不器用な人間の苦悩『人間失格』太宰治 – まとめ[登場人物/あらすじ/考察,解説,感想]

2018年3月7日

若いうちに読んでおきたい太宰の名作!


人間失格改版 (新潮文庫)

太宰治『人間失格』 – もくじ

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  • 『人間失格』の背景
    • 自殺の直前に書き終えた最高傑作
    • 遺作として残った『グッド・バイ』
  • 物語の登場人物
    • 主要登場人物
  • 簡単なあらすじ(要約) – 3分で読める!
    • 生きることへの恐怖
    • 道化として生きる
    • かすかな希望と壊れる幸せ。人間失格。

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  • ★長めのあらすじでストーリーを楽しもう!★
    • 「はしがき」~「第一の手記」
      • 「生きるために食い食うために働く」ことへの恐怖
    • 「第二の手記」
      • 道化になることを選んだ葉蔵
      • 美大生の堀木との出会い
      • 身代わりの道化、酒、風俗、思想……居場所を見つけた葉蔵
      • 生活の変化と金欠と情死
    • 「第三の手記」~「あとがき」
      • 大人になった堀木と、出版社の女
      • 恐ろしいのは世の中ではなく人間
      • ヨシ子と、束の間の幸せ
      • 破壊された幸福
      • 人間失格
  • 考察(解説)
    • 裕福ゆえの生きることへの疑問
    • 苦悩はすべて対人関係から生じる
    • 生きることに不器用だった葉蔵
  • 感想
  • 参考文献

太宰治まとめ

太宰治『人間失格』 – あらすじ・要約

『人間失格』の背景

自殺の直前に書き終えた最高傑作

「人間失格」は太宰の作品の中でも最も有名なもの、ある意味で太宰治の代名詞のようになっている作品です。1948年、太宰が38歳の時に執筆し、その翌月に愛人の山崎富栄と共に玉川上水へ入水自殺し死去。

 一年前には「斜陽」がベストセラーになり、一躍人気作家となったばかりでした。若いうちから自殺未遂を繰り返していたとは言え、あまりに急な死です。

遺作として残った『グッド・バイ』

「人間失格」は太宰の遺書のように語られることも多いですが、遺作としては同じく死後に発表された「グッド・バイ」があります。そちらは未完の作品となっており、朝日新聞への連載予定があり、死の前日も原稿を書いていました。なおかつ、その内容も、新たな太宰の作風を予感させるもので、それも合わせて自殺は不可解なものとなっています。

物語の登場人物

主要登場人物

■大庭葉蔵(=太宰治/20歳)

★人間失格は太宰治の自伝的な要素をもっており、物語及び主人公は太宰の半生からアイディアを得ている。

  • 東北の裕福な家の末っ子
  • 内面の発達が早い一方で気が弱く、他人を恐れている。
  • 自分の弱さを悟られまいと、道化(ひょうきん者)を演じることで誤魔化すようになる。
  • 美少年。女性の多い環境で育った
  • 知人に女遊びを教えられたことで、女たらしになる。

 どれも太宰治に当てはまる要素である。一見すると恵まれた人間だが、その内面の繊細さによって身を滅ぼすこととなる。

■竹一

  • 葉蔵の中学校の同級生。
  • クラスで目立たない貧弱な人物
  • 道化になって生きる葉蔵の本心を見破る
  • 「お前に女に惚れられる」「良い絵描きになる」など意味ありげな言葉を投げかけ、それが葉蔵の未来を左右することとなる。
■堀木正雄(26歳?)

  • 大学進学後の葉蔵がアトリエで出会った美大卒の遊び人
  • 葉蔵(20歳ほど)より6歳上。
  • 東京の下町にある下駄屋出身
  • 「酒」「タバコ」「女遊び」「質屋」「共産主義」を葉蔵に教える
  • おしゃべりな人間で、葉蔵の代わりに「道化」になってくれた
  • 葉蔵に「左翼の秘密会合」という居心地のいい場所を教える
■ツネ子(22歳)

  • 葉蔵の父が死んで金に困り始めた頃に出会う
  • 広島出身、銀座のカフェ(現在でいうクラブ、キャバクラ)で働いている
  • 葉蔵の2歳上で、夫は服役中という訳ありの身
  • 侘しい雰囲気を漂わせ、店でも孤立している
  • 葉蔵に誘われて鎌倉の海で心中。葉蔵だけが助かってしまう。
■シヅ子(28歳)

  • 雑誌の記者でシングルマザー(5歳の娘「シゲ子」)
  • 山梨出身で、高円寺のアパート住まい
  • シゲ子に書いた漫画がきっかけで、葉蔵に子供向けの連載の仕事を与える
  • 細身でスラリとした容姿
  • 本当の一家のように上手く暮らしていたが、葉蔵は酒に溺れてシヅ子の服を質屋に入れるように。葉蔵は罪悪感に苛まれて家を出る。
■ヨシ子(18歳※出会った時点)

  • 葉蔵が転がり込んだ京橋のバーの向かい、タバコ屋の娘
  • 色白で八重歯がかわいい
  • 男性経験の無い純真無垢な女性
  • 人を信じることに関しては天賦の才能を持つ
  • 葉蔵の内縁の妻となり、彼に希望を持たせる

簡単なあらすじ(要約)

生きることへの恐怖
(「第一の手記」 – 葉蔵の小学校時代まで)

「恥の多い生涯を送ってきました」

 この有名な文章で始まる、主人公葉蔵の半生を振り返る形で、物語は始まります。葉蔵はかなり裕福な家で育ち、何不自由なく暮らしています。そのために、当たり前のものがなぜ当たり前なのか、彼にはわからなくなってしまいます。例えば、彼は「空腹」を実感したことがありません。

  • 「なぜ人間は飯を食うのか?」
  • 「なぜ人は食うために必死になるのか?」
  • 「空腹は恐怖から目をそらすためのものでは?」
  • 「空腹の奥に本当の恐怖があるのでは?」 

 普通の感覚がわからない葉蔵は、人間が最大の恐怖になってしまいます。そして、他人に対する最大の求愛として、「道化(ひょうきん者)」を演じることに決めました。

道化として生きる
(「第二の手記」 – 中学~大学、ツネ子との心中まで)

 道化の天才である葉蔵は、クラスでも人気者となります。しかし、中学で出会った竹一は、唯一葉蔵の道化を見破ります。貧弱で目立たない人物に見破られたことに恐怖を感じ、葉蔵は竹一に懐柔していくことに決めます。そんな竹一は、葉蔵に意味ありげなセリフを呟き、後になって葉蔵の人生を左右することになります。

 東京の大学に進んだ葉蔵は、程なくして絵画のアトリエにて美大出身の6歳上の遊び人である堀木と出会います。堀木はおしゃべりで明るく、葉蔵の代わりに「道化」を演じてくれます。また、堀木は酒や女遊びを教え、彼が教えた共産主義の集会に葉蔵は居心地の良さを感じ、入り浸るようになりました。

 そんな折り、父親の死がきっかけで金欠に至った葉蔵は、夜の街で水商売をしている訳ありのツネ子と出会います。悲しみを背負うツネ子に、急な環境の変化から逃れたかった葉蔵は、心中をもちかけて海に飛びこみます。しかし、葉蔵だけ生き残ってしまうのでした。

かすかな希望と壊れる幸せ。人間失格。
(「第三の手記」「あとがき」 – 何人もの女との出会い)

 その後の葉蔵は、何人もの女性と出会っては、堕落と逃亡の生活を送っていきます。ある女性がきっかけで漫画作家としての仕事を手にし、それで食いつないでいく日々でした。その中には、葉蔵へ希望の光を与える女性が何人かいました。連れ子とともに幸せな日常も手に入れました。しかし、葉蔵はその度酒に溺れ、家の金に手を付け、堕落し、女性の元を去っていきます。

 そんな中、葉蔵はついにささやかな幸せとも言える生活を手にします。純真無垢で自分を信頼してくれるヨシ子との生活です。しかし、事あるごとに葉蔵の元へ訪れる堀木がきっかけで、ささやかな幸せは破壊されてしまいます。ヨシ子は葉蔵の仕事仲間に犯されてしまい、精神的にやつれてしまいます。葉蔵も再び酒に手を出し、服薬自殺をしてしまいます。

 一命をとりとめた後も、葉蔵は麻薬中毒に陥り、精神病院に入れられてしまいます。最後は故郷のボロ屋敷での生活となり、そこで葉蔵は何かを悟るのでした。

「人間失格」
「ただ、いっさいは過ぎていきます」

太宰治

Posted by hirofumi