真夜中の演奏会!『セロ弾きのゴーシュ』宮沢賢治 – あらすじ[考察,解説,感想]

2017年12月28日

未熟な音楽家と動物たちのコミカルな物語

新編 銀河鉄道の夜 (新潮文庫)

新編 銀河鉄道の夜 (新潮文庫) 』(「セロ弾きのゴーシュ」収録amazon_button

もくじ

<あらすじ>
  • 未熟なゴーシュと猫の来訪
  • 次々と現れる動物たち
  • 演奏会で大活躍!

<解説,考察,感想>

  • 宮沢賢治と音楽
    • 音楽好きの賢治
    • 宮沢賢治とオーケストラ

あらすじ

未熟なゴーシュと猫の来訪

  ゴーシュは、午前中は畑仕事をし、昼間はある活動写真館(昔の映画館)でセロ(チェロ)を弾く係を務めていました。しかし、その腕は未熟で、楽長にいつも叱られていました。その日はあまりにひどく注意されたもので、ゴーシュは自宅にチェロを持ち帰り、夜中にひとり練習を始めます。
※かつては無声映画が主流で、物語の進行に沿ってオーケストラが生演奏をしていた

 すると、部屋の扉がトントン鳴り、大きな三毛猫がやってきました。猫はゴーシュの畑から勝手に取って来たトマトを手に、「トマトの運搬は大変だ。お土産をどうぞ」などと言います。ゴーシュが怒ると、猫は生意気にも「ロマン派の作曲家シューマントロメライを頼む」と、リクエストします。そんな猫に、ゴーシュは目が回るようなひどい音で「インドの虎狩」という曲をプレゼントしてやります。最後に煙草を手にし、猫の舌でマッチをすってやると、猫は逃げるようにして去っていきました。

次々と現れる動物たち

 次の日の夜も、真夜中を過ぎてもずっと練習をしていたゴーシュ。すると、今度は屋根裏からカッコウが出てきて、「音楽を教えて欲しい」と言います。ゴーシュは仕方なく付き合ってやりますが、カッコウは何度もしつこく同じ練習を要求してきます。しかも、カッコウの声の方がゴーシュのチェロよりも綺麗に聞こえるのです。ゴーシュは腹立ちまぎれにカッコウを追い出します。

 次の晩もゴーシュが練習をしていると、今度はタヌキの子がやってきます。ゴーシュはこれまでのことがあったので「たぬき汁にしてやろうか」といきなり脅します。しかし、タヌキは父親から「やさしいゴーシュさんに習えと言われた」と言うのです。タヌキはチェロに合わせて太鼓の練習をしますが、そのうちゴーシュのチェロの調子の悪さを指摘します。ゴーシュも心当たりがあってので、タヌキの言う通りにチェロの調整をしていきます。

演奏会で大活躍!

 次の晩も動物がやってきます。今度はネズミの親子でした。ネズミは子供の病気を治してくれと言います。ゴーシュのチェロの音色がよい振動になり、体の具合が良くなると言います。近所の動物の間でも、病気になったらゴーシュの家の床下へ行くといいと言われているほどです。ゴーシュはネズミの親子をチェロの中に入れてやり、しばらく弾いた後で、パンを食べさせてやりました。

 それから六日後の夜、楽団は演奏会を無事に終えます。アンコールの拍手が鳴り響くと、楽長たちは無理やりゴーシュを舞台に立たせます。そして、困り果てたゴーシュを見て大喜びするのです。ゴーシュは我慢ならず、猫に聞かせてやった「インドの虎狩」を思い切り弾くことにしました。

 嵐のように一気に弾き終り、客の反応も見ずにゴーシュは楽屋へ戻ります。すると、予想に反して、皆はゴーシュの演奏をほめたたえたのです。その晩、ゴーシュは窓を明け、いつか来たカッコウに感謝の言葉を伝えるのでした。

セロ弾きのゴーシュ DVDamazon_button

解説,考察,感想

宮沢賢治と音楽

音楽好きの賢治

賢治は音楽に深い関心を持っており、自身が作詞作曲の歌がいくつか残されている。 代表作「星めぐりの歌」は賢治ゆかりの作品等を通じて現在でも親しまれている。

引用元:宮沢賢治 – 作品と評価 – Wikipedia
参照:novelUのBlog » 「双子の星」(宮沢賢治)のレビュー

賢治は熱心な音楽好きであり、暇を見つけてはレコードを買っていた。賢治が頻繁にレコードを買っていくため、地方の店の割に新譜レコードが多く売れるとして、行きつけの楽器店がイギリスに本社を置くポリドール・レコードから感謝状を贈られたという。

蓄音機の竹針を炒め、音質を高める針を発明したこともある。 米国ビクター社にサンプルを送り、製品化には至らなかったものの、その発想は高く評価された

引用元:宮沢賢治 – その他のエピソード – Wikipedia

宮沢賢治とオーケストラ

 このように、音楽に造詣の深い賢治は、実際にチェロを弾いた経験があり、作品に活かされています。具体的には、賢治が主催していた私塾「羅須地人協会」にて、農民による楽団の結成を目指し、チェロの練習を行ったという経験です。作中のゴーシュはチェロを上手く演奏できずにいましたが、その点も賢治の実体験です。

 その他のエピソードとしては、作中に出てくる楽団が「第六交響曲」を練習しています。それは賢治がお気に入りだったベートーベンの曲のことです。

賢治はベートーベンの交響曲を好んだが、特に第六番田園はお気に入りであった。

引用元:宮沢賢治『新編 銀河鉄道の夜』(2003)新潮社,第32刷,p.328

 

参考文献