洋楽ロックの歴史と名盤(1) – 60年代

2017年11月4日

続々と発表される名作サイケアルバム

 ビートルズの歴史的名盤『サージェント・ペパーズ』が発表されたのは、1967年の6月。この年はサイケデリックムーブメントの最盛期と言われていて、名だたるアーティストの名作が次々と世に出された。音楽性の全く違うストーンズなんかも、ブームに乗っかってアルバムを発表したほど。当時はビートルズとライバル関係にあったことも、大きく影響している。そんなこんなで、いかにムーブメントが大きなものだったかがよくわかる。

ドアーズ』(‘67,1月) – ドアーズ(’65~’72)


ドアーズ

  ドアーズはロックに芸術性を付与したバンドの一つとして有名。現役時代も人気があったけど、ボーカルのジム・モリソンが死んで神格化されたため、今の方が昔より評価されている気もする。

 それはそうと、ドアーズはブルースやジャズ・ロックの要素をもつ。そこにサイケも混ざっているという感じ。特にこのアルバムがサイケデリックと呼ばれるのは、アルバム収録曲で彼らの代表曲「light my fire」の存在が大きい。聞いてもらうのが一番だけど、冒頭に独特の音色のオルガンソロがあって、この辺が実にサイケっぽい。他にもアルバム収録曲には、当時のロック界の雰囲気をつかんだサイケデリックな曲がある。サイケアルバムということを抜きにしても、非常に評価の高いアルバム。

 ドアーズはやっぱりジム・モリソンの存在が大きい。独特の感情を吐き出すような男らしい声で、過激なステージパフォーマンスも合わせて、カリスマ性がすごかった。若くして死んだ(いわくつきの「27歳」で死んだ一人)ところも、言ってみりゃカリスマ。まあとにかく、このファーストアルバムを聞けばいい。

『Surrealistic Pillow』(67′,2月) – ジェファーソン・エアプレイン(’65~’73)


Surrealistic Pillow

 こちらはフォーク・ロックのジャンルで活躍していたバンド。サイケデリックムーブメントを代表するバンドの一つ。フォーク・ロックのバンドだけあって、サウンドは心地いい。曲調も明るいものが多いので聞きやすい。ただ、アルバムはモロにサイケ。幻覚症状を歌った名曲「white rabbit」も収録。

 その他の特徴としては、ボーカルが女性(グレイス・スリック)という点。女性ボーカリストの草分け的な人物で、日本の女性アーティストへの影響力も大きい。記憶が曖昧で申し訳ないけど、以前に松任谷由実が彼女に憧れていると語っていたことがあったはず。

 個人的にこのバンドを知ったのは、ストーンズのライブビデオにて。あの有名なオルタモント・フェスに出演していたバンド。名前知らないけど「このバンドいいなあ」って思った。ちなみに、そのコンサートはサイケデリックムーブメントの終焉を告げる有名なフェス。

夜明けの口笛吹き』(67′,8月) – ピンク・フロイド(’65~)


夜明けの口笛吹き

 プログレバンドとして、そして、ロック史に残るバンドとして有名なピンク・フロイド。そのデビュー・アルバムもサイケ。デビュー前からバンドを引っ張ってきたシド・バレットという人物がいて、彼のセンスが最大限に発揮されたアルバムがこれ。

 シド・バレットは当時すでに薬物中毒になっていて、まさに「リアルな」サイケデリックアルバム。ジャケットもそうだけど、アルバムは冒頭からかなりイッちゃってる。ただ、それ以上にセンスと凝ったサウンドが凄まじい。このアルバムを発表して間もなく、シド・バレットは本格的にヤバくなって、バンドを脱退。

 もう少しこの話をしよう。初期のバンドを引っ張ってきたリーダー的存在であるシド・バレット。というか、彼のおかげでバンドはデビュー出来たと言っていいほど。そんな優秀なリーダーがプレッシャーとドラッグで潰れていったのを見て、他のメンバーは大きなショックを受ける。その経験が、後のピンク・フロイドの内相的な世界観を生み出したと言われている。ピンク・フロイドは70年代に歴史的な名盤を生み出し、商業的にも芸術性でも、世界の頂点に立つ。シド・バレットとこのファーストアルバムがなければ、『狂気』も『ザ・ウォール』もなかった。

 ギリギリのところで生まれたサウンド。ただ、デビューアルバムとあって輪郭が曖昧、サウンドも凝り過ぎで冗長なところがあるので、いきなりこのアルバムを聞くのはおすすめできない。ただ、ピンク・フロイドが好きになったら一度聞いてみると面白い。中身よりもその存在自体が重要なアルバムだと思う。

サタニック・マジェスティーズ』(‘67.11月) – ローリング・ストーンズ


サタニック・マジェスティーズ

 ストーンズも流行に乗ってサイケアルバムを制作。ライバルのビートルズが出したんだから、自分たちも出さないわけにはいかないという感じ。この時は流行に乗りきれなかったものの、ストーンズはその後も時代ごとの音楽を消化して楽曲制作に生かしているので、その一端と見てもいいかもしれない。

 ジャケットを見てもわかるように、ビートルズの『サージェント・ペパーズ』を意識しまくり。アルバムの展開も似ている。ただ一つ違うのは、その質。ストーンズファンやサイケファンからするととても面白いし、評価する声も多いけど、はっきり言って駄作。曲ごとにまとまりがないし、サイケデリックの色付けも陳腐。急造した感は否めない(個人的には嫌いじゃないけど)。

 ただ、このアルバムはストーンズの歴史におけるターニングポイントになっている。サイケは合わなかったし、無闇に流行やビートルズを追いかけるのは意味が無い。当時ストーンズはメンバーの多くがドラッグ中毒になっており、初代リーダーのブライアン・ジョーンズとの他のメンバーの関係性も良くなかった。それらの問題を次のアルバムまでに解消し、ストーンズは自分たちのサウンドを確立する。そういう意味で、このアルバムは重要なターニングポイントになっている。

『フォーエバー・チェンジズ』(‘67,12月) – ラブ(’65~’71)


Forever Changes

 このバンドは、ここまで紹介してきたバンドと比べるとややマイナーかもしれない。それでも、ロック界及びサイケの歴史の中では有名。というか、このアルバムが有名。自分もこのアルバムしか聞いたことがない。曲調はアコースティック中心で、ジャズ・ロックの雰囲気も感じられる。 アコースティックギターをはじめとして、ストリングスの音も目立つ。とてもお上品なアルバム。

 ビーチ・ボーイズのペット・サウンズに雰囲気が似ているかもしれない。あれほど感傷的・内省的ではなく、よりスマートで洗練されている。静かで激しさを押し殺したようなこのアルバム。ずっと聞いていると、誰もいない寂しい世界に行ってしまいそうになるのが、ペット・サウンズっぽい。

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