パ・リーグ各球団の経営改革![再編問題、歴史]

2018年3月24日

パ・リーグの躍進と今後を徹底解説!


パ・リーグがプロ野球を変える 6球団に学ぶ経営戦略

もくじ

PAGE 1(このページ)

パ・リーグ経営改革への道のり
  • 日米・セパの球団経営の違い
  • 球団赤字問題と再編問題
  • 球団経営の問題点と改善化へのポイント
  • 球団の収支から見た問題点
  • 人気獲得と独自経営へ向けて
パ・リーグ各球団の経営改革
  • 北海道日本ハムファイターズ」/赤字補填の予算化とGM制の導入
    • 経営改善とチーム力強化/地方の人気球団を目指す!
    • GM制度の導入と外国人監督招聘
    • ベースボールオペレーションシステム 
    • 球場と球団の一体化の問題
  • 東北楽天イーグルス」/球場の営業権取得と看板販売中心の営業活動
    • 県営球場を改修し営業権を獲得
    • 球団の営業活動を積極化
  • 千葉ロッテ・マリーンズ」/球場の指定管理者と、ボールパーク化
    • 球界一の赤字球団と、利便性の悪い球場
    • ボビー・バレンタインの登場
    • 球場の経営権取得とファンサービス強化

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  • 埼玉西武ライオンズ」/裏金問題からのグループ再編と営業活動
    • ジャイアンツも恐れた球界の盟主
    • オーナー企業の不祥事と、裏金問題の表面化
    • 西武グループの再編と徹底的な顧客管理
    • フランチャイズ化が課題
  • オリックス・バファローズ」/戦力均衡論と球界全体の経営改革
    • コンプライアンスを遵守するが故の弱小球団
    • 1リーグ制による戦力均衡を目指していた宮内オーナー
    • 大阪ドーム買取とダブルフランチャイズの弊害
  • 福岡ソフトバンクホークス」/野球事業と地元での積極営業
    • 2004年にあった第二の合併騒動
    • ソフトバンク参入の裏側
    • 球団・ドーム・ホテルの一体経営とチーム強化
    • 野球事業の改革と地元での積極的な営業活動

パ・リーグ経営改革への道のり

 パ・リーグは2000年代半ばの球団再編問題、その後のIT系企業の参入などを契機に、リーグの経営改革に着手する。結果、現在ではパ・リーグの各球団の経営は健全化の一途を辿り、人気実力ともに「パの時代」とまで言われるようになった。そこで、各球団がどのような改革を行ってきたかを見ていきたい。

 各球団の経営改革を見る前に、2000年代前半にパ・リーグが直面した問題についてざっと見ていく。これまでのプロ野球の球団経営に、どれだけ問題があったかがよくわかる。

日米・セパの球団経営の違い

アメリカ
  • 球団は独自経営で黒字化が前提
日本(改革以前/~2000年代前半)
  • 球団はオーナ企業の宣伝役。赤字はオーナー企業から「広告費」名目で補填される。
  • 経営面での独立性も薄い。
セ・パの違い(20世紀のプロ野球全盛時代)
  • セ・リーグはジャイアンツの人気と巨人戦の放映権料に依存。
  • パ・リーグは不人気で赤字。

球団赤字問題と再編問題

  1. 2000年代の不況(オーナー企業も赤字を容認できなくなってきた)
  2. 2003年の会計システム変更による、球団(=子会社)赤字問題表面化
  3. 2004年の近畿鉄道経営不振と球団再編問題の浮上
  4. プロ野球史上初のストライキ実施
  5. パ・リーグを中心に経営改善化へ
参考:日米のストライキの違い
  • MLB:
    労働組合とオーナーの間で協定が締結。交渉の場やストライキ等の手段を有する。
  • NPB:
    選手は子会社の末端社員のような扱い。動労組合の立場も非常に低い。

 2004の古田敦也氏を中心とした選手会のストライキは、異例中の異例。例えるならば、子会社の末端社員がオーナー企業の上層部に直談判したようなもの。普通の会社なら直談判にこぎつけることすら不可能だろうが、プロ野球選手という立場を利用し、日本のメディアとファンを味方につけ、ストライキを決行。結果、1リーグ制を回避し、球団も経営改善に向けて動き出すことになった。

 おそらく、あのストライキが無かったらオーナー企業の好き勝手に球団再編が進められ、現在に至るまでプロ野球界の経営改革は成されなかっただろう。そういう意味で、古田さんやその他当時の選手会の活躍は賞賛すべきである。

球団経営の問題点と改善化へのポイント

球団の収支から見た問題点

収入
  • 放映権料(球団により大きく変動)
  • チケット販売
  • 物品販売・看板販売(球団と球場で分け合う)
    ⇒球団と球場の経営が分離している。つまり、球場は球団の所有物ではない場合が多い。
  • オーナー企業の赤字補填(広告宣伝費)
    ⇒前述した通り、赤字前提の球団経営となっている。
支出
  • 年俸と経費(キャンプ費、遠征費)

人気獲得と独自経営へ向けて

  • フランチャイズの強化
  • 球団収入を増やすための様々な施策

 球団を経営するにあたって大切なのは、フランチャイズ(地域密着)によって人気・知名度を獲得し、それを利用して「グッズ収入」「チケット収入」「看板収入等のスポンサー収入」を増やすことである。

 これまでの野球界ではジャイアンツ頼りの面があり、フランチャイズが充分に生かされていなかった。そのために、球団の収入を増やすための営業努力もおろそかにされていた。「仮に赤字でも、オーナー企業が補填してくれる」という意識もあったあだろう。しかし、2000年代半ばに大きな問題に直面し、これらを一から見直すこととなったのだ。

パ・リーグ各球団の経営改革

「北海道日本ハムファイターズ」
赤字補填の予算化とGM制の導入

経営改善とチーム力強化
地方の人気球団を目指す!

 ファイターズは御存知の通り、2004年から北海道を本拠地にした。その理由として大きいのは、かつて東京に在籍しながら、地の利を活かせなかったこと。パ・リーグはテレビ主導の経営が難しく、とにかく人気球団になって人を呼ばなければならない。そこで、北海道でフランチャイズ化を目指した。

 人気球団になるには、経営を安定させつつ、チームが強くなる必要がある。そこで取り組んだことは、以下のとおり。

経営の安定化
  • 地元有力企業が球団株を保有
  • 赤字補填を固定化(予算化)
GM制の導入
  • オーナー:予算の調達
  • GM:チーム編成
  • 監督:選手起用
低予算でのチーム強化

GM制度の導入と外国人監督招聘

 ファイターズの経営改革の中でも印象的だったのは、GM制の導入と低予算でのチーム強化。GMは球団運営について役割分担を明確にし、責任の所在をはっきりさせるのが目的。チームが低迷した際、お金が足りなかったのか、あるいは補強が失敗したのか、あるいは現場の起用法がまずかったのか。これを明確にすることで、効率的にチーム強化できるというわけだ。

 それまでの日本ではむしろ、プロ野球界のみならず、社会全体で責任の所在を不明瞭にする文化があった。そのために、スポーツ界でもGMの導入などが遅れていた。そこで、アメリカ人監督であるヒルマンの招集と共に、高田繁氏のGM起用が、常勝軍団への第一歩だった。

ベースボールオペレーションシステム 

 これはいわゆる「データ野球」「セイバーメトリクス」などと関係がある。球団・チームに関するあらゆる情報をデータベース化し、強化に役立てるというものだ。データの内訳を見てみよう。

【チーム運営】

①試合分析 ②スカウト活動 ③選手査定(ドラフト、育成含む) ④各球団別情報 ⑤トレーナー情報

【球団経営】

⑥チケット販売 ⑦マーチャタイジング(グッズ販売等) ⑧ファンクラブ運営 ⑨お客様窓口 ⑩管理部門

監督・選手が変わってもなぜ強い? 北海道日本ハムファイターズのチーム戦略』藤井純一(2012)光文社,初版第2刷,pp156-157より抜粋・一部加筆

 驚くべきは、例えば選手情報は高校生、大学生、社会人、他球団に至るまであらゆる選手が対象となっていること。加えて、選手の性格や練習等での態度までデータ化している。これによって無駄のない選手獲得・強化をし、少ない資金でも育成力を持って強豪チームをつくることに成功している。

 この辺も含めて別記事でまとめてあるので参考にしていただきたい。

球場と球団の一体化の問題

 

 様々な面で今や球界の盟主とも言っていいチームとなったファイターズ。しかし、一つ大きな問題が残されている。球場と球団の一体化である。札幌ドームは球団の所有ではなく、球場での収入の一部はドームに持っていかれ、10億を超える賃貸料も毎年支払っている。その他、球場でのイベントや球場の改築などでも大きな制限がかかっている。

 これは何もファイターズだけの問題ではなく、他の球団も同じように抱えている。これを解消すべく、2016年から移転問題が持ち上がっている。それについても別記事でまとめてあるのでどうぞ。

「東北楽天イーグルス」
球場の営業権取得と看板販売中心の営業活動

県営球場を改修し営業権を獲得

 イーグルスは新規参入球団で、IT企業ということもあり、これまでにない革新的な球団経営を開始。まずひとつは、これまで問題とされてきた球団と球場の経営について、一体化に着手。県営球場を自費で改修し、その見返りに営業権を取得。これによって、球団収入のうち、物品販売・看板販売について権利を得た。

 その他にも、ボールパーク化を積極的に進めており、今では野球だけじゃないエンタメ球場に変貌しつつある。別記事でまとめてあるのでそちらも見ていただきたい。

球団の営業活動を積極化

 さらに、球団の営業活動を看板販売に集中。代理店任せにせず自社で販売を行い、なおかつ全国の企業に向けて売りだした。球団の営業活動は、これまではテレビを軸として認知度を高め、ユニフォームやグッズ、あるいはスポンサーの獲得が営業の常識だった。結果、経営一本化も相まって、一年目にして営業利益を計上。これは赤字が当たり前のパ・リーグにあって異例のことで、他球団の経営改革本格化の先駆けにもなった。

 一方で、チームの強化についてはなかなか上手くいかず、数年間はBクラス。ただ、その間も球団の人気は非常に高かった。裏を返せば、フランチャイズが上手くいっている証拠である。フランチャイズを固めると、低迷期が続いてもファンは離れない。広島カープなどがその好例である。

 オーナー企業の楽天はIT企業であり、社長も非常に柔軟な考えを持っている。そのために、ところん合理的な考えで球団経営を行っている。オーナー企業と球団の連携が上手くいっているのが、楽天イーグルスの強みと言えるだろう。

「千葉ロッテ・マリーンズ」
球場の指定管理者と、ボールパーク化

球界一の赤字球団と、利便性の悪い球場

 ロッテはかつては球界一の赤字球団と呼ばれていた。歴史を見ると、1969年の参入から本拠地を転々とさせ、90年代に千葉に落ち着く。しかしマリン球場は球場内は千葉市の管理、球場周辺は千葉県の管理であり、使い勝手が悪かった。物品販売や広告販売における大幅な制限のほか、観客増加の案も行政に却下されるなど。

 加えて、交通面も悪く、最寄りの海浜幕張駅から球場までは徒歩で15分。JRのほか、球場までのバスを運行する会社も、球団には非協力的。そこに来て、そもそもオーナーが球団強化に乗り気でなかった。これには、オーナー企業のロッテは、韓国での売上が日本の数倍もあったことも関係。

ボビー・バレンタインの登場

 ここでまず登場するのが、あのボビー・バレンタイン。彼はこれまで二度に渡ってマリーンズ監督になり、いずれも好成績を収めが、退任の際にゴタゴタがあった。それには球団の経営改革が関係している。

1995年の第一次政権
2004年の第二次政権
  • メジャー流のファンサービスと優勝により人気球団化。
  • 球団も経営改革に乗り出す。
  • ⇒監督の人件費がかさみ、球団の方針との食いもあって2009年をもって解任。

 これを見ると、良くも悪くもボビーの登場によってプロ野球及びロッテの球団経営・運営の問題点が表面化している。そして、第二次政権時の2005年から球団は経営改革に乗り出す。

球場の経営権取得とファンサービス強化

 まず2005年、球団は営業時間と利益の効率化に注目。これは簡単に言うと、プロ野球の試合は一年の半分ほどで1日数時間しかない。わずかな営業時間で一般の企業並みの経営をするには、何倍もの利益の効率化が必要と言うこと。そこで、周辺施設の充実に乗り出した。

 このために、2006年にはスタジアムの指定管理者になり、球団と球場の経営一本化に成功。
周辺をボールパーク化し、球場での滞在時間を伸ばすことに成功。具体的には、ファンを会員化しリピート率を向上させるほか、ヒーローインタビューを3回に。まずはテレビの前。2回目はファンの前。3回目は場外で。この結果、3年で赤字が半減など、経営は健全化していった。