セロとノルアとパミン(6)「アンジェリーナの哲学」

2017年11月8日

「言ったもん勝ち、やったもん勝ち」

一心同体―愛と人生、成功のセオリー

 

 人生ははっきり言って、「言ったもん勝ち」だ。言いたいことを言えるのが大事だし、多少の間違いや矛盾があっても主義主張を押し通してしまえるかどうかで、勝負は決まる。正しいか間違いか、良いか悪いかは全体の6割いけば良いほう。あとは勢い。

 「やったもん勝ち」ってのもある。恥やためらいに負けて、遠慮ばっかしてると損をする。迷ったら思い切ってやる。「踏み切る、割り切る、思い切る」。何かをしようとして迷うことはたくさんけど、大事なのはどうして迷っているのか。リスクがあるとか、行動自体に問題があるとか、成功する確立があまりに低いとか、そういう場合はじっくり考えたほうがいい。諦めも肝心。でも、迷いの理由が恥やためらいだったら、絶対にやるべき。

 その点、女性は強い。女性の中でも、まず出産を経験した女性は強い。出産ってのは、人間ができることの中で、最もすごいことの一つ。というか、人間の生きる意味ってのは子孫を残すことなんだから、子供を産んじゃえばあとは何だってできる。だから強い。恥もためらいも無くなって、やりたいことはなんでもできる。ただ、力の使い方を間違うと、ただのわがままな女になってしまう。

 落合信子になるか、野村沙知代になるか。つまりはそういうこと。

 

 

ライバル登場!?

前回までのあらすじ

総理大臣と小学3年生、二足のわらじの生活を始めた純一郎くん。クラスメイトのエマーソンくんに招かれたパーティーにて、性に目覚める。

その後、地方自治を勉強するために都知事になり、大衆を相手にする術を身につけようとシンガーソングライターも経験。

会見と謝罪のスキルも身につけ、経験値を蓄えていくのであった。

登場人物
  • 純一郎くん  ……夢の世界で生きる決意をし、念じれば何にでもなれる力を手に入れた小学3年生。現在は総理と都知事を掛け持ちし、シンガーソングライターもこなす。
  • エマーソンくん……純一郎くんのクラスメイト。ハーフ。政治好きで大人びている。
  • ジョリー   ……エマーソンくんの母。アンジェリーナ・ジョリーに似ているが貧乳。脇が甘い。

 

 謝罪会見続きで心労が溜まっていた純一郎くん。富山の薬売りからジェネリックをもらい、心の平穏を取り戻した。そんな純一郎くんは、久しぶりに友人と遊ぼうと思い、小学3年生としてエマーソンくん宅を訪れた。

 しかし、エマーソンくんは例のディベート塾が開催する「世界のビジネスリーダー大講演会」の見学のため不在。仕方ないので、帰って漫画でも読もうと思ったところ、ジョリーに引き止められ、茶を飲むことなった。

「そうなの? 純一郎くんは野球が好きなの? 」

「はい。プロ野球もメジャーリーグも」

 

「じゃあ、将来の夢はプロ野球選手かしら? 」

「やるのはそんなに得意じゃないので……」

 

「でも、道具は持ってるんでしょう? 」

「ええ、一応」

 

「バットと、ボールと……ボールはいくつ持ってるの? 」

「4つくらいですかね」

 

「ふふ……そこは『2つ』って言えばいいのよ」

「はあ……」

 

 ジョリーは今日も意味ありげなことを言って、青少年をたぶらかそうとしているのか? しかし、本日のジョリーはひと味違った。いつものジョリーならば、このままA、B、Cとアルファベットを順に刻んでいったことだろう。自分はAでしかないのに、Cまで行ってしまうのだ。しかし、本日のジョリーは説教臭かった。

 ジョリーはまず、純一郎くんの性格にケチをつけた。もっと積極的になるべきだし、相手が友達のママでも女性として扱うべきだ。つまり、もっとレディーファーストで、あなたの方から話題を振って、私をもてなすべきだと。それから、もっと私をドキドキさせるべきだ、と。相手に興味があろうがなかろうが、男は相手にロマンスを感じさせなければいけない。「ひょっとしたら……」と感じさせる男がモテる。それはもはやマナーだ、と。

 大体、モテる男っていうのは、出会った女性の7割以上をその気にさせる。じゃあモテる女はどうかっていうと、出会った男性の7割以上に馬鹿と思われるようにしている。それが上手い。男ってのは結局、自分より頭が良い女は嫌いで、相手の女が何を考えているか全部把握できていた方が安心。ベストは、天然ボケだったり、おっちょこちょいの女。そういう女を見ると、男はすぐに食いつくわ。

 

 そう言うジョリーは、さっきからずっと口元にクッキーのかけらをつけていた。

 

 ジョリーは、馬鹿と利口の区別はつくし、利口な人間の言っていることや気持ちは100%理解しているが、馬鹿だった。そういう稀有な人間だった。哲学で言うところの「無知の知」を知る無知なので、「無知の知の無知」だった。ただし、彼女はドSではないので、「ムチの血のムチ」ではなかった。そこはほめてやって良いところだろう。

 

「ところで、純ちゃん? あなたはちょっとおとなしすぎるわね。家でもそうなの? 」

 

「あのね、性格ってのはいろいろあるけど、おとなしいのはマイナスよ。損をしちゃうのよ。わかる? 」

 

「まず相手にナメられるわ。それに、いざという時、言いたいことが言えなくなるの」

 

「それだけじゃないわね。好きな女の子を前にした時も、あなた何も言えなくなるわ」

 

「それから……姿勢が悪いわね。ほら、もっと背筋を伸ばして。私みたいに、思いっきり胸を張るの」

 

「そうそう。それで、ちゃんと私の目を見ては話すのよ。いい? 」

 

「さて、準備ができたところで、純ちゃん? あなた、何か私に言いたいことある? 」

 

 ジョリーは純一郎くんの隣に座り、肩に手を回した。

 

「ほら、いいのよ。言って」

 

 ジョリーの吐息が純一郎くんの耳にかかる

 

「ボールはいくつ持ってるの?」

 

「あなたのバットは何製なの……?」

 

 純一郎くんは我慢できなくなり、思わず叫んだ

 

「き……金属製です!!」

 

「まだまだお子様のキミに、良いこと教えてあげるわ。よく聞きなさい」

 

 と、その時、テレビではアメリカの新リーダーを名乗る男が大衆を前に演説していた。

 

「女は感情で物事を語る馬鹿だ! 理論的な話などできやしない! つまり、弁護士や学者にはなれない。ましてや、どうして女が政治家になれるだろうか? もしなれたとしても、一体国のために何ができるというのか? せいぜい、映画館のレディースデイを月2日に増やすくらいか、ケーキの値段を安くすることくらいしかできないだろう。あとは、女性の権利拡大という名の、男性の権利縮小だ。そんな差別的なことをする人間を大統領にしていいだろうか? お願いだから、大統領などと出しゃばらず、ソファーに寝転がり、ポテチを食いながら、知名度ばかりのクソみたいな映画でも見て、『芸術って素晴らしい』などと知ったかぶりしていてほしい。知り合いの映画監督が言っていたな。『女を騙すのは簡単だ。主人公とヒロインを美男美女にし、ブサイクな友人を用意し、悪役に友人を殺させる。主人公と共に悪役と戦い、最後はハッピーエンド。エンディングでアイドルのクソみたいな曲を流せば完璧だ』ってね。言いたいことは一言……女に大統領など務まらんということだ! 」

 

 ジョリーは怒っていた。Tシャツの向こうの乳首が立っていた。

続く

今日の格言

「モテたい女は馬鹿になれ」

 

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