本当に「優れた」企業の見つけ方

公開日: : 経済・株

「株価」に含まれる膨大な情報

投資家が「お金」よりも大切にしていること

株価はただの数字じゃない

 『投資家が「お金」よりも大切にしていること』の中で、著者が好きな会社の話をしていた。日米の一流証券会社で勤め、自ら投資会社を経営するだけあって、その話には説得力がある。

 私たちはふだん、会社の価値を株価で計ってしまいがちですが、株価は単なる数字ではありません。その中身を覗いてみれば、笑顔と汗と涙、そしてサボりや妬みもぜんぶ含まれています。それらが時価総額として表れているんですね。
 加えて、会社の資産や収益、将来の期待感、業界の動向、日本の将来、世界情勢、金利状況などといったさまざまなものも影響を与えています。
 会社の価値とは、そういったものがぜんぶ集まって、ぐちゃぐちゃになったものだとイメージすれば、会社をひとつの”生態系”として捉えることができます。

引用元:『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(2013)藤野英人,講談社,第15刷,pp149-150

 私達が知っている多くの会社は「株式会社」であり、当然ながら株を発行している。個々の企業が株価によって評価を受けている。その株価は日々、秒刻み分刻みで変化している。為替、景気、ニュース、政治、様々な情報によって株価は敏感に変化する。最近ではアメリカの次期大統領が決まったことで日本の株価は数日の間に乱高下。円安によって特定の業界株が大きく上昇。アベノミクスでここ数ヶ月の株価は好調。イギリスのEU脱退で株価は減退。ある企業の不祥事で株価が急落。ある企業が新技術を発表して株価は上昇。人気ゲームが発売されて株価が上昇。今年を振り返ってみるだけで、日常レベルから世界レベルまで、様々な情報によって株価は変化してきた。

 株価はただの数字で、株をやったことのない人にとってはよくわからないものだけど、上の引用文を読めば実に様々な情報が詰め込まれているのだと考えさせられる。株は単なる数字で、数字を追いかけて取引して、働かずして収益を上げる……株取引はそんなマイナスイメージがあるけど、そんなに単純なものじゃない。本当に収益をあげようとすれば、実に様々な情報にアンテナを張る必要があるし、「不労所得」なんて表現は不適切だろう。逆に、株を知ろうとすれば社会の様々なことを知ることができる。

 さて、そんな株について。実際に会社の良し悪しを判断する方法は何か? 

 私は正直に言って、日本にはすごく不真面目な会社が多いと思っています。
 それは、たとえば会社の株主総会を覗いてみると、端的にわかります。
 本来、株主総会で話し合わなければいけないのは、「会社はどうあるべきか」「お客さんとどう向き合うべきか」「従業員とどういう関係を築くべきか」ということです。
(中略)
 それなのに、実際の株主総会では、年間の経常利益や来年度の事業計画の話などに終止して、本質的なことについては何も触れなかったり、触れたとしてもきわめて形式的で、理念など形骸化している会社がほとんどです。
(中略)
 株主総会やメディアのインタビューなどで経営者が発言するのを見聞きして、最近、私が強く感じているのは、真剣さや誠実さから来る「僕らはどうあるべきか」というメッセージが聞かれなくなってきた、ということです。

引用元:『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(2013)藤野英人,講談社,第15刷,pp152-153

 良い会社を見つけるには、数字やデータなどの無機的な部分を重要視しがちだけど、実は経営者の理念や理想といった抽象的な部分が大きいという話。

 

 

サラリーマン企業

 数字やデータばかり気にして、本質的な部分をないがしろにしてしまう傾向。それは、一般人に投資を教える立場にある投資ファンドにもあるそうだ。

 ……投資家の大半も、会社の規模やブランドにひきずられてしまっています。
 なぜかといえば、ほとんどの投資信託(ファンド)が「トピックス型」だからです。
 トピックス型とは、東証株価指数(TOPIX=東京証券取引所第一部上場株式銘柄を対象として、同取引所が1秒毎に算出・公表している株価の指数)をもとにつくられる金融商品のことで、要は有名な大企業の株だけで構成されています。
 では、どうして本来は良い会社をしっかり選ぶことが求められているはずのファンドが、トピックス型ばかりになるのでしょうか?
 それは、運用会社がサラリーマン企業だからです。
(中略)
 東証株価指数と同じ動きであれば、もしお金が減ったとしても、東証株価指数も落ちているから、と言い訳ができます。責任を回避できるし、クビになることもありません。

引用元:『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(2013)藤野英人,講談社,第15刷,pp168-169

 こういう日本的なサラリーマンの考え方は、ある意味じゃ正しい部分もあるかもしれない。特に日本は、経済の安定性は世界でもおそらく一番。経済全体が上向きならば、じわじわと上がっていく。逆の場合では底堅い。よっぽどのことがないと、株価が暴落することはない。そういう国なら、安定性のある投資をするのも一つの手だろう。

 ただ、これまではそれで通用しても、今の時代は違う。何もしないでいれば景気は下がっていくし、経済も低迷する。多少のリスクを取ってでも、新しいことのチャレンジしていかないと成長どころか現状維持もできない時代。企業への評価も、そういう視点を取り入れなければならない。

 例えばIT系企業ならば「いかに先行投資をするか」に会社の将来がかかっていると聞く。IT系の分野は変化が激しく、常に新しい要素を取り入れていかないと他の会社に置いていかれる。そんな中にあって、日本のIT系企業はやはり、新たな投資が不足している。ソフトバンクなんかはその中にあって例外的だけど、日本の中じゃ異端児扱いされてしまう。「そんなに先行投資しまくって、お金は大丈夫なの」と心配されてしまう。

未来を語る企業

 本の中で、20世紀末に著者が参加した、アメリカのIT・エレクトロニクス系の展示会の話がある。まだまだ「IT」が認知されていなかった時代、錚々たる企業が参加していた。その中でのビル・ゲイツの話が面白い。

 ゲイツは、未来の話しかしなかったんですね。
 10年後の社会はこうなっている、たとえば自動車はIT化・インテリジェンス化が進み、どんな人でも安全で快適に目的地まで、場合よっては寝ながらでも着けるようになる。マイクロソフトはそういう豊かな社会の実現のために存在しているんだ、と。
 ◯◯という未来を実現したいから、われわれは存在している――こういった「ミッション・オリエンテッド(使命志向)」な考え方……(中略)……
 ミッション・オリエンテッドとは、ミッションやビジョンの実現を最重要課題とすることです。会社の商品やサービスでも、そのミッションやビジョンの実現のために存在するし、提供する意義があると考えます。
 プロダクトがいかに優れているかではなく、いかにその「価値観」をも共有し、「あるべき未来」を実現していくか。そこが重要なんですね。

引用元:『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(2013)藤野英人,講談社,第15刷,pp174-175

 日本の企業は売上や利益など過去を振り返り、現在の商品を勧める。それも重要だけど、そこに固執してしまって、その先を語る余裕がなくなってしまっている。逆に、未来を見ることを先行させ、そこから逆算して現在何をすべきか考え、データとして過去を振り返ってみる。こうするだけでも、企業の在り方は大きく変わっていくと感じる。

 さらに、「商品を勧めるのではなく、価値観を共有する」という部分は目を開かされる。そういう視点でものづくりをして成功している企業はなかなかない。しようと思ってもなかなかできない。

 ちなみに、この時点(99年)のゲイツの予想は若干ずれこんでいる。2010年には自動運転の実用化がかなり進んでいると予想しているが、2016年現在でようやく日本でも、自動運転技術を一部取り入れた自動車が販売されている。これはつまり、ゲイツは実際よりも「進歩の早い」未来をイメージしたことでもある。しかも、極端に早すぎないあたりが良い。

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