洋楽ロックの歴史と名盤(1) – 60年代

2017年11月4日

ローリング・ストーンズ(62~)
– ストーンズの歴史はロックの歴史

【アイドルのビートルズと不良のストーンズ】

 ビートルズとセットで語られるこ との多いストーンズ。ビートルズが「アイドル」として売りだされていたのに対し、ストーンズは「不良」。音楽性も、ビートルズはオーソドックスなロック。 綺麗なメロディとコーラス。一方、ストーンズは黒人音楽のカバーから始まった。ブルース、フォーク、カントリーなどのルーツ・ミュージックにより近い形のロッ ク。

【不死身のバンド】

 この2つのバンドは、その後も比較対象であり続け たし、ある意味対局的な歴史を歩むことになる。例えばビートルズはわずか10年で解散。一方のストーンズは一度も解散せず、今も現役。しかも、ただの現役 じゃない。40、50、60のおっさんになっても、出すアルバムが注目を集める。ロックが誕生してすぐに活躍し、ロックの成長、厳密に言えばポピュラー ミュージックの成長とともに歩んできたバンド。その歴史を追えば、自然とロックの歴史もわかる。「ストーンズの歴史≒ロックの歴史」。

 他にも違いはたくさんある。ストーンズはその後、ライブバンドとしての地位を確率する。現代まで通じるオーソドックスなバンドがこれ。一方、ビートルズはスタジオでいい作品をつくって世に送り出す、レコーディングアーティストの道を歩む。

ストーンズと言えばブルース!

アフターマス』(’66)


アフターマス

 初期のストーンズの名作と言ったらこれ。ビートルズのリボルバーと同年発表の作品。これまでのアルバムはカヴァー中心で、そのうち何曲かがオリジナルという構成だった。しかし、ここからは全曲オリジナル。中心人物であるミック・ジャガーキース・リチャーズの作曲者としての才能が大きく伸びた時期の作品。

 内容はブルース色の強い曲が中心。ブルースの雰囲気に加えて、ノリの良さとわかりやすさを兼ね備えたロックって感じ。そんなにハードでもなく、どっちかというと落ち着いた曲が多い。ビートルズのアルバムと聞き比べれば、音楽性が全く違うことがよくわかる。ルーツ・ミュージックに近いから、初めて聞く人は古臭く感じるかもしれない。

 それはそうと、このアルバムの完成度はめっちゃ高い。聞けば聞くほどハマる。スルメみたいなアルバム。他にいうことがあるとすれば、この頃のバンドはギター、ベース、ドラム、あとはキーボードっていう、基本的な楽器の音だけでほとんど曲をつくってたことがよくわかる。ストーンズは特に、無駄な音が少ないバンド。「シンプルな音でこれだけのことができるんだ! すげえ!」ってなる。マジでセンスが違う。個人的にストーンズが大好きなので、ちょっと褒めすぎた(笑)。あと、グルーブ感がヤバい。ストーンズといえば個人的には「グルーブ」のバンドだけど、この初期のアルバムの時点でかなりキテる。必聴。初心者におすすめしたいアルバムの一つ。

ルーツ・ミュージックへの回帰。そして、ロックの王様へ

ベガーズ・バンケット』(’68)


ベガーズ・バンケット

 ストーンズのNo1アルバムの一つに挙げられるのがこれ。今風に邦訳すると『ホームレスの宴会』。ジャケットからして小汚いアルバム(笑)。1968年発表ということで、ビートルズは解散2年前。それまでにストーンズは何をしていたかというと、もちろん作品は発表していたし、売れてもいたけど、途中でサイケデリックの波に飲まれて、クソみたいなアルバムを発表(と言いつつよく聞くし、一定の評価もされている)して、一時は解散の危機まで噂されたほど。ビートルズの『サージェント・ペパーズ~』に始まったサイケデリックムーブメントに乗り遅れまいと、ストーンズも真似をしてみたものの、いまいち上手く行かず。アルバム2枚分くらいの期間をイマイチな感じで過ごしていた。その流れを断ち切ったのが、この作品。

1960年代後半のストーンズはルーツであった黒人音楽から離れ、サイケデリック・ムーブメントに完全に浸かり、当時のストーンズ・ファンクラブではバンドの将来についてディスカッション大会まで開かれるほど、ファンの間では不安が広がっていた。その不安を吹き飛ばすかのように、1968年5月にリリースしたシングル「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」は全英1位の大ヒット。そしてそれに続く本作は、ロックバンドとして原点に立ち返ったストーンズの姿を誇示したものとなった。

引用元:ベガーズ・バンケット – Wikipedia

 気になる中身はと言うと、新しい時代を感じさせるような曲(#1 悪魔を憐れむ歌、#6 ストリート・ファイティング・マン)に加えて、フォーク(#2 ノー・エクスペクテーションズ)、カントリー(#3 ディア・ドクター、#9 ファクトリー・ガール)、ブルース(#4 パラシュート・ウーマン、#8 ストレイ・キャット・ブルース)などを合わせた感じ。自分は音楽の専門的知識は無いけど、これらの曲の分類は何となくできる。それくらい、個々の曲調が際立っていてわかりやすい。ルーツ・ミュージック入門にちょうどいいかもしれない。

 ストーンズのロックの部分とルーツミュージックの部分が程よく合わさっている名作。

ストーンズとロックの歴史が大きく動き始める

スティッキー・フィンガーズ』(’71)


スティッキー・フィンガーズ

【「ストーンズの音」の確立】

 このアルバムはストーンズにとって新たな時代を告げる作品となっている。というのも、このアルバムの発表前にいろいろな出来事が起こったから。

 まずは結成時からのメンバーで、天才的な演奏センスをもったブライアン・ジョーンズの脱退と死。その代わりに加入した腕利きのギタリストミック・テイラー。ストーンズの音楽性が大きく変わる象徴とも言えるメンバーチェンジ。ブルースを基調としながらも、シンプルなギターサウンドを軸としたロック。ロックという括りを超えた「ストーンズの音」が確立されたとも言えるし、ストーンズがその後のロックのスタンダードをここで確立したとも言える。この後現在にいたるまで、「ロック≒ストーンズ」と言われるようになる。

【70年代の新しいロックの幕開け】

 もう一つ、ロックの歴史上の大きな事件が起こる。上記のコンサートにて、トラブルに酔って観客が死亡する事件が起こる。このコンサートはフリーコンサートであり、当時はヒッピー全盛の時代。「ラブ・アンド・ピース」を叫んで、男女が裸で踊り、ドラッグをキメるというのがヒッピー。ついでに、反戦運動もする。そんなお花畑な雰囲気をぶち壊したのがこの事件。「現実見ろよ」って言われて、みんなドラックの幻覚症状から醒めていったのがこの頃。サイケデリック・ロックのブームも終わりを告げ、70年代の新しいロックへと変化していく。そんなロックの歴史を動かす象徴的な出来事に、ストーンズが絡んでいるという話。

【ストーンズの最高傑作】

 ストーンズ個人の話に戻すと、個人レーベルを設立した1作目がこの作品。肝心の中身はというと、音質面で大きな変化がある。ギターの音が大きくなって、全体的にメリハリのあるハードな曲調に変化。ハード・ロックまではいかないまでも、その要素もかいま見える。格好良いギターリフなんかも盛りだくさん。一方で音楽性の深さも増している。ストーンズのベストの一つであり、70年代の名盤の一つでもある。必聴の一枚!

流行の波も軽々と乗りこなす

 ローリングストーンズはとにかく「全盛期」が長いバンド。2010年代に入ってからはさすがに衰えが見え始めてきたけど(メンバーの年齢はすでに70歳前後!!)、今もなお全盛期という人もいそう。

 ただ、それはさすがに言い過ぎ。でも、長いことは確か。60年代半ばから70年代は間違いなく全盛期。それ以外にも、90年代に入ってグラミー賞を受賞したり、2000年代にアルバムが世界的にヒットしたり、長く見ようと思えばいくらでもできる。

【パンクを諭してディスコの波に乗る】

 それはさておき、70年代の終わりごろ、世界のポピュラー・ミュージック界には、いくつかの新しいブームがやってくる。一つはパンク。もう一つはディスコ。パンクならセックス・ピストルズクラッシュ、ディスコではビージーズなんかが有名。広義では80年代に活躍するおなじみマイケル・ジャクソンなんかもそう。さて、いつの時代もそうだけど、新しい流行がくると古いものは叩かれる。その格好の餌食になったのが、ストーンズをはじめとする、いわゆるオーソドックスなロックで成功し、富を築き上げた者たち。

 わかりやすいのは、ロックがもともと持っていたカウンターカルチャーの部分を強調した、パンクミュージック。彼らはストーンズや他のバンドの名を出して「金目当ての古臭いバンド」「くたばれ」なんて感じで批判した。その批判への答えとして、ストーンズは新たなアルバムを発表。

サム・ガールズ』(’78)


サム・ガールズ

 攻撃的で批判的なパンクミュージシャンを「そう熱くなるなよ」と諭しつつ、ディスコの雰囲気を上手く取り入れた曲をヒットさせる。そしてできたのがこのアルバム。全体の雰囲気はリラックスしていて、ところどころ洗練されたイメージ。それでいて、いつものストーンズのノリは健在。大ヒットを記録し、余裕のストーンズ。パンクブームは数年で終わり、ストーンズは変わらずマイペースで活動し続ける。このあたりが、ストーンズの歴史の中でも面白いところ。

 このアルバムのためのセッションのデッドストックは、後のアルバムに収録されることになる。その一つが次作。

エモーショナル・レスキュー』(’80)


エモーショナル・レスキュー

 この作品は、前作よりさらにディスコ、というよりダンスミュージックのテイストが強い。素人なんで正確な表現かどうかわかんないけど、低音が生かされた音づくりで、ドラムとかベースのリズム隊もダンスミュージック独特のノリをつくってる。そう、ノリ。このアルバムはとにかくノリがいい。

 ちなみに、あのジョン・レノンも絶賛したアルバム。「もう40近いのにこんな名作つくるなんて、ミック・ジャガーすげえな」って褒めた。いやホントに、実際に聞いてみればわかる。ベテランの域に入ってこんな作品つくるなんて、ストーンズすげえなあ、ってなる(笑)。名曲揃い。全体の流れが最高。

⇒【4】「ザ・フー(64~82) – プログレ、ハード・ロック、パンクの先駆け!?」