『日本人のための「集団的自衛権」入門』のレビュー・感想

2014年7月24日

集団的自衛権の定義や歴史から、巷の意見への回答まで。「集団的自衛権」を一から考えるための必読書!

日本人のための「集団的自衛権」入門 (新潮新書 558)

もくじ

『日本人のための「集団的自衛権」入門』のもくじ

 

目次

第一章 「集団的自衛権」入門編

1 戦争は禁止されている
2 第五一条はどう解釈されてきたのか
3 ベトナム戦争は「自衛戦争」か
4 日本は「自衛権」をどう考えてきたか
5 「行使はできない」の根拠を疑う
6 日本政府の解釈は妥当だったのか
7 「行使可能」でどうなるか

第2章 「集団的自衛権」対話編

1 地球の裏側で戦争するつもりでは?
2 ソフトパワーの時代ではないか?
3 卑怯で何が悪いのか?
4 アメリカは本当に望んでいるのか?
5 想定されている事態は非現実的では?
6 個別的自衛権で何とかなるのでは?
7 まずお前が隊員になれ
8 自衛官は嫌がっているのでは?
9 アメリカの巻き添えになるだけでは?
10 テロリスト掃討もやるつもりですか?
11 憲法九条のおかげで平和なのでは?
12 アメリカとの関係は対等になるのか?
13 中国・韓国を刺激しないか?
14 一体、どんな危機があるというのか?
15 徴兵制への布石では?
16 結局、イケイケドンドンになるのでは?

引用元:『日本人のための「集団的自衛権」入門 (新潮新書) 』-もくじ より

 ※2章の見出しは、巷であがっている意見を並べたものです。見出しになっている意見に対して、石破氏が回答を示すという内容になっています。

 

『日本人のための「集団的自衛権」入門』のおすすめポイント

【一章:集団的自衛権の定義と歴史】

 一章では集団的自衛権の定義、これまでの歴史でどのように扱われてきたかを説明しています。「集団的自衛権」が国連憲章に明記されるまでの流れ、それ以前の国際社会での扱い。ベトナム戦争を始めとして、これまでの歴史の中で、集団的自衛権がどのように行使され、解釈されてきたか。こういったところを丁寧に説明しています。

 著者は自民党の議員ということで、それだけで「内容に偏りがあるのでは?」と思う人もいるでしょう。しかし、実際に読んでみると中立的な立場から説明しようという姿勢が感じられます。むしろ、知名度の高い自民党の議員ということで、その辺にはかなり気を使って書いているように感じます。

 

 

 【二章:巷の意見と石破氏の考え】

 見どころは二章です。巷には賛成派も反対派もいて、政治家から評論家、一般人に至るまで、様々な意見が飛び交っています。しかし、それらの意見をどう捉えればいいか、自分は賛成なのか反対なのか、よくわからないという人も多いでしょう。そこで、よく耳にする意見を石破氏が取り上げ、それに説明と回答を示しています

  上述の目次を見ればわかると思いますが、見出しに取り上げているのは基本的に「反対派の意見」です。これは、著者が自民党の議員ということも関係している でしょうし、巷では反対派の意見が目立っていることもあるでしょう。すべてとは言いませんが、反対派の意見には少々偏ったものが多いです。特に、感情論や 先入観だけで意見を言っている人には、その傾向が強いかと思います。そこで、まずは反対派の意見の偏り、その背景にある誤解を解きほぐすところから始めます。そして、一度議論をフラットな状態にした上で、石破氏自身の主張をしていきます。しっかりと主張はしているものの、説明が丁寧であり、自民党の議員だからと言って、強引に「賛成」に持っていくような無理な主張はしていないです。

 

本書の要点抜粋

 【国連憲章における集団的自衛権】
  • 「国連憲章」第二条第四項により、戦争は基本的に禁止されている

第二条
4 すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。

引用元:国連憲章 – 第一章 – 第二条

  • 上の条項を破った国が現れた場合には、第四三条「集団安全保障」によって安全保障理事会が対策を講じる
    参照:国連憲章 – 第七章
  • 安全保障理事会の決議の承認までは時間がかかり、否決の可能性もある。そこで登場するのが「集団的自衛権」

第五一条[自衛権]
この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、 個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国が措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。ま た、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持又は回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いか なる影響も及ぼすものではない。

引用元:国連憲章 – 第七章

 

 集団的自衛権は特殊な概念ではなく、むしろ国際的なルール、国が持っていて当然の権利ということです。また、国連憲章以前にも、自然権として存在していたとも考えられています。そして、その解釈や内容は今後も議論を重ねて変化していくものです。

 

 

【二章から(石破氏の意見)】
  •  11 憲法九条のおかげで平和なのでは?

 ⇒日本の平和を守っていたのは、日米安全保障条約、強大な軍事力を持つアメリカとの同盟関係、自衛隊の存在があったからと考えるのが自然。

 

  • 12 アメリカとの関係は対等になるのか?
    集団的自衛権の行使によって、日米安保条約と米軍基地はどう変わるか?

 ⇒日米安保は米軍基地の設置を義務付けている。これは一方的な安保条約であり、日米が対等な関係に立った、新たな条約の必要性が叫ばれてきた。しかし、集団的自衛権の行使を認めないことが、その足かせになっていた(緊急時に「相互に防衛」することを拒否しているのに、対等な関係に立った条約は結べないだろう、ということ)。

 集団的自衛権行使の容認が、新たな条約締結のための絶対条件ではないが、前提条件の一つであることは明白。集団的自衛権行使を否定しつつ、基地の撤去を求めるのでは話が通らない。

 

感想

  全体として、説明の丁寧さ、理路整然とした文章が目立ちます。また、フラットなところから中立的に議論をしようという意図が読み取れます。これらの点が、この本の優れているところです。
 タイトルに「入門」とあるように、広く一般の人々に向けて書かれた本であり、難しい言葉や文章は少なく、中高生でも十分理解できる内容です。議論をする上で最低限知っておくべき知識が身につきます。賛成派の人は自分の意見を固める意味で、反対派の人は賛成意見の裏にどのような理屈があるのかを知るために、是非とも読んでおくべき本だと思います。

 

【関連記事】

[article mode=”cat” id=”52″ numberposts=”5″ tail=”
“]