性格か障害か?『パーソナリティ障害』(岡田尊司)は興味深い内容

2017年11月8日

人間心理を知る上で必読の本!

パーソナリティ障害―いかに接し、どう克服するか (PHP新書)

もくじ

『パーソナリティ障害』のもくじ

第Ⅰ部 パーソナリティ障害の本質

  • 第一章 パーソナリティ障害とは何か
  • 第二章 パーソナリティ障害はなぜ生まれるのか

第Ⅱ部 パーソナリティ障害のタイプと対処

  • 第三章 愛を貪る人々 境界性パーソナリティ障害
  • 第四章 賞賛だけがほしい人々 自己愛性パーソナリティ障害
  • 第五章 主人公を演じる人々 演技性パーソナリティ障害
  • 第六章 悪を生き甲斐にする人々 反社会性パーソナリティ障害
  • 第七章 信じられない人々 妄想性パーソナリティ障害
  • 第八章 頭の中で生きている人々 失調型パーソナリティ障害
  • 第九章 親密な関係を求めない人々 シゾイドパーソナリティ障害
  • 第十章 傷つきを恐れる人々 回避性パーソナリティ障害
  • 第十一章 一人では生きていけない人々 依存性パーソナリティ障害
  • 第十二章 義務感の強すぎる人々 強迫性パーソナリティ障害

参考:『パーソナリティ障害―いかに接し、どう克服するか (PHP新書)

 

 章の構成を見ると、個々のパーソナリティ障害ごとに、「特徴と背景」「接し方のコツ」「克服のポイント」が説明されています。パーソナリティ障害は本人や周囲が困ることが多く、関係する人にとっても役立つ内容となっています。

 また、パーソナリティ障害は、人間がもともと持っている性格や個性が極端になったものです。個々の症状や背景を見ていくと、少なからず自分や周囲の人間に当てはまる部分が見えてきます。

 人間の心の働きについていろいろなことがわかりますし、著者の文章や説明もとても上手なので、おすすめできる本です

 

 

パーソナリティ障害の特徴

パーソナリティ障害とは何か?

参考:『パーソナリティ障害―いかに接し、どう克服するか (PHP新書)』 第一章

【パーソナリティ障害とは】

  • 偏った考え方や行動パターンのため、家庭生活や社会生活に支障をきたした状態
  • ある程度までは「個性」や「性格」として片付けられる。しかし、度を過ぎると問題が出て来る。
  • パーソナリティ障害はバランスの問題
    個性・性格と障害との線引は、本人あるいは周囲が、偏った考え方や行動によってかなり困っているかどうか。

 

【共通する特徴】

  • 自分に強いこだわりをもっている
  • とても傷つきやすい
  • 対等で信頼し合った人間関係を築くことの障害

 

 

 パーソナリティ障害は、かつて人格障害と呼ばれていたもので、感受性や感情に極端なものが見られ、対人関係などに支障をきたした状態です。その特徴は、実例を見るとわかりやすいです。

 例えば、境界性パーソナリティ障害の症状や特徴を見ていくと、

  • 現実または妄想で、人に見捨てられることを強く恐れ、不安を抱いている。
  • 対人関係の変動が激しく、コミュニケーションが安定しない。
  • 気分や感情がめまぐるしく変わり、周囲の人々がついてこられない。
  • 感情のブレーキが効かず、ちょっとしたことで癇癪(かんしゃく)を起こしたり、
    激しく怒り、傷つきやすい。
  • 自殺のそぶりや自傷行為を繰り返し、周囲に動揺を与える。
  • 自己を損なう行為(薬物・アルコール・セックス・万引き・過食・買い物など)に
    依存しやすくなる。
  • いつも空虚な気持ちを抱き、幸せを感じにくい。
  • 生きることに対して辛さや違和感を持ち、自分が何者であるかわからない感覚を抱いている。
  • 強いストレスがかかったとき、一時的に記憶がなくなり、精神病状態に似た症状を
    起こしやすい。

引用元:境界性人格障害|大阪市中央区日本橋・難波(なんば)いちメンタルクリニック

 

 ネット上にはいろいろな情報源がありますが、メンタルクリニックのページであり、尚且つ内容がわかりやすかったので、こちらを引用しました。特に女性に多いと言われているのが境界性パーソナリティ障害です。

 

 

【自己愛との関係】

  • (自己愛とは)自分を大切にできる能力
  • 自己愛が適切に育っていないと、自分を大切にすることができない
  • 強い自己否定感は、境界性パーソナリティ障害の特徴
  • 弱さや傷つきやすさを補おうと、自己愛が過剰に肥大している場合は、自己愛性パーソナリティ障害

 

 自己愛については、パーソナリティ障害の原因と関係があります。自己愛が育つのは幼い頃であり、親との関係によって育まれるものです。遺伝的な原因もある一方で、環境的な原因もあり、パーソナリティ障害を考える上で自己愛は重要なポイントとなります。

 

パーソナリティ障害の原因

参考:『パーソナリティ障害―いかに接し、どう克服するか (PHP新書)』 第ニ章

【環境的要因が与える影響】

  • パーソナリティ障害に遺伝的要因が与える影響は50%程度
    体質や能力の遺伝と比べると遺伝的要因は低い=環境的要因がポイントになる

 

【親と子の関係】

  • 乳児期(満1歳半ころ)まで
    子どもに本来与えられるべき愛情と世話が不適切であると、パーソナリティ障害を生じやすい
  • 1歳半から3歳まで
    • 母親が安心と満足を与えつつ、徐々に分離を図っていく
    • 子どもにとって怒る母と笑う母は、最初は別の対象となっている。どちらも同じ母親の一面であること(「対象恒常性」「全体対象関係」)を、親によって理解させることが大切。
    • パーソナリティ障害を抱える人は、「対象恒常性」「全体対象関係」が欠落していることが多い
  • ~4,5歳まで
    • 「誇大自己」の顕示・承認欲求が親によって適度に満たされないと、それが心の中に残ってしまい、病的に発達していく
      ※誇大自己とは、幼い子供が持っている、万能感を伴う自己イメージ。
    • 「親の理想像」が極端な形で裏切られると、過度に理想化したものとして残り続ける
  • パーソナリティ障害の原因には、少なからず親が関係している(親の死、生き別れなども含まれる)。

 

 

  少々込み入った話になってきましたが、まず、パーソナリティ障害は環境的要因が大きいです。そして、環境的要因の中でも、生まれてから5歳くらいまでの間の、親との関係が非常に大きいということです。

 特に、子どもに対して親がどのように接するかがポイントになります。かつて子どもであった自分、そしてこれから子供を育てる、現在育てている自分、すべての人にとって関係のある話ということです。

 一方で、遺伝的な原因についても研究が進み、最近では神経系のシステムにその原因を求める傾向もあるようです。ドーパミンセロトニンの働きが関係しているのではないか、といったものです。

 

パーソナリティ障害は他人事ではない?

 パーソナリティ障害に限らず、精神に関わる病気や症状には偏見や差別がつきものです。最近ではメンタルクリニックがポピュラーなものになってきたり、薬や治療法の開発が進むなどしていますが、それでも偏見や差別はあります。

 一方で、人間の心は誰もが興味を持っているものです。例えばこのパーソナリティ障害について見ていっても、人間の心の仕組みや心理学といったものが関係しているのがわかります。心について知る意味でも、偏見や差別を無くす意味でも、このような本は価値があると思います

 

 

 パーソナリティ障害は、アメリカでは人口の15%が該当すると言われています(参考:パーソナリティー障害|病名から知る|こころの病気を知る|メンタルヘルス|厚生労働省)。自分が当てはまる可能性、家族や知り合いが当てはまる可能性を考えると、まさに他人事ではありません。

 また、もともと人間が持っている性格や人格が極端に現れたもの、そのバランスが崩れたものです。パーソナリティ障害について知ることは、自分も含めた人間の心理を知るのに非常に役立つと思います

 

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