『シナリオの基礎技術』のレビュー[ストーリー,人物,場面,構成]

2017年11月8日

小説の構成のポイント

「メイン要素とサブ要素」「省略(必要なものだけ書く)」「面白さ」

 構成というのは、「ストーリー」「キャラクター」「描写」といった小説の要素の組み合わせ方、それら全体の配置・配分のことです。従って、構成ではいろいろな要素を横断的に扱うことになります。

 最初にポイントを言うと、構成では「メイン要素とサブ要素」を分けること、「省略(必要なものだけ書く)」を使って効率よくストーリーを進めること、「面白さ」を追求するという3点になります。

メインのシーンとサブのシーン

サブのシーンは、メインのシーンと関連付ける

  • メインとなるテーマ・キャラクター・シーンを決める
  • サブのシーンは、メインの話とのつながりのあるところだけ描き、無駄を省略する

 例えば企業ものの小説では、会社のシーンがメインになります。その一方で、主人公の奥さんが出てくるシーンなど、プライベートのシーンがあります。これがサブのシーンになります。そこで重要なのは、サブのシーンは基本的に、メインのシーンのために書かなければなりません。例えば主人公が休日にスポーツをするにしても、それが学生時代に続けていたもので、学生時代の友人が出てくるようにします。そして、その友人は同業他社に勤める人間で、後々にメインのテーマに関係してくるならば、サブのシーンとして充分意味があるでしょう。また、自宅で妻と食事をするシーンでも、会社では仕事ができる抜け目のない社員であっても、妻の前では弱みをさらけ出し、妻も妻で思ったことをはっきり言うとなればどうでしょう。主人公の別の顔を見せる意味があり、人間味も出てきます。

 ところが、例えば休日のシーンで、単なるストレス解消のためにゴルフの打ちっぱなしにでも行き、そのままサウナに言って、帰りに一杯やるとなれば、そのシーンの存在意義は薄れてしまいます。他の表現でも代用できますし、メインのテーマにそれほど影響を与えません。

 また、サブのシーンは無駄なく短く伝えるのが基本です。妻とのシーンでも、夕食の一コマを切り取って、伝えたいことだけを端的に表現したら、すぐにメインのシーンへ戻った方がいいでしょう。例えば休日に妻とショッピングなどに出かけるシーンを長々と表現していては、よほど上手く書かないと読者に飽きられてしまいます。

主人公が登場しないサブシーンの書き方

 他にも、主人公が仕事に行っている間の、主に妻が登場するシーンを書くとすればどうなるでしょう。この場合は、例えば主人公夫婦が住んでいるのは会社の社宅となっているマンションとします。そして、平日の午前中などに、マンションの一室やラウンジなどで婦人会が行われるシーンにします。そこには主人公の同僚婦人はもちん、上司の婦人も参加しており、社内の様子をそのまま投影したような人間関係があります。このようなシーンにすれば、メインのテーマへのつながりが強くなり、別の視点から主人公や会社を描くことができます。

構成上のテクニックについて

面白さを出すため「制約」と「伏線」

  • 制約:
    宿命的な制約(生まれや育ち等)、社会状況、人間関係など。
  • 伏線:
    事件の前フリ、ヒントや手がかり。
    ※余計な説明を「省略」する効果もある。
    ※癖や仕草・表情を伏線とし、人物の心理・性格・行動を表現することも可能

 

  制約とは自由な活動を妨げること、あるいはその条件です。小説の中で、主人公はある目的に向かって、あるいは自分の意志に従って行動します。その際に、簡単に目的を達成させるのではなく、いろいろな制約を設けると話が盛り上がります。特に宿命的な制約を設けると、ストーリーのアクセントとして効果的です。具体例をあげれば、家庭の事情、病気、罪、トラウマなど個人に対する制約、戦争など社会状況による制約、約束や集団の中の掟など人間関係の中の制約、時間的・物理的な制約があります。

伏線は様々な応用が利く便利な技術

 伏線はテクニックとしての印象が強いでしょう。小説の中に散りばめられた伏線が、クライマックスで見事に回収されると、読者は思わず唸ってしまいます。さらに、伏線には余計な説明を省く意味もあります。日常の中での人間の言動、あるいは世の中の動きなどは一定のパターンをもっています。そして、それは多くの人に認知されています。それならば、わざわざ物事を順を追って説明する必要はなく、ポイントを押さえて省略して書けばいでしょう。

 例えば、ある夫婦が離婚する経過を描くとしましょう。その場合、仲がこわれるきっかけをかき、徐々に夫婦関係が悪化し、決定的な出来事があって、最後は離婚する……と一つ一つ書いていくのは面倒です。重要なシーンであっても、ストーリーのテンポを考えるとある程度の省略は必須です。そこで例えば、「外泊が増えた夫」「会話の無い夕食」「知らない女からの電話」という短い場面を三つ書いておきます。そうやって伏線を張っておき、ストーリーをいったん切ります。その次に、「それから半年後……」などと書き始め、「段ボールがいくつもある見慣れないがらんとした部屋で、カップラーメンをすする夫」を登場させればどうでしょう? 「何かあったのかな? 奥さんとトラブルがあったのかな?」と予想できます。間をすっ飛ばして省略できますし、あえて離婚までの経過を伏せることで、読者にそれを想像させることができます。実際に書いて見せるより、読者の想像にゆだねた方が、リアリティがあるという効果もあります。

 また、伏線は人物描写にも応用可能です。人物について性格をそのまま説明するのもいいですが、ストーリーの流れに沿って自然と伝えることができます。具体的には、話の流れの中で癖、仕草、表情、言動をさらっと散りばめておくだけです。すると、読者はストーリーを追っていく中で無意識のうちにキャラクターの人物像をつくりあげていきます。先ほどの「省略」と同じで、読者に想像してもらうというわけです。

会話のシーンを「面白く」する方法

  1. 感情を出す
  2. 省略する(効率的に、テンポよく)
  3. 一般的な話ではなくキャラクター個人の話をする
  4. 話の内容を具体化する

 1.については、言葉や口調といった表面的無部分だけでなく、キャラクターの感情・性格、その場の状況を考慮します。そのためには注意点がいくつかあります。一つ目は、テーマやストーリーに気をとられすぎないことです。キャラクターの感情よりも話の展開を重視してしまうと、無味乾燥な会話になってしまいます。性格・感情、状況を考慮すれば、時にはテーマに反するセリフ、ストーリーの流れを止めてしまうようなセリフも出てくるのです。もう一つは、一歩進んでセリフ選びをすることです。人が会話をするときは、相手の感情やリアクションを考慮した上で、一歩二歩進んで言葉を選びます。逆に質問に答えるときなどは、一度心の中で自分の感情を把握しつつ、その上で返答をします。このように、相手と自分の感情のフィルターを通してからセリフを選ぶのがポイントです。このように言葉を選んでいけば、自然と2.もできます。

 3.4.は似た意味をもっています。キャラクターの存在意義は、「感情」を通して読者に小説の世界を共有させることです。ここで、現実世界での会話について考えると、一般的な話ばかりする人より、自分の話をしてくれる人の方が、身近に感じることが多いでしょう。もし好きにはなれなくとも、その人の存在はより心に残るでしょう。ですから、キャラクターにもなるべく個人的な話をさせた方がいいのです。

 また、抽象的な言葉よりも具体的な言葉の方が相手に伝わります。抽象的な言葉は物事をまとめる際には便利ですが、相手に伝える時には不便なことも多いです。例えば「教育についてどう思う」と聞かれて、すぐに答えられる人は少ないでしょう。これを具体化していくと「子供の教育についてどう思う」→「子供の勉強についてどう思う」→「子供は塾に通わせた方がいいか」→「うちの子供は勉強ができない」→「うちの子供は算数ができない」→「うちの子供は分数がわからない」となっていきます。ここまで来ると、言葉に感情が伴ってきますし、相手も答えやすいでしょう。いくつかの答え方のパターンがあり、その中から選択することもできます。

魅力的な主人公を描く

  • 長所……人間的な魅力、突出した能力など
  • 短所……庶民性、一般人との共通点
  • 長所と短所のは大きなものを1つずつ、明確に、シンプルに描く
  • 先に短所を見せて共感させると、主人公の長所やその後の成長も受け入れやすくなる

  人間的な魅力や能力については、ある意味でどんなものでも構いません。悪役でも、あるいは犯罪行為でも、見る人や小説のテーマによっては「魅力」になりえます。長所に対してどのような短所を選ぶかの方が重要でしょう。また、長所や短所をあれこれと組み合わせてしまえば、個々の魅力が薄れたり、キャラクターの輪郭がぼやけてしまったりします。まず大きなものを1つずつしっかり描きましょう。短所と長所の順番も、絶対ではありません。大切なのは、共感を持てる主人公が活躍する姿を見て、読者が感情移入できることです。