洋楽ロックの歴史と名盤(4) – 90年代英米ロック比較

2017年11月4日

もくじ

  1. 90年代のロックへ向けて
    U2 / ストーン・ローゼズ
    -90年代の扉を開けた2つのバンド
  2. ガンズ・アンド・ローゼズ / ニルヴァーナ
    -80’sメタルの終焉とグランジ
  3. オアシス
    -ブリット・ポップの立役者
  4. プライマル・スクリーム / ケミカル・ブラザーズ
    -多様な90’sUKロック
  5. レッチリ / グリーン・デイ
    ミクスチャー・ロックとポップ・パンク

90年代のロックへ向けて

 ちょうど日本で言う昭和の末から平成の始め(1990年前後)は、90年代から21世紀の現在まで活躍するバンドがデビューしている。特に、現在はベテランの域に達しつつある「世界的なバンド」が多くデビューしている。昭和の終わりに生まれた自分にとっては、この時代のロックからようやく「リアルタイム」に入ってくる。

 他の時代と比べると、90年代以降のロックは良く言えば「群雄割拠」、悪く言えば「あやふや」の時代。60年代のサイケデリック、70年代のプログレやハード・ロックのような世界を巻き込んだブームやジャンルは無い。ただ、見方を変えれば、ロックが分類できないほど幅広くなり、実力のあるバンドがあまりにも多いとも言える。また、中小規模のブームはいくつかあったし、長きに渡って世界中から愛されるバンドも多い。その辺を上手く紹介していきたい。

U2とストーン・ローゼズ-90年代の扉を開けた2つのバンド

U2(76~)-アイルランド出身、数々の名作を生み出した世界的バンド

ヨシュア・ツリー』(87)


ヨシュア・ツリー

【ロック史に残る名作】

 デビュー当時はニューウェイブ(70後半から80年代にかけて流行)の一角(厳密にはポスト・パンク)であったU2。正直この辺のロックは疎いけど、同じジャンルのバンドではソニック・ユースザ・スミスニュー・オーダーなんかは聞いたことがある。後に続くストーン・ローゼズ、あるいはオアシスといったバンドの音に似たところがある。

 ただ、それはデビュー後数年まで。U2はジャンルにとらわれないより大きな存在へと変化していく。そんなU2が、キャリアの初期に発表した名作が『ヨシュア・ツリー』。これは歴代のロックアルバムの中でも上位にくるほどの名作。このアルバムはまた、名プロデューサー「ブライアン・イーノ」が手がけていることでも有名。この作品では、ギタリストのジ・エッジが奏でる、U2の代名詞とも言える独特のギターの音色が楽しめる。曲のクオリティも非常に素晴らしく、ロックとは思えないほどの美しい音、広がりのある音、幻想的な音が楽しめる。ロック好きでなくとも唸る作品。商業的にも大成功、世界で2000万枚を超えるセールスを記録。

 『アクトン・ベイビー』(91)


アクトン・ベイビー

【音楽性の大幅な転換】

 歴史に残る名作を世に出したU2は、次作で新しい音楽にチャレンジする。そこで生まれた作品が『アクトン・ベイビー』。これまた歴史に残るような名作となる。しかし、その音楽性は前作と全く異なる。コンピューターを使用した、いわゆる打ち込みの音がフィーチャーされており、ジャンルとしてはダンスミュージックの要素が入ってくる。このアルバムはU2の音楽性を大きく広めることとなる。

 U2は現在もバリバリ現役のバンド。今は確か、わりかしオーソドックスなロックをやっていたはず。それまでのアルバムで広げた音楽性を凝縮したような作品が多く、21世紀に入ってからのU2も非常におすすめ。

ストーン・ローゼズ(83~)-90年代の英ロックの方向性を決めた伝説のバンド

ストーン・ローゼズ』(89)-UKロックの歴史に残る傑作!!


ストーン・ローゼズ

【曖昧でぼんやりしていて、そして素晴らしい。90年代のUKロック】

 ローゼズは10年位前に一度聞いていまいちピンとこなくて、最近聞いたら「おおっ!!!!!」ってなった(笑)。自分がよく聞くのは、90年以降のイギリスのロック。その時代の多くのミュージシャンが、ストーン・ローゼズに影響を受けていたと知る。確かに、オアシスやプライマル・スクリーム、レディオヘッドあたりの音は、ローゼスのファーストアルバムの雰囲気を醸し出している……。

 「隙間なく詰め込んだ音」「空間をイメージさせる包み込むような音」「間延びしたようなボーカル」
 90年代のイギリスのロックはそんな表現がピッタリだと思う。プラス、そこから派生したのか何なのか知らないけど、ダンス、エレクトロニカなんかのジャンルでも、優れたアーティストが登場する。リアルタイムで過ごした時代の音楽なので、かなり主観が入っていると思うけど、この時代のロックはすごく優秀だと思う。絶対的なスターはいないし、ジャンルがどんどん多くなっきて輪郭は曖昧だけど、平均レベルが高い。優秀なアーティストはたくさんいたけど、皆違う方向を向いていた、といったところ。

 さて、『ストーン・ローゼズ』の中身はと言うと、ここまで散々説明してきた音に加えて、綺麗なメロディ、エフェクト多様の独特な音色を奏でるジョン・スクワイアのギター、イアン・ブラウンのヘタウマなボーカルなんかが特徴。リズム隊の力量も素晴らしく、メンバーの個性が際立つ魅力的なバンド。もう一つ、民族音楽のような雰囲気(ちょうどサイモン&ガーファンクルのような……)、あるいはオリエンタルな雰囲気を醸し出している。イギリスでは史上最高のアルバムと言われるほどの評価だけど、それも納得。メンバーの個性も、楽曲も、アルバムの構成も、どれをとっても隙がない。

セカンド・カミング』(94)


セカンド・カミング

【不評のセカンド・アルバム】

 5年も待たせてようやく登場したセカンド・アルバム。曲調は大きく変わっていて、個々の曲も非常に長い。ファースト・アルバムを期待して聞くと肩透かしにあう。ただ、楽曲のクオリティは高く、メンバーの演奏力も相変わらず素晴らしい。ジョン・スクワイア主導で制作されたこともあって、ギターを強調した楽曲が中心。レッド・ツェッペリンのような、ブルースとファンクを取り入れたロック。それでも、ローゼズらしさはしっかり残ってる。いようのないグルーブ感などはセカンドの方が優れているかもしれない。その辺を考慮すれば、間違っても駄作とはならない。

⇒【2】「その頃アメリカでは……?-80年代メタルの終焉と、グランジブーム」