美人親子が気になって集中できない/『パニック・ルーム』のレビュー

引越し当日に強盗がやってきた!!

 公開当時は結構な話題を呼んだこの映画。ただ、タイトルの知名度の割には、肝心のストーリーは曖昧……という人も多いはず。
 「パニックルーム」というのは、住宅内にある緊急用の非難室のこと。新居に引っ越してきた親子が、当日の夜いきなり強盗に押し入られて、パニックルームに逃げ込むというのがこの映画。
 設定先行の中身の薄い映画のようなイメージもするけど、実際に見ると面白い。主演のジョディー・フォスターをはじめとして出演者も豪華。監督はあのデヴィッド・フィンチャー。登場する強盗も、単に「悪い奴」じゃない。一捻り加えた、事情を抱えた強盗。
 単なるパニック映画にとどまらない、ヒューマンドラマの要素も加わった映画。

「パニック・ルーム」のあらすじ

夫と離婚して間もないメグは、11歳の娘・サラと共に、少し前に死去した老富豪が住んでいたニューヨークの豪邸に引っ越してくる。その豪邸は法律上あと数日は入居してはならないと決められていた物件だったが、販売業者のミスでメグ達は予定より早く入居してしまう。

その夜、メグ達が入居していることを知らずに、富豪の遺族の一人であるジュニアが仲間であるラウールとバーナムを連れて邸内に侵入する。ジュニアは 屋敷に設けられた緊急避難用の密室「パニック・ルーム」に隠し財産があることを知り、屋敷が人手に渡る前に仲間を連れてこれを秘密裏に奪取しようと考えて いたのだった。

強盗達の存在をカメラと物音で確認したメグはすぐに事態を察知し、娘と共にパニック・ルームへと逃げ込む。それに対し強盗達は、数々のパニック・ルームの建設に携わってきたバーナムの知識を頼りに、中から出てこさせようと様々な行動に出る。

引用元:パニック・ルーム – Wikipedia

 あらすじを見てもわかるように、主人公親子も、強盗も、ちょっとした事情を抱えているのがポイント。離婚して片親になってしまった親子が、ようやく新生活を始めようというところに強盗。まさに泣きっ面に蜂。母は情緒不安定で酒を睡眠薬代わりにしているし、娘は病気を抱えている。この辺の設定が観る人の心に訴えかける。

 一方、強盗はそもそも「強盗」ではなかったというのがポイント。空き家からこっそり金を盗もうという、単なる「泥棒」だったはず。それが、ちょっとした手違いで強盗にならざるを得なくなり、窃盗以外にもいろいろな罪を犯してしまい、自分たちの命も危うくなる。

 この親子と泥棒を結びつけたのがタイトルにもなっている「パニック・ルーム」というわけ。大富豪が住んでいた空き家に引っ越すのが、そもそもの間違いなような気もする。妙な部屋がある家という時点で、普通は違和感を得るはず。しかしまあ、そこはサラリとスルーして、物語は進んでいく。バカまじめに見れば突っ込みどころがいっぱいある映画だけど、「つくりもの」だと割りきって観れば楽しめる。監督の意図もそこにあると思う。それに、登場人物の境遇や心情はよく描けていて、とてもおもしろい。

人物造形がわかりやすく、物語にすぐに入っていける

 有名監督の作品とあって、見やすさは抜群。見ていて全く疲れない。頭をつかう必要がない。これが良いのか悪いのかは人によって分かれるだろうけど、例えば週末の残業帰りの夜、酒を飲みながらダラダラ見ても完全理解できる(笑)。それくらい見やすい。

 離婚したばかりで少々病んでいる母と、持病を抱える娘。父は資産家。若い女と浮気をしてしまい、離婚の原因をつくった。主人公一家のキャラだけ見ても非常にわかりやすい。強盗一味はと言うと、リーダー各の男は、盗みに入った家の元持ち主の甥。一応一味を仕切ってはいるが、単細胞。ありがちなキャラ。もう一人は、ハリウッド映画の常連、名脇役でお馴染みのフォレスト・ウィテカーが演じる警備会社に務める男。パニック・ルームの設計に数多く携わった経験がある。性格も温厚で、冷静沈着、頭も良い。実質的には彼がリーダー。最後の一人は、覆面をかぶったラテン系アメリカ人の男。凶暴で最も危険な人物。ある意味一番強盗らしい。

 主要な人物というか、ほぼすべてのシーンは彼らのみで展開。人物が少ない上に、キャラもしっかり分けられているので、すぐに物語に入っていける。そして、何と言っても母と娘が綺麗。ジョディ・フォスターは40歳とは思えない綺麗さ。そして、子役の少女はどことなく彼女に似た顔つき。ここも大いに見どころ。

細かな演出が面白い!!

 監督のデヴィッド・フィンチャーは、当時すでにエイリアン3 (1992)、セブン (1995)、ゲーム(1997)、ファイト・クラブ(1999)とヒット作を連発。公開当時はこの映画にかなりの期待がかかっていたはず。ただ、それまでの作品がすごすぎて、今作は「まずまず」といった評価、あるいは「駄作」と言う人もいる。

 しかし、それは映画の作風の違いに過ぎないと思う。上の4作はどれもインパクトのある作品で、最後にでかいオチがあった。それと比べれば、パニック・ルームのオチは少々弱い。でも、この映画の見どころはそこじゃない。オチに重きを持たない映画。

 まず、パニック・ルームは全体的に暗い。ストーリーとか設定もそうだけど、意図的に映像を暗くしている。雨の降る夜中に強盗がやってきて、密室であるパニック・ルームを中心にほとんどのシーンが構成されているが、それでもやっぱり暗い。そして静か。これが恐怖感を煽る。「静かなパニック映画」みたいな感じ。

 それから、ストーリーの煽り方も良い。娘の病気を上手く使ったり、目立たなかった強盗の一人の凶暴性を暴露したり。それから、警備会社に務める強盗は、そもそも盗みに乗り気でなく、偶然が重なって窃盗犯から強盗になってしまったことを悔いている。彼はストーリーの中で明らかに「味方」「正義」として描かれている。立場は悪でも中身は正義ってところが、ストーリー展開のアクセントになっている。

 他にも、カメラの視点が面白い。密室を表現するために、換気口を漂う羽や埃の視点になってみたり、あるいは家の監視システムの防犯カメラの視点になってみたり。これは実際に見てもらうのが一番。ほぼすべてのシーンが家の中で、その大部分が密室中心。普通だったらカメラワークは単調になってしまうけど、この視点の切り替えによって飽きずに見ていられる。

 

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