これですべて理解!『アウトレイジ最終章』北野武 – あらすじ[解説,考察,感想]

2018年3月7日

韓国マフィアと日本の巨大暴力団が、かつての因縁を巡って衝突。
日韓を股にかけた大抗争へ!


アウトレイジ 最終章 [ ビートたけし ]

もくじ

<あらすじ>
  • 簡単なあらすじで作品を理解!(ネタバレ無し)
  • あらすじ(※ネタバレあり)
    • 1. 済州島の大友とかつての因縁の相手花菱会
    • 2. 花菱会の新会長と古参幹部の対立
    • 3. 野村の策略と西野・中田の謀反/大友暴走
    • 4. けじめをつける大友
<解説,考察,感想>
  • 歴代の出演者も加わった北野映画の集大成
  • 死を意識し、死に向かって突き進む大友
  • シリーズ最高の興行収入
  • 初期の作風との違い/「ルールと組織」で死を描く
  • 北野監督の手腕/大作の終わらせ方(注目!)
    • 他人を信じれない世の中
    • 過去の過ちの処理を延々と繰り返す人々
    • 「アウトレイジ」の無い殺し合い

北野武監督まとめ

あらすじ

簡単なあらすじで作品を理解!
(ネタバレ無し)

 東西の巨大暴力団、山王会(関東)と花菱会(関西)の抗争後、韓国へと渡った大友(ビートたけし)は、日韓を股にかけるフィクサー張大成(金田時男)の下に身を寄せていた。そんな中、花菱会の幹部である花田(ピエール瀧)は、取引のためにやってきた韓国でトラブルを起こし、張会長の部下を殺してしまう。大友は舎弟である市川(大森南朋)から連絡を受け、相手が因縁のある花菱会の幹部であると知る。花田は部下にトラブルの処理を任せ、帰国してしまうのであった。

 一方、日本では花菱会が裏社会を事実上仕切っていた。山王会はかつての抗争でその勢力を大きく落とし、形だけ存続しているような状況であった。しかし、そんな花菱会も内部では亀裂が生じ始めていた。新たな会長の野村(大杉漣)は、元証券マンで前会長の娘婿であり、組の古参である若頭の西野(西田敏行)や中田(塩見三省)は彼を快く思っていなかった。野村もまた、そんな二人の幹部を追い出そうと策を講じていた。

 そんな中、花菱会に韓国でのトラブルの情報が入る。西野は自分の部下である花田がトラブルの原因であると知り慌てふためき、野村はこれに乗じて、中田を利用して西野を貶めようと画策。しかし、西野はそれを察知し、中田と共に反乱を起こそうと考えるのであった。

 その後、韓国の張の元に、花田の部下である丸山(原田泰造)が刺客として向けられる。時を同じくして日本へ帰国していた大友と市川は、その情報を耳にする。かつての抗争で最前線で体を張った末、花菱会に使い捨てにされて死んだ木村のことも合わせて、大友はついに激怒。後先考えずに花菱会へ喧嘩を売ることにしたのだった。

あらすじ(※ネタバレあり)

1. 済州島の大友とかつての因縁の相手花菱会

 かつて関東最大の暴力団であった山王会、その傘下の弱小組織の組長だった大友(北野武)。山王会に組を潰され、獄中生活を送った後、今度は山王会と花菱会(関西最大の暴力団)の抗争に巻き込まれ、こき使われた挙句に仲間を殺される。その裏で糸を引いていた極悪刑事の片岡(小日向文世)を殺し、現在は日韓を股にかけるフィクサーの張大成(金田時男)を頼って済州島で暮らしていた。
大友は張グループの元で歓楽街を仕切り、部下の市川(大森南朋)と共に風俗店で金を稼いでいた。

 そんな中、日本のヤクザを名乗る男がクレームをつける。店の女が不満だと言い、暴力を振るっていたその男は、花菱会の花田(ピエール瀧)と名乗る。組の名を盾に横柄な態度をとる花田だったが、大友は物凄い剣幕でまくし立て、花田に詫びとして200万を要求。舐めた真似をしたら組同士の抗争も辞さないと告げる。しかし、花田は金を受け取りに来た大友の若い衆を殺し、金を払わず帰国した。激怒する大友は、市川を連れて日本に向かうことにした。

2. 花菱会の新会長と古参幹部の対立

 一方日本では、花菱会会長は引退し、娘婿であり元証券マンの野村(大杉漣)が跡を継いでいた。極道の経験も無ければ年も若く、金を稼ぐことを最優先する方針に、当然ながら西野(若頭・西田敏行)や中田(塩見三省)初めとする古参の幹部達は不満を抱えており、一方で野村も彼らを排除しようと考えていた。

 そんな折、西野は花田のトラブルの話を聞きつける。相手が張グループと知り、会長を通さず花田と二人で詫びを入れたが、張と側近の李(白竜)に突き返される。西野は花田のシマの金目当てに、彼に恩を売っておこうという算段だった。後日、問題は野村の耳にも入った。野村はここで一芝居うち、まずは西野に大金をもたせ再び詫びに行かせ、一方では中田に西野を殺せと命じた。

3. 野村の策略と西野・中田の謀反/大友暴走

 すべては野村の思惑通りに進むと思われたが、中田は野村を信じ切れておらず、花田を抱き込み、西野を殺したと見せかけ彼を逃がした。花田から嘘の報告を受けた野村は「張の仕業だ」と再び芝居をうち、配下の組に張殺害を命じる。しかし、すんでのところで張を逃してしまった。

 一方、大友は日本へ来て間もなく、かつて大友が殺した刑事の部下の繁田(松重豊)に拘束されるが、張の圧力ですぐに釈放され、繁田は警察の無力さに憤っていた。大友と市川は張会長を襲撃した組を襲った後、西野と会う。一触即発の中、花田に詫びを入れられると共に、西野からある提案を受ける。「花菱会の若い衆が一堂に会す宴会で、野村を殺せ」というものだった。

 宴会当日、野村は身の危険を感じて出席せず、大友の姿も見えない。それでも宴会は進み、壇上に死んだはずの西野が現れ、野村への謀反を組員に呼びかけた。組員が騒然とする中、突如大友が現れ市川とともに組員へ向けて乱射。西野はわけがわからず泣き崩れるも、自らは生き残り、すべてを野村に擦り付ることに決めた。そのまま西野は会場を後にして本部へと戻り、野村の前に現れる間もなく中田らと共に野村を拘束し、ついに殺害する。

4. けじめをつける大友

 不測の事態があったものの、野村を殺すことに成功した西野はそのまま会長の座を継ぎ、若頭に中田、若頭補佐に花田をつける。会長の座も花田への恩も売った西野は、最後に大友を殺すことに。しかし、大友はすでに次の手を打っていた。女と遊んでいた花田を襲って惨殺、市川を韓国へ帰し、かつての弟分である木村の敵討ちも果たす。

 しかしながら、張の命令を無視して暴走した大友は、側近の李から銃を向けられる。「本意にではないが、これ以上迷惑かけてもらうわけにいかない」。だが、大友は自ら銃を手に「会長によろしく」と言い残し、引き金を引いたのだった。

解説,考察,感想

歴代の出演者も加わった北野映画の集大成

 アウトレイジ最終章の見どころは、さらに豪華さを増した出演陣だ。前作の時点でこれ以上ない豪華キャスティングとなっていたが、ここに北野映画でおなじみの大杉漣(「ソナチネ」「キッズリターン」「HANA-BI」「BROTHER」「Dolls」「TAKESHIS’」「監督ばんざい」「アキレスと亀」)、岸部一徳(「その男凶暴につき」「座頭市」)が参加。これまでの映画の集大成とも言えるキャスティングだ。物語の中心にある花菱会の幹部をこの二人が務めることで、花菱会をより厄介な組織に仕立て上げている。

 今作ではまた、過去のアウトレイジシリーズのネタを再利用している点も面白い。2で「野球しようか」というセリフとともに、加瀬亮をバッティングセンターに縛り付けたシーンだが、それを思わせるシーンが登場。緊張感のある映画の中で思わず笑ってしまう場面も。緊張感と笑いは表裏一体という監督らしいシーンである。他にも、冒頭のシーンは1,2共に黒塗りの自動車の車体が印象的だが、最終章でもそれが使われている。今作の絵が最も素晴らしい出来なので、ぜひとも見ていただきたい。

死を意識し、死に向かって突き進む大友

 また、全二作と比べると、今作での大友は向こう見ずで死を恐れない存在となっている。1作目では抗争に巻き込まれ追い詰められながらも、出頭することで生き残る道を選択した。2作目でも、立て続けの抗争に疲れてしまい、争いはもういいと言って韓国へと渡った。そのたび激しい抗争を引き起こしながらも、あくまで生き残り続けた大友だった。

 しかし、今回は死んでもいいという姿勢で花菱会に喧嘩を売る。公開前の監督のインタビューを見ると「今作は乾いた作品になる」「ソナチネのようになる」と語っている。北野監督の初期の名作「ソナチネ」は、親分に見捨てられたヤクザが沖縄で逃避行し、死を感じながらも海辺の隠れ家に部下数人と逃れ、浜辺で遊びに興じるという内容だ。「どうせ死ぬんだ」という半ば諦めた雰囲気が全体を包む作品だ。監督の「ソナチネになる」という言葉は、随所で見事に形となっている。

シリーズ最高の興行収入

 2017年11月20日時点で、本作はシリーズ最高の興行収入を記録することが見込まれている。1は7.5億、2で14.5億、そして今作は11月14日時点で15億を突破。シリーズごとに興行収入が上昇したアウトレイジシリーズ。北野映画を通じても座頭市に次ぐヒットを期待できる。

初期の作風との違い/「ルールと組織」で死を描く

 アウトレイジシリーズはこれで間違いなく終了である。本作は監督の原点である「ヤクザもの」であるが、作風は初期のものと大きく異なる。エンターテイメントが軸であるが、一方で「どう死ぬか」から「どうやって殺すか」に変化している。前者は哲学的テーマとも言え、作風も芸術性を追求したものであった。一方後者は、理屈や道理がポイントとなる。組織と組織の争いがあって、ある意味でルールに従って相手を殺す。そして、どちらも共通して死を「冷酷に」描いている。同じ冷酷さでも、とらえ方を変えると全く違う作品になるというのが、アウトレイジシリーズの存在意義ではないだろうか?

 ヤクザ映画がここまでエンターテイメントとして成功したのも、「組織とルール」を軸にしてヤクザと殺しを描いた結果と分析できる。今後はどのような映画を撮るのか? どんなヤクザを描くのか。あと20年は北野監督に楽しませてもらいたい。

北野監督の手腕/大作の終わらせ方

 アウトレイジシリーズは前作が「大作」ということで、続編が出ると聞いて「一体どうやってまとめるのだろう」と思っていた。シリーズを通じてみると、最終章での北野監督の器用さがよくわかる。では、ここで本作のポイントをあげていこう。

他人を信じれない世の中

  • すべての人間・組織がいがみ合い、騙しあう
  • 誰もが誰もを信じていない

 本作はまさに、現代社会への皮肉である。1や2は残虐ながらも友情や義理人情が見えた。しかし、今作は大友(張一派)以外は全て組織に属していながら孤立している。それが逆にリアルであり、ヤクザ映画でありながら一般人の喧嘩を見ているようでもあった。

過去の過ちの処理を延々と繰り返す人々

 これもまた、現代社会を見ているようだ。次々と不祥事が明らかになる大企業、過去の遺産に胡坐をかいて外国企業に吸収される大企業、新時代へ向けた再開発と言いながら、既得権益の争いに明け暮れ、昭和のやり方で人間を粗末に扱う建設業者。

 みな仕事をしているようでしていない。失われた20年と言うが、過去にしがみつき、過去に足を引っ張られ、何も失っていなければ何も得ていない。本当に何かを失ったものだけが、新たな一歩を踏み出せる。アウトレイジ最終章に登場する人々の中で、現在を生きているものは果たして何人いただろうか?

 本作は良い意味で過去を清算してシリーズに幕を閉じた。しかし、最後に生き残った人々は過去に取り残され、次作の無い世界で延々と過去を巡って生き続けるのだ。

「アウトレイジ」の無い殺し合い

 上述のような背景もあり、本作は「アウトレイジ=怒り」の無い殺し合いが展開されている。人間味が無く淡々と人が殺されていくところが、逆説的で妙にリアルである。

 アウトレイジの行きつく先は怒りの無い世界。これこそ、本作で描かれたテーマではないだろうか?