セロとノルアとパミン(2)「アンジェリーナ・ジョリー」

2017年11月8日

「優しさって残酷よね」

トムとジェリー アカデミー・コレクション [DVD]

 

 地位を得て、金を得て、家族も家も車も持って……大抵のものを手に入れると多くの人は落ち着くものだが、そうじゃない人もいる。地位でも名誉でも金でも女でも何でも、そのうちの一つに異常なまでの執着心を持ち、際限なく求める人がいる。それはもはや呼吸と同じ。人間は何も酸素を好きで吸ってるわけじゃない。吸わなきゃ死ぬからだ。それはもう、欲とか感情を超えたところにある。

 そこまで行ったら、もう許してやっても良いんじゃないか。

「わかったわかった。お前はもう、女が好きとかどうとかじゃなくて、そういうものなんだろう。な、わかったから。だから、嫁さんや子供に迷惑掛からないように、その辺の女引っ掛けるんじゃなく、キャバクラとか風俗行って来い。な。金は俺が出してやるから」

 優しさは罪である。

 

 

純一郎くん、招かれる

前回までのあらすじ

小学3年生の純一郎くんは森を彷徨い、山小屋で深い眠りについた。彼はそのまま夢の世界の住人となり、思うままに何にでもなれる力を得た。

彼はとりあえず大統領になり、郵政民営化を達成。続いて、2人の息子の孝太郎と進次郎を芸能界と政界へ送り出した。

そこで彼は悟った。「世の中顔が8割だ」。

 

 人間は見た目が大事で、血のつながりは侮れない。あなどれないあなどれないあどれなりん。

 そういうわけで、純一郎くんは興奮状態にあった。今日はクラスメイトのハーフ「エマーソンくん」に、パーティーに誘われたからだ。純一郎くんは先日総理大臣になったばかりだが、ずっと総理をやるのは正直ダルい。彼は大半の時間を、以前と同じように小学3年生として過ごすことにし、暇な時に総理をやることにした。

 話を戻そう。エマーソンくんの父親は3代続く縫製業を営む日本人。母親はアフリカンの血が交じるアメリカ人。アンジェリーナ・ジョリーにそっくりだが、貧乳だった。エマーソンのパーティーは、誕生日とか記念日とかそういうものじゃなかった。単なる気まぐれで、週末にパーティーをしようというノリだった。いかにもアメリカ人の母親らしい発想だ。しかし、貧乳だった。

 エマーソンくんの母親、面倒だからジョリーと呼ぼう。ジョリーは純一郎くんに歓迎のキスをした。純一郎くんは大人びているもののまだ8歳。動揺を隠すために、一瞬だけ総理になり、「ラブ・ミー・テンダー」と返した。ジョリーには案外ウケた。

(中略)

 さて、炭酸をしこたま飲み、チキンもケーキもたらふく食った。純一郎くんとエマーソンくんは並んでソファーに座り、大好きなトムとジェリーのDVDを見ていた。

「さて、ミスター純一郎。今の日本の経済はどうだろうか?」

 エマーソンくんの父は政治が大好きだ。加えて、エマーソンくんは母の勧めでディベートスクールに通っている。そこでは子供向けの新聞をテーマにし、子供同士で議論をかわすというものだ。授業の最後にはお菓子がもらえるのだ。そういうわけで、エマーソンくんは8歳にして話の切り口がマンハッタンのビジネスマンなのだ。

「エマーソン、俺を誰だと思ってるんだ? 日本の総理大臣だぞ」

「日本の総理大臣に何ができる?」

 エマーソンくんの表情は挑戦的だった。

「増税! 赤字国債! 金融緩和!」

 エマーソンくんは思わずのけぞった。

(中略)

 気がつけば純一郎くんは、ジョリーの胸ばかり見ていた。思春期には早いが、もう目覚め始めていたのだ。

 夜8時、帰り際にエマーソンくんが言った。

「純一郎? 君が何を言いたいのか、僕には全部わかってる」
「僕のママのこと、ずっと見てたろう? 」
「それで、君はこう思ったはずだ。「アメリカ人のくせに日本語が上手いなあ」ってね」

 HAHAHA!!

「さて、アメリカンジョークはさておき。純一郎。君はママのおっぱいばかり見ていたろう」
「でもな、純一郎。これだけはよく憶えておくんだね」
「ホットケーキは温めると何倍にも膨らむ……わかるよね?」

 エマーソンくんは31歳のサラリーマンの顔で笑った。

「ただし、それを温めるのは誰か……それは君にはまだ早すぎるね。ハバナイスデイ! 」

 こうしてパーティーは終了した。

 帰りの道、純一郎くんは思った。

「アベノミクス……コイズミクス……ホットケーキミクス!!」

 こうして、世界を揺るがす経済政策が誕生したのだった。

続く

今日の格言

「あたためると膨らむんだよ」

 

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