洋楽ロックの歴史と名盤(4) – 90年代英米ロック比較

2017年11月4日

ミクスチャー・ロックとポップ・パンクの台頭

【カート・コバーン亡き後のアメリカのロック】

 ニルヴァーナはオルタナティブ・ロックの中でもグランジというカテゴリーを代表するバンドだった。そのオルタナティブ・ロックのジャンルで、同時期に世に出めたのが「ミクスチャー・ロック」。これは和製英語で、日本でしか通用しないカテゴリ。欧米ではあくまでオルタナティブ・ロックであり、ラップ・ロックなんて呼ぶこともある。その特徴は、ロックにラップやファンクの要素を加えたもの。レッチリはそれをまさにわかりやすく体現したバンドであり、大ヒットアルバムを何枚も世に出し、現在に至るまで活躍している。

 一方、ニルヴァーナと入れ替わるようにして、音楽シーンを賑わせたバンドがいる。それがグリーン・デイだ。日本でもかなり有名なこのバンド。分類としてはニルヴァーナやレッチリとは違う。パンクをより聴きやすくしたもの、パンクにロックのメロディーを加えてさらに聴きやすくしたという「ポップ・パンク」に分類される。

 ややこしい分類の話はさておき、グリーン・デイはメジャー・デビューしていきなりバカ売れする。1000万枚を売り上げて一気にスターダムにのし上がり、その後もメガヒットアルバムを数枚、グラミー賞の常連にまでなる。イギリスでオアシスなどのビッグ・バンドが登場したのと同じく、アメリカでも90年代のはじめにその後のロック界を背負うアーティストが続々と登場する。

レッド・ホット・チリ・ペッパーズ(83~)-ロックにラップにファンクをミックス

ブラッド・シュガー・セックス・マジック』(91)


ブラッド・シュガー・セックス・マジック

 レッチリは俗にいうミクスチャー・ロック。わかりやすく言えばロックにラップやファンクなどの黒人音楽をミックスしたもの。90年代からアメリカで大流行したラップ、ヒップホップの要素を取り入れたその音楽は、アメリカ流に言えば非常に「クール」で、新たなロックとして歓迎された。レッチリ以外にはレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンなんかも有名。2000年代に登場するリンキン・パークもミクスチャーに分類される。

 小難しい話はこの辺でやめて、レッチリはやっぱり『ブラッド・シュガー・セックス・マジック』が素晴らしい。名曲揃いで音も格好良い。何よりセンスとノリが抜群。洋楽ではラップとかR&Bだけ、ロックは全然知らないなんて人がいるけど「例外でレッチリはたまに聞く」なんて話もちょいちょい聞く。幅広い人に受け入れられる音楽なんだと思う。ファンクの要素が強く、曲調も幅広いのが『ブラッド・シュガー・セックス・マジック』。

カリフォルニケイション』(99)


カリフォルニケイション

 一方、『カリフォルニケイション』はハードなアルバム。ハード・ロックの要素が強く出ている。曲調も似たものが多く、統一感がある。このアルバム発売当時が最も騒がれていた印象があるので、知名度も高い。センスが素晴らしい『ブラッド・シュガー・セックス・マジック』に対して、楽曲のパワーが売りの『カリフォルニケイション』。

グリーン・デイ(87~)-「パンク+ポップ」の人気バンド

ドゥーキー』(94)-グリーン・デイを聞くならまずはこれ!!


ドゥーキー

【日本でも大人気。衝撃のメジャー・デビュー作】

 ミクスチャーの一方でアメリカのロック界を席巻したのがポップ・パンク。その代表がおなじみグリーン・デイ。他にも、オフスプリングSum41などなど。特に日本で人気が出たこともあって、これらのバンドを知っている日本人は多い。

 そんな中でも、グリーン・デイは別格。ポップ・パンクというカテゴリを超えて、名作をいくつも世に出すビッグ・バンドに成長。その始まりとなったのが『ドゥーキー』。これはメジャー・デビューの1作目で、インディー時代にはすでに3枚くらいアルバムを出していた。インディーでの人気もあって、アルバムは1000万枚を超えるメガヒットを記録。肝心の内容は、「とにかく聞きやすい!」。この一言に尽きる。パンクのシンプルな音に加えて、ポップやロックのメロディーが加わってるんだから、そりゃそうだ。それでいて聞き飽きないところがグリーン・デイのすごいところ。このメジャー・デビュー1作目は必聴。

アメリカン・イディオット』(04)-壮大なコンセプト・アルバム!!


アメリカン・イディオット

【10年経って本格派へと成長】

 グリーン・デイはデビュー後しばらくはパンク路線で行き、その後は一度シンプルなロックに行くなどしつつ、2004年に大作を完成させる。それが『アメリカン・イディオット』。このアルバムはいわゆるコンセプトアルバムであり、音楽性が似ているザ・フーなんかに影響を受けている(ちなみに、ザ・フーはパンクの元祖の一つに数えられるバンドであり、かつてコンセプトアルバムを積極的に世に出した)。僕もリアルタイムでこのアルバムを聞いていて、当時よく読んでいた音楽雑誌のインタビューで、フロントマンのジョー・アームストロングがそんな事を言っていた記憶がある。

 アルバムは世界中で大ヒットを記録。その内容もブッシュ政権批判とあって話題性を呼び、グラミー賞を受賞。ここでグリーン・デイの新たなキャリアが始まり、次作21世紀のブレイクダウンでも社会風刺の要素を打ち出し、再び大ヒット&グラミー受賞。気がついてみればビッグなバンドになってしまったグリーン・デイ。現在は再びシンプル路線に戻っている模様。

 

つづき:ロックの歴史 – 2000年代