洋楽ロックの歴史と名盤(4) – 90年代英米ロック比較

2017年11月4日

90年代の幕開け

オアシス(91~09)-ブリット・ポップの立役者

 90年代から00年代にかけて、ロック界の中心にいたバンドの一つのがオアシス。個人的にも大好きなバンド。曲調はオーソドックスなロックで、特に聞きやすいメロディーが特徴。そのためか、日本でも結構人気がある。そんなオアシスは、世界的には、ブラーと並んで、イギリスのブリット・ポップ・ムーブメントの中心的存在として位置づけられる。

  オアシスのバックグランドを見れば、まずは60年代から70年代にかけての黄金期のロックの影響がある。ビートルズやローリング・ストーンズ、ボブ・ディランあたり。それから、70年代のパンク。セックス・ピストルズ。さらに、彼らのデビュー数年前に登場したストーン・ローゼズ。これらの影響を受けているのが特徴。曲調は特にストーン・ローゼズやピストルズからの影響が大きい印象。まあただ、それもアルバムごとに異なる。

Definitely Maybe』(94)


Definitely Maybe

【ビートルズ、ローゼズ、ピストルズからの影響】

 まずはデビュー・アルバム『Definitely Maybe』。これは聞けばわかるけど、ストーン・ローゼズのファーストアルバムの影響を受けている。

 ご存知の方も多いかと思うけど、オアシスの中心メンバーはギャラガー兄弟。ボーカルが弟のリアム・ギャラガー、リードギターでソングライティングを行うバンドのリーダーが兄のノエル・ギャラガー。実質的にオアシスを支えているのは兄のノエルなんだけど、初期のオアシスを語る上では弟リアムの存在もかなり大きい。というのも、この頃のリアムの声が素晴らしい。

彼の声質は度々「ジョン・レノンジョン・ライドンの融合」等と表現されてきた。

引用元:リアム・ギャラガー-ライブパフォーマンス-wikipedia

 昔のロックを聞いていないとこの例えはわかりにくいかもしれない。ジョン・レノンはロック史に残る名ボーカリストとしても有名。その声は、鼻づまりが怒鳴ったような声。その一方で、柔らかく優しい声でもある。一方、ジョン・ライドンは声というより歌い方。

 実際のリアムはもっとやわらかい声だけど、確かに影響を感じる。実際、リアム本人は息子に「レノン」と名付けるくらいジョン・レノンが好きだし、兄弟揃ってピストルズが大好き。意識して歌っているところもある。あと、先ほど紹介したRock ‘n’ Roll Starは、ピストルズのHolidays In The Sunからの影響を受けているのがよく分かる。この辺からも、昔のロックから影響を受けたバンドだということがわかる。ちなみに、兄のノエルはビートルズではポール・マッカートニー派。

モーニング・グローリー』(95) – 90年代最高のメロディー!!


モーニング・グローリー

【人気を決定づけたセカンド・アルバム】

 オアシスのセカンド・アルバムはとにかく売れに売れまくった。イギリス国内だけでも400万枚を超え、これまでに世界で2000万枚以上の売上を記録。アルバムは心地よいメロディーを持った曲が多く、その売上と相まって、「ビートルズの再来」とまで言われた。

 前作との違いは、オリジナリティを確立したところ。前作は音楽性の幅広さがあった反面、影響を受けたアーティストの色が強く出ている曲が多かった。一方、セカンドでは完全に「オアシスの音」を確立。作品全体の統一感、完成度もより高くなっていて、名実ともにオアシスのベストにあげられる。

 また、音がより大きく、壮大になったのもこのアルバムの特徴。この後、オアシスは音へのこだわりを追求した作品を発表していくことになる。特に、ギターサウンドを強調した曲調へと変化していく。初期の柔らかく包み込むような音と美しいメロディー、中期のギターサウンド、その過渡期にあるアルバムと言ってもいい。2つの特徴が絶妙なバランスで調合されている。

60’s/70’sへの回帰。クラシック・ロックとサイケデリック・ロック。

Don’t Believe the Truth』(2005)


Don’t Believe the Truth

【バンドが再評価されるきっかけとなった1枚】

 キャリア前半のオアシスは、良くも悪くも初期の2枚のアルバムのインパクトが強く、それ以降は作品が批判されることもしばしば。3枚目は発売時点でオアシスへの注目度がMAX。曲のクオリティは高かったものの、大作主義に走ってしまい、音作りや編集が上手くいかず評価はいまいち。4枚目はサイケデリック風の作品で、名曲揃いで完成度も高かった。しかし、それまでのアルバムほどは売れず。5枚目はバンドが自らプロデュースした意欲作も、またしても評価は低かった。

 それらのアルバムは実際に聞いてみると良い作品なんだけど、どうしても初期の傑作の影が彼らに付きまとう。商業的には成功していても、メディアもファンもそれ以上の作品、歴史を変えるような傑作を求めてしまう。その一方で、バンドは結成から10年も経ち中堅の位置に。バンドの活動は相変わらずメディアに注目され、気がついてみれば大物バンドとなってしまった。そんななんとも言えないアンバランスな状態の中で、ようやく好意的な評価を受けるアルバムが発表される。

 『Don’t Believe the Truth』は60年代・70年代のクラシック・ロックへの回帰。オアシスといえば、初期のブリットポップ時代の隙間のない音が特徴だったけど、このアルバムでは一転。シンプルな音作りで、そんなに音を詰め込みすぎてない。逆に、音と音の隙間に、時折アクセントを加えている感じ。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドとか、ローリーング・ストーンズっぽい曲があったり、シンプルで古典的な音。「Lyla#3」(youtube)なんかは、日本でもヒットした曲で、聞きやすいと思う。

 もう一つ、このアルバムではバンドメンバーが曲作りに積極的に参加している。それまでメインソングライターのノエルが大半の曲を書いていたのが、他のバンドメンバーとで半々くらいのバランスになっている。この辺の変化は、当時では「音楽性が広がる」なんて言われていたけど、後から考えてみると解散後のノエルと他のメンバーの行方を示唆しているとも言える。

Dig Out Your Soul』(2008)


Dig Out Your Soul

【最期の作品はサイケデリック】

 結果的にラストアルバムになってしまったのが『Dig Out Your Soul』。前作と比べると再び音に色がついている。基本はサイケデリックなんだけど、4枚目とくらべればこちらの方が音がヘビー。加えて、ドラムやベースのフレーズの繰り返しが多様されて、リズミカルな音作りになっている。シングル曲の「The Shock Of The Lightning#4」(youtube)が象徴的。pvも含めてかなり凝った作りになっている。

 個人的にはかなり面白いアルバムなんだけど、評価はまたイマイチ。商業的には成功するし、他のアーティストからも評価され、世界中で幅広く聞かれているのに、いつも何かと批判されるバンド。それがオアシス。「批判されるのは注目されている証拠」なんて言うけど、それにしても批判されすぎ。こんな良いバンドなかなか出ないよ(笑)。

2009年にバンドは解散。メンバーはソロと新バンドへ

【明暗分かれたノエル・ギャラガーとビーディー・アイ】

 それはそうと、オアシスはベテランの域にようやく入ったかなあというところで、内輪もめで解散。直接的な原因は……例えばリアムのボーカリストとしての能力の低下とか、いつもの兄弟喧嘩とか、個々のメンバーの能力が向上してきたからとか、いろいろ考えられる。結果として、解散後のメンバーは「ノエルとその他」に分かれる。はじめに動き出したのは、弟のリアム主導で結成されたバンド「ビーディー・アイ」。2009年から活動し、2011年と2013年にそれぞれアルバムを発表し、2014年に解散。このバンドは正直言って……イマイチ。シンプルなUKロックを標榜していたけど、単調な曲ばかりでつまらない。イントロとメロディー部分はいいんだけど、サビが決まらない。インパクトに欠ける。そんな感じ。

 一方、ノエルも2011年にファーストソロアルバムを発表。こちらはオアシス時代の総決算とも言える充実の内容で、メディアからの評価も高く、商業的にも大成功。「オアシスはノエルで持っていた」と再認識させられるアルバム。初期のメロディアスな曲もあれば、後期に見せたシンプルでクラシカルなロックもあり。オアシス時代のデッドストックもありと、オアシスファンは絶対聞くべきアルバムになってる。ちなみに、セカンドも2015年に発表され、こちらも素晴らしい作品。もういい年だけど、作曲能力は全くと言っていいほど衰えない。これから10年は楽しませてくれるだろう、素晴らしいアーティスト。

⇒【4】「プライマル・スクリーム(82~)」「ケミカル・ブラザーズ(92~)」