「アウトレイジビヨンド」のあらすじ・解説

2017年10月3日

警察と関西・関東のヤクザが、三つ巴の潰し合い!巨大組織のぶつかり合いを豪華キャストで描いた大作!

アウトレイジ ビヨンド [DVD]

アウトレイジ ビヨンド [DVD]

  • 2012年10月6日公開(北野武監督15作目)
  • 監督・脚本:北野武
  • 出演者:
    【大友一派】
    ビートたけし(大友)、中野英雄(木村)ほか
    【山王会(関東)】
    三浦友和(加藤)、加瀬亮(石原)、田中哲司(舟木)、中尾彬(富田)ほか
    【花菱会(関西)】
    神山繁(布施)、塩見三省(中田)、西田敏行(西野)ほか
    【警察(マル暴)】
    小日向文世(片岡)、松重豊(繁田)ほか
  • 音楽:鈴木慶一
  • 国際映画祭での上映:ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門
  • 観客動員ランキング初登場1位を飾るなど、ヒット作となった(興行収入は約15億)。

【もくじ】

  • 「アウトレイジビヨンド」のあらすじ・相関図(前半)
  • 「アウトレイジビヨンド」のあらすじ・相関図(後半)
  • ラストシーンの考察
  • 北野監督のインタビューから見る「アウトレイジビヨンド」
  • 「アウトレイジビヨンド」感想

 

「アウトレイジビヨンド」のあらすじ・相関図(前半)

 

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  関東最大の暴力団・山王会は、5年前の内部抗争を経て、二代目の加藤(三浦友和)によってその勢力を拡大していった。5年前に大友(ビートたけし)を裏切り山王会入りした石原(加瀬亮)は、その財テクを買われて若頭にまで出世。実力主義とビジネスという新たなルールに対して、古参の組員は不満を募らせていた。

■1.~1-3.

 一方、ヤクザ担当で山王会と繋がりを持つ刑事の片岡は、大きくなりすぎた山王会をどうにかできないものかと思案していた。そんな中、片岡の後を継いで山王会のパイプ役となっていた刑事の山本が、国交省大臣の愛人と共に、車ごと海に沈められるという事件が起こる。

 あからさまに権力を誇示するようになった山王会。対する片岡は、山王会幹部の一人富田(中尾彬)に目をつける。関西最大の暴力団花菱会とのパイプを持つ富田を利用し、花菱会の会長の手を借りて加藤を引きずり下ろせないかと考えたのだ。

 しかし、富田の動きをかぎつけた花菱会会長布施(神山繁)の密告により、計画はあえなく頓挫する。片岡の知らぬうちに、東の山王会と西の花菱会は兄弟盃を交していたのだ。間もなく富田は、山王会のNo3舟木(田中哲司)の手によって殺される。舟木は、加藤の息のかかった人物であり、5年前の謀反を知る数少ない人物でもあったのだ。

■2.~3.

 自身の立場も危うくなった片岡は、かつての抗争に巻き込まれ、山王会に恨みを持つ大友を利用することにした。この時、獄中にいた大友は片岡が流した噂により、すでに死んでいることになっていた。

 片岡は大友を仮釈放させ、5年前の話を持ち出す。「加藤と裏切り者の石原にケジメをつけろ」と、大友を焚き付けるのであった。次いで、かつて大友と敵対関係にあった木村(中野英雄)にも近づき、大友と引合せた。

 5年前の真相を知った木村は、過去のわだかまりを捨てて大友と和解した。しかし、片岡の提案に乗り気な木村に対し、大友にその気はなかった。大友は同郷のなじみで今は日韓を股にかけるフィクサー張大成(チャン・テソン)の元に身を寄せ、静かに暮らすことを望んでいたのだ。

 一方、大友の出所を知ったかつての子分石原は、彼を監視し、組員に襲撃させ、ついには大友に重傷を負わせる。大友のボディガードを務めていた木村の子分も返り討ちにあって死亡。徐々に大友の心境は変化していった。

■4.~4-3.

 ついに大友は、盃を受けるべく花菱会の本部を訪ねる。しかし、友好関係にある山王会との争いを避けたい花菱会は、高圧的な態度で大友・木村に罵声を浴びせ、大友もそれに応酬。収拾のつかない事態の中、木村がその胸のうちにある強い復讐心を、自ら指を噛みきると言う行為で示し、事態は収拾。大友たちの策略にも一考の余地ありと踏んだのか、花菱会は二人に力を貸すことにした。

 さっそく、大友らは山王会幹部の舟木を拉致。壮絶なリンチによって5年前の会長殺しの真相を吐かせ、テープに録音することに成功。布施はそのテープを加藤に聞かせ、「これを録音したのは石原で、謀反を起こそうとしている」と嘘を吹込む。かつて大友を裏切った過去を持つ石原に対し、加藤は疑心暗鬼に陥る。

■5.~5-2.

 石原は大友を殺すため、大友に恨みを持つ木村に接近するが、すでに和解していた二人に返り討ちに遭い、間もなく惨殺される。

「アウトレイジビヨンド」のあらすじ・相関図(後半)

アウトレイジビヨンド 相関図 後半

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■1.~1-3.

 花菱会長の布施は、舟木の証言テープを山王会幹部連中に配り、内紛を起こさせる。加藤の新体制に反発していた勢力にも押され、加藤は失脚。会長の座を奪われ、引退に追い込まれる。

■2.~2-3.

 加藤への恨みを果たした木村は、花菱会と盃を交しそうと大友を誘う。しかし、大友は「お前の下っ端で良い」と断った。一人花菱会を訪ねた木村だが、そこで「山王会との手打ちの条件として、大友を破門にしろ」と指示される。困惑する木村だが、渋々その旨を告げる。

■3.~3-2.

 大友は木村の元を去り、張を頼って韓国へと渡った。その後、密かに帰国し、堅気になった加藤をパチンコ店にて刺殺する。

■4.~4-2.

 盃を貰って「木村組」を立ち上げた木村だが、加藤殺害の嫌疑をかけられ事務所に家宅捜索が入る。その直後、「大友」を騙った加藤の元部下により、木村は殺される。

 裏で手を引いていたのは片岡だった。彼を疑い始めた刑事に対し、片岡は「花菱会が、大友の手に見せかけてやったんだろう」とうそぶいてみせる。その理屈を押し通し、片岡はさらに大友を利用しようと欲を出す。

■5.

 木村の葬儀会場。そこには花菱会の幹部の姿も。遅れて姿を現した大友に、片岡は拳銃を渡した。彼のでっちあげた理屈の元、「木村殺しの濡れ衣を着せた花菱会に、報復してやれ」というわけだ。

 しかし、大友はすべて見破っていた。受け取った拳銃を片岡に向けると、そのまま射殺したのだった。

ラストシーンの考察

■ラストシーン(加藤の死~片岡の死まで)の考察

 本作は裏で手を引いている片岡によって物語が展開していく。その中でも、まずはラストシーンでの片岡の策略を見て行こうと思う。

 物語の終盤で、大友が加藤を殺してからの一連の流れはあまりに目まぐるしすぎて混乱する。そこは、裏で手を引いている片岡を中心に考えると、すっきり整理できる。

  1. 大友・加藤を焚き付け、花菱会と引合せることで、片岡は山王会を崩壊させることに成功。
  2. 大友が加藤を殺したのをみて、さらに欲を出す。
    ⇒加藤を慕っていた山王会の人物に「加藤を殺したのは木村組」「仇を取って来い」と嘘を吹き込む。その上で、自分の立場を利用して木村組へ家宅捜索。守りが手薄になったところで、木村を殺すことに成功。
  3. 木村殺しの罪を花菱会に着せ、大友に復讐させようと目論む。
    ⇒木村の葬儀にやって来た大友に、片岡は「あれは花菱会の仕業だ」と吹込む。葬儀の場に集まった花菱会の幹部を大友に襲わせ、花菱会も潰してさらに手柄を立てようという魂胆。しかし、最後の最後に大友にすべて見透かされ、殺されてしまう。

 

■では、花菱会はどこまで考えていたか?

 ラストシーンに絞って話をすると、そもそも花菱会は、大友や木村を使って山王会を弱体化させ、弱った後は相手の出方を見て金や力を奪っていこうと考えていた。では、その後はどこまで想定していたか?

  1. 大友が加藤を殺した件。
    ⇒想定済み。

    おそらくこれは、片岡と同じく花菱会も想定していたところ。手打ちになった木村組と山王会なのに、木村の仲間の大友が山王会の元組長を殺した。そうなれば、山王会も黙っちゃいない。仮に山王会が仕返しすれば、手打ちを反故にしたということで、山王会に「どういうことじゃ」と迫れる。山王会が手を出さなかった場合でも、手打ちを破った大友を理由に、捨て駒の木村を潰せる。どっちに転んでも大丈夫というわけだ。

    ただし、片岡が加藤の元部下に嘘を吹き込み、木村を殺させたということまでは考えていなかっただろうと思う。ある意味で、花菱会の想定を超えるほど、片岡は無茶苦茶な奴だった。片岡が一番恐ろしい人物かもしれない。

  2. 片岡が花菱会に罪を着せ、大友に復讐させようとした件。
    ⇒想定外。

    花菱会はあくまでも大組織。周りの出方を見て、状況に合わせて策を打とうと言うスタンス。彼らはこの時点で、木村殺しの件で山王会に探りをかけ、何らかのゆさぶりをかけようといったところ。何なら、葬式に来た大友に「仇を取れ」なんて言って、また利用しようと考えていたかもしれない。だから、葬式にもしっかり参加。

     片岡が殺されたのももちろん想定外だが、花菱化にとっちゃ代わりの刑事はいくらでもいる。それがどうした、といったところだろう。悪の度合いとしては片岡が図抜けていたが、組織としての強さは花菱会が上だったというわけだ。

■次作で大友はどう動くか?

 では、大友と花菱会の関係はどうか。花菱会にとっては捨て駒の一人にすぎない大友。破門にしたとは言え、今後も監視をしておく必要があるだろう、くらいのもの。一方の大友は、結局自分たちの手を汚さず美味しいとこ取りだった花菱に恨みを持ってもおかしくない。あれだけ頑張った木村への処遇の悪さも加えればなおさら。

 ただし、あくまで大友は花菱会に捨て駒にされたとは言え、直接的に被害を被ったわけではない。考えて見れb、大友はこれまでのシリーズでも、自分から何かをすると言うより、気が付いたら抗争に巻き込まれ、戦わざるを得ない状況に追い込まれていただけ。

 そうなると、次作で花菱会と戦う大友は、感情も理由も無く、ある意味では「なんとなく」花菱会と戦うことになるだろうと予想できる(アウトレイジ最終章公開前の話を聞いても、そんなニュアンスのことを監督が語っている)。その「なんとなく」を北野監督はどう描くのか、そのあたりが見どころか? 

 

北野武監督のインタビューから見る「アウトレイジビヨンド」
(解説・撮影秘話・映画論)

北野武『アウトレイジビヨンド』インタヴュー」(OUTSIDE IN TOKYO)より

映画のアイディアやテーマについて

  • (前作の)評判も良かったんだけど、なんか暴力描写ばっかり話題にされて、ストーリーにあんまり触れられなかった。じゃあもうちょっとエンターテイメントらしく、ストーリーに裏切りだったり、ひっくり返ったり、予想以外のことが起こったりというサスペンスを増やすかっていう。エンターテイメント性を暴力以外のもので より表現するということにしたかな。
  • 何故関西のヤクザが登場するかっていうと、大阪弁と関東弁の罵り合いをやってみたくて(笑)。漫才のような「言葉の格闘技」をやりたいっていう。

 

脚本・ストーリーについて

  • 大友がイケイケだと単なる復讐戦になってしまうんで、周りの警察とか関東や関西のヤクザとかが大友を巻き込むことにした。(中略)登場人物は多いんだけ ど、相関図に役者さんの写真を並べて構図を作るところからはじめて。それでこっちのキャラクターがこっちに裏切られて、一方でこっちはこっちを潰そうとし てた、とか考えていって、かなり緻密に練ったね。

 

撮影手法について

  • 銀残し(※本来の銀を取り除く処理をあえて省く事で、フィルムに銀を残す現像手法。市川崑監督の『おとうと』(60)で初めて使われ、その後世界中で使わ れるようになった。)で色をかなり抑えてるから、意外と白黒に見えるっていうかね、色は出てるんだけど、かなり照明さんとカメラマンで色抑えたんだよ。
  • 対話のシーンとかでしゃべる方の切り返し(※イマジナリーラインのこと)とかよくあるじゃない。でも今回はわざと逆に人物を置いたりしてみた。ちょっと違和感があるような、明らかに間違ってはないってんだけど、どこかあれ?っていう感じのね。
  • (アップが比較的少ないことについて)
    多分、俺があんまり寄るカットを撮らないのはね、大島さんの『戦場のメリークリスマス』(83)の時に監督と一回飲んで話した事あるんだけど、映画論の話 になって大島さんが「アップを多用するのは一番下手な監督だ」って言ってたのね。それがどうも残っちゃってて。昔はもっとひいた画ばかりだったね。アップ でもこれ(バストアップ)ぐらいだったから、今でこれ(クローズアップに近い)ぐらいになったけど。

 

ヤクザ映画について

  • 日本のヤクザ映画の流れは、(高倉)健さんとか鶴田(浩二)さんとかの任侠映画がまず全盛時にあって、今度は深作(欣二)さんの『仁義なき』シリーズがある。それから、ちょっと逸れてVシネもあるんだけど(中略)進化のグラフがあるとしたら、深作さん以降、Vシネで右に反れたラインをね、真っすぐこう持ってくると世界観は『アウトレイジ ビヨンド』で描かれているものになると思うんだよね。
  • 警察を描くにしても、報道でながれる事件見てびっくりするじゃない。警官が覗きやったり、ヤクザと癒着してたりね。だから実際に日本でももうそういう事件 がいっぱい起こってて、ストーリー的にもリアリティを失わない時代になってきたっていう。ヤクザが暴対法で縛られてきてはいるけど、今や企業に手を出して きていて、ドンパチよりも株とかで儲けるっていう。

「アウトレイジビヨンド」感想

巨大組織の争いと騙し合い

 北野映画では初の続編、豪華キャストとメディアでの積極的な宣伝など、何かと話題の多かった今作です。前作では「いろいろな殺し方」を見せるのがテーマでしたが、今作はストーリーが中心であり、巨大組織の争い、人間同士の騙し合いが見どころとなっています。そして、キャラクターの個性が強く出ているために、どの人物を中心に見ても楽しめる作品です。

 

最も汚いのは刑事の片岡?!

 中でも特に目立つのは、刑事役の片岡(小日向文世)です。巨大組織となり、政治にまで影響を与え始めた山王会を、片岡はいろいろな手を使って潰そうとします。幹部に組織の秘密を漏らして内部分裂を起こそうとしたり、山王会に恨みのある獄中の大友(ビートたけし)を強引に仮出所させたりします。片岡は前作でも、ヤクザから賄賂を受け取っていたような人物です。しかし、今作ではその汚さが限度を超えています。ヤクザ同士の揉め事のように見せて、実はすべて片岡が仕組んだのではと思わせるシーンがいくつもあります。

 

巨大組織としての狡猾さを見せる花菱会

 その一方で、花菱会の会長と幹部は、巨大組織の狡猾さを見せています。安易な策略には引っかからず、感情に流されることもなく、騙し合いの構図の中で終始絶対的な存在でありつづけています。いつも一歩引いた位置から物事を眺めて入れ、揉め事に直接手を出すことはありません。そして、問題を起こした者はすぐに切り捨て、結果を出した者でも簡単に認めることはないといった具合です。

 

ヤクザ社会も現代的に

  その他に気になったことは、ヤクザの描き方が現代的になっていることです。ITや錬金術に長けた若い組員が出世する一方で、組織のトップはいつ牙を剥くかわからない有能な人物よりも、自分たちの言うことを聞く従順な人物を部下に選んでいます。現在の世の中は、実力主義と保守的な考えがどっちつかずの状態になっており、それをヤクザ社会を通してうまく表現していると思います。