シンプルでありながら壮大な印象を曲に付与している。#1,2と合わせて、アルバムの原動力となっている。中盤のサビと転調の繰り返しを、冒頭とラストのギターフレーズが挟み込み、最後はギターソロで幕引け。この特殊な構成も相まって、強い存在感を示している。

7.In the Lap of the Gods(Mercury)

 ロジャー・テイラーのショッキングな絶叫から始まり、フレディのオペラを思わせる歌声が印象的な楽曲。かすれたようなフレディの低音部のヴォーカルは、ロジャーの声と対比をなしてドラマティックな印象を与える。

8.Stone Cold Crazy(Deacon/May/Mercury/Taylor)

 高速のリフト重いディステーションを含む疾走感あふれるこの曲は、ライブ感漂う「へヴィーメタル」であり、最初期のスラッシュ・メタルとまで評される。後にメタリカがカバーしたほど。同年に同じくキャリア初期を迎えていたエアロスミスの楽曲に通じるところもある『Get Your Wings』。クイーンも含めた当時のハードロックバンドにとって、70年代初期のハードロックを解釈するとこうなるというわけか? 早口のまくしたてるようなヴォーカルも、エアロスミスのスティーブン・タイラーと共通している。

9.Dear Friends(May) / 10.Misfire(Deacon) / 11.Bring Back That Leroy Brown(Mercury)

 9.~11.では1~2分の短い曲がある意味メドレーのように続く。8.はピアノとボーカルで構成される繊細なメロディー、9.はジョンディーコン作の軽快な曲で、レッド・ツェッペリンが前年発表した聖なる館を想起させる、爽やかなポップ的要素をもった曲に感じる。ディーコンの初めての作品である。10.はブライアン・メイがウクレレを奏でるこれまた軽快な曲。独特の雰囲気を持った終盤の2曲へのつなぎとして、この2曲は効果的に働いている。

12.She Makes Me (Stormtrooper in Stilettoes)(May)

 アルバムの中で異彩を放つ独特のナンバー。単調なフレーズの繰り返しによって構成され、幻想的なハーモニーが相まってサイケデリックソングの様相を呈している。全体を包む水々しいとでも表現すべき雰囲気は、80年代終盤から90年代のブリティッシュロックを予感させる。

13.In the Lap of the Gods Revisited (Mercury)

 スローテンポの叙情的なメロディーの曲は、ビートルズの「ヘイ・ジュード」を思わせる「オーラララ」というコーラスが印象的で、アルバムのラストを飾るにふさわしい。

洋楽

Posted by hirofumi