『News Of The World(世界に捧ぐ)』QUEEN(クイーン)レビュー[解説感想,評価,名曲]

News Of The World(世界に捧ぐ)』(1977年)
タイトル通りの世界的アンセム完成!
★★名盤★★

世界に捧ぐ

『News Of The World(世界に捧ぐ)』 – もくじ

  • アルバムレビュー・解説
    • パンクの批判の対象となったクイーン
    • 無駄をそぎ落としたサウンドで対抗
    • アメリカ市場を制覇。「オペラ座の夜」を超えるヒット。
    • ロジャーとジョンの貢献度
    • アメリカを意識した多才な楽曲群
  • 収録曲/動画で試聴
  • 各曲解説・感想(全曲解説)
    1. ウィ・ウィル・ロック・ユー(We Will Rock You)[May]
    2. 伝説のチャンピオン(We Are the Champions)[Mercury]
    3. シアー・ハート・アタック(Sheer Heart Attack)[Taylor]
    4. All Dead, All Dead[May]
    5. 永遠の翼(Spread Your Wings)[Deacon]
    6. Fight from the Inside[Taylor]
    7. Get Down, Make Love[Mercury]
    8. Sleeping on the Sidewalk[May]
    9. Who Needs You[Deacon]
    10. イッツ・レイト(It’s Late)[May]
    11. My Melancholy Blues[Mercury]

アルバムレビュー・解説

パンクの批判の対象となったクイーン

 1977年、世界はパンクムーブメントの真っただ中にあった。クイーンはローリングストーンズ、ピンクフロイドらと共に批判の槍玉へと挙げられた。ストーンズは『女たち』で大人の対応を見せ、ピンクフロイドは『ザ・ウォール』によってより難解なコンセプトアルバムという回答を示してみせた。そしてクイーンである。

 奇しくも、パンクの象徴となったピストルズの『勝手にしやがれ!!』と同月の発表である。レコーディングの最中にはシド・ヴィシャスがスタジオに乗り込み、フレディーと口論になったり、ジョニー・ロットンがセッションに忍び込んでいたずらをしたなど、有名なエピソードもある(『全曲解説シリーズ クイーン』マーティン・パワー(2006)株式会社シンコーミュージックエンタテイメント,初版,p.88)。

無駄をそぎ落としたサウンドで対抗

 さて、クイーンはある意味で真っ向からパンクにぶつかっていった。それまでの曲調から180度向きを変え、無駄をそぎ落とした力強い楽曲で「目にもの見せてやる」「俺たちが勝者だ」と高らかに叫んで見せた。やや大げさとも言えるそれらのメッセージは見事にアメリカ市場で歓迎を受け、世界的なアンセムと言える楽曲となり、半世紀が経とうとしている現在でも愛され続けている。アルバム冒頭の2曲「ウィ・ウィル・ロック・ユー」「ウィ・アー・ザ・チャンピオン」である。

アメリカ市場を制覇。「オペラ座の夜」を超えるヒット。

 チャート順位こそ1位を飾れなかったものの、すぐさまアメリカのスポーツ界を中心にロック・アンセムとして受け入れられた。アルバムも同じくチャートでは英米で1位を獲得できなかったものの、アメリカでのゆるぎない地位を獲得し、世界的にももはや疑いようのないビッグバンドとなった。結果、売上枚数では『オペラ座の夜』の記録を更新した。

 現在でもアメリカでクイーンの最高傑作のアンケートをとると、オペラ座と並んで、時には蹴落として、ランキングの1位を飾るアルバムである。一方でイギリスでの評価はピストルズの存在もあってアメリカほどではないが、それでも楽曲の衝撃はすさまじかった。

ロジャーとジョンの貢献度

 今作ではロジャー・テイラーとジョン・ディーコンの貢献度がますます高まり、クレジットは「メイ:マーキュリー:テイラー:ディーコン=4:3:2:2」となっている。ほぼ均等に作曲され、あたかも晩年のビートルズのようである。

 また、全てのメンバーが文句なしの名曲を提供(「メイ/ウィ・ウィル・ロック・ユー」「マーキュリー/ウィ・アー・ザ・チャンピオン」「ディーコン/永遠の翼」「テイラー/シアー・ハート・アタック」)しており、もはやメインソングライターのいない万能バンドとなった。その副作用として、メンバーの対立も目立つようになってきたようだが、それを補って余りあるクオリティである。はっきり言ってそんなことなど問題にならなかった。とりわけ4人の名曲が並ぶアルバム前半の流れはキャリアを通してもベストと言っていいだろう。

アメリカを意識した多才な楽曲群

 冒頭2曲のイメージが強いが、アルバムは曲のバリエーションがかなり豊富である。お得意のハードロックに加えて、パンク、ファンク、ジャズを取り入れており、アメリカ市場への意識からか、レッド・ツェッペリン、ディープパープル、エアロスミス、ポールマッカートニーといったアーティストへのリスペクトを感じる楽曲も目立つ。

収録曲/動画で試聴

【収録曲】
  1. ウィ・ウィル・ロック・ユー(We Will Rock You)[May]2:01
  2. 伝説のチャンピオン(We Are the Champions)[Mercury]2:59
  3. シアー・ハート・アタック(Sheer Heart Attack)[Taylor]3:24
  4. All Dead, All Dead[May]3:09
  5. 永遠の翼(Spread Your Wings)[Deacon]4:32
  6. Fight from the Inside[Taylor]3:03
  7. Get Down, Make Love[Mercury]3:51
  8. Sleeping on the Sidewalk[May]3:07
  9. Who Needs You[Deacon]3:07
  10. イッツ・レイト(It’s Late)[May]6:27
  11. My Melancholy Blues[Mercury]3:29
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各曲解説・感想(全曲解説)

1. ウィ・ウィル・ロック・ユー(We Will Rock You)[May]

 説明不要のキャリア中期のクイーンを代表する曲。ドラムに聞こえる(手拍子・足拍子)とコーラス・ボーカルと、終盤のギターソロというシンプル・イズ・ベストの構成。これまでのクイーンには考えられなかった楽曲であり、新たな時代の幕開けを感じさせる。足拍子はメンバー全員で木の板を踏みつけつつ手拍子をとるといった方法で録音。何から何まで常識を覆す曲である。そして高揚感を煽る歌詞。この曲が人々の心を捉えないわけがない。とりわけアメリカ人にはたまらないだろう。歌詞が結構面白いので、解説をしていく。

【歌詞翻訳・解説】

Buddy you’re a boy make a big noise
騒ぎ立てる少年、お前のことだ
Playin’ in the street gonna be a big man some day
今は街をぶらついているが、いつの日か大物になるだろう
You got mud on yo’ face
顔に泥をつけて
You big disgrace
情けないったらありゃしない
Kickin’ your can all over the place
人の迷惑など無視して好き放題
Singin’
歌ってやがる

We will we will rock you
目にもの見せてやる
We will we will rock you
世界をひっくり返してやる

 

Buddy you’re an old man poor man
みすぼらしい老人、お前のことだ
Pleadin’ with your eyes gonna make
嘆き訴えるその目
You some peace some day
平穏な暮らしを夢見る
You got mud on your face
顔に泥をつけて
Big disgrace
恥辱にまみれ
Somebody betta put you back into your place
慈悲深き人が、あんたを土に返すだろう

 上に抜粋したのは一番と三番のメロディーとサビだが、一番はわかりやすい。三番はなかなかひねくれている。血気盛んな若者は野心を夢見る一方、老いた老人は平穏な暮らしを夢見る。これはまあ、老いてみすぼらしくなって、若かったころを思い出したり、若返りを夢見ているということだろう。

 この歌は戦いとか挑戦といったテーマがある。それを加味すると、老人はやはり死という大きな壁を前にしている。そこからの挑戦となれば、やはり死の超越だ。若返ることはできないが、土に変えればまた新たな生を受ける。今は老いてしまったが、いつかまた新たな命としてこの世に帰って来るぞ、というわけだ。

 この曲はチャート1位こそ獲得しなかったものの、とりわけアメリカではかなり好意的に受け入れられ、アメフトを中心にスポーツ界でアンセムとなり、今では世界中のあらゆるスポーツで使用されている。

 この曲はあまりに定番となりすぎているが、本当にすごい曲だと思う。無駄を限界まで省いた上で単純なリズムと歌でこれだけ人の心を揺さぶる。それでいて、クイーンの良さもしっかり出ている。フレディーの歌唱力、重厚なコーラスワーク、メイの独特の音色のギター。「We will Rock You」というフレーズが全てを物語る。

 こんな曲をアルバムの冒頭でいきなり聞かされたら、気絶してしまう。そういうアルバムだ。

2. 伝説のチャンピオン(We Are the Champions)[Mercury]

 さて、ウィーウィルロックユーの右ストレートを浴びて朦朧としているところに、感情を内に秘めたようなピアノとボーカルで曲が始まる。やがて感情が溢れだし、サボの直前で最高潮を迎える。サビでは転調が起こり、パワーバラードの様相を呈する。まさに、戦いに勝った勝者をつつむ、高揚感と安堵の入り混じった楽曲である。ブライアンメイの「ウィ・ウィル・ロック・ユー」と対をなす、フレディー流のアンセムである。

【歌詞翻訳・解説】

I’ve paid my dues
償いつづけ
Time after time
来る日も来る日も
I’ve done my sentence. But committed no crime
罪を犯さず、罰は受けた
And bad mistakes – I’ve made a few
時には大きな間違いを犯し
I’ve had my share of sand kicked in my face
砂を噛むような屈辱にも向き合ってきた
But I’ve come through
だが俺は乗り越えてきた

We are the champions, my friends,
俺たちはチャンピオンだ、友よ
And we’ll keep on fighting ‘til the end
そして最後まで戦い続けるだろう
We are the champions
俺たちは勝ったんだ
We are the champions
我こそは勝者なり
No time for losers
弱きものは去れ
‘Cause we are the champions of the world
俺たちは今、世界の頂点に立ったんだ

 まさにこれはクイーンのキャリアを歌った曲である。デビューでは時代遅れとこき下ろされ、イギリス国内ではメディアの厳しい批判にさらされた。『オペラ座の夜』でついに英米で頂点に立ったが、隙あらば難癖をつけてくる奴がいる。『華麗なるレース』の素晴らしいクオリティをもってしても。

 さらに、パンクブームの標的にされ「時代遅れ」「商業主義」とけなされる。しかしクイーンは常に名作を作りつづけ、シーンの最前線で表現を続けて来た。そしてこのアルバムで、この曲で、高らかに勝利を宣言しているのだ。「俺たちは勝ったんだ。世界の頂点に立ったんだ」。その言葉は嘘でなく、このアルバムによって、冒頭の2曲によって、クイーンは世界のスポーツアンセムを完成させたのだ。

I’ve taken my bows
拍手喝さいに感謝する
And my curtain calls
カーテンコールにも応えた
You brought me fame and fortune
and everything that goes with it
富と名声を与えてくれた、すべての人々よ
I thank you all
礼を言おう
But it’s been no bed of roses,
だが、楽な道のりじゃなかった
No pleasure cruise
快楽とは程遠い旅であった
I consider it a challenge before the whole human race
全人類に課せられた挑戦だと思っている
And I ain’t gonna lose
もちろん、負けるつもりはない

 大言雑言とはこのことである。全人類とはよくぞ言い切ったものである。メンバーも当初はこの大げさな歌詞に大笑いしたと言う(『全曲解説シリーズ クイーン』マーティン・パワー(2006)株式会社シンコーミュージックエンタテイメント,初版,p.92)。しかし、この曲に書いてあることを、概ねクイーンは達成してしまった。スポーツに限らずあらゆる分野でこの曲はアンセムとなり、それは半世紀が経とうかと言う現在にまで至る。まさに全人類に課せられた挑戦に向けた、素晴らしい楽曲ではないか!(興奮)。

 そういうわけで、冒頭の2曲はあまりに有名すぎて軽視されがちだが、もっと褒めるべきである。この2曲を聞くだけでも価値あるアルバムだ。

3. シアー・ハート・アタック(Sheer Heart Attack)[Taylor]

 シンプルで単調な、スピード感あふれるギターリフとオーソドックスなドラミングが引っ張る曲は、あえてパンクの要素を取り入れた、パンクブームに真正面からぶつかるハードロックナンバーである。

Well you’re just 17 and all you want to do is disappear
17歳の少年よ、どこかへ消えてしまいたいだけだろう
You know what I mean there’s a lot of space between your ears
わかるか、お前の両耳の間は空っぽってことが
The way that you touch don’t feel no nothin’
お前がどうやったって、何とも思わないね

 同名のアルバム『シアー・ハート・アタック』の制作時にすでに原型ができていた曲は、リードボーカル、ベース、リズムギターをロジャーが一人でこなす(『世界に捧ぐ』クイーン(2001)EMIジャパン,ライナーノーツ,吉田俊宏より)。アルバム中でもっともハードなナンバーであり、ベストの1曲にあげてもいいくらいだ。

4. All Dead, All Dead[May]

 リズム主導の静かなナンバーは、後半に壮大なギター・オーケストラを挟む。メイのリードボーカルも曲調にマッチし、ビッグナンバーが続いたアルバム前半で、非常に良いアクセントをもたらしている。名曲である。

5. 永遠の翼(Spread Your Wings)[Deacon]

 このアルバムの前半の畳みかけるような構成は本当にすごい。5曲目はスタンダードなロック・バラードであり、これまでのクイーンにはなかった曲調をジョン・ディーコンが提供している。彼のポップセンスは素晴らしく、この曲をもってアルバムに奥行きを与えている。

6. Fight from the Inside[Taylor]

 ファンク・ロック的要素をもったロジャーの楽曲(『全曲解説シリーズ クイーン』マーティン・パワー(2006)株式会社シンコーミュージックエンタテイメント,初版,p.95)。本作におけるロジャーの楽曲はいずれもハードで攻撃的な歌詞。どうしても当時のパンクに対する激しい対抗心を感じてしまう。そして、それが見事な破壊力を持っている。

 あるばむ後半の幕開けとしてこれ以上無い。冒頭の2曲のインパクトに負けず劣らず、素晴らしい働きをしている。

7. Get Down, Make Love[Mercury]

 ジョンディーコンのベースから始まる曲は、全編に渡って彼のベースとピアノの掛け合いが効果的に働く。ベビーで重く、独特のテンポを刻むリズム展開は、レッド・ツェッペリンを想起させる。終盤で聞こえるロジャーのギターによる独特の効果音は、後のキャリアで解禁するシンセを想起させる。

8. Sleeping on the Sidewalk[May]

 ブライアン・メイのブルース・ロックナンバー。スタンダードな楽曲であり、ディープ・パープルを彷彿とさせるメロディーラインが印象的だ。メイとリッチ―ブラックモアは友人であり、70年代の彼らの曲調をそっくりそのまま借りて来たようで、非常に興味深い。

 レコーディングは短時間で終わったこの曲。メンバーはテープが回っているのを知らずに演奏、一発撮りで完成した(『世界に捧ぐ』クイーン(2001)EMIジャパン,ライナーノーツ,吉田俊宏より)。次の曲と続いてリラックスしたナンバー。

9. Who Needs You[Deacon]

  ジョンディーコンの2曲目。サルサのような曲調であり、メロディーラインなどを見ると、ポールマッカートニーの名作『ラム』(1971)の1曲目「Too Many People」を思い出す。フレディーの歌い方(ファルセットや鼻歌)もなんとなくポールを想起させる。というか、もはやポールへのリスペクトを感じる。

10. イッツ・レイト(It’s Late)[May]

 こちらもハードロックナンバーだが、大作である。スウィングのリズムを取り入れた楽曲は、どこかエアロスミスを想起させる。このアルバムは実に様々な、アメリカで成功したアーティストの要素を散りばめていると思う。アルバム終盤でポイントとなる作品。ラストでは素晴らしいドラムソロが聞ける。

11. My Melancholy Blues[Mercury]

 クイーンではおそらく初めてのストレートなジャズナンバー。フレディのピアノ弾き語りが全てであり、彼のルーツやセンスが素晴らしく光る。これをアルバムのラストに持ってきたのは、はっきり言って文句なし。これ以外の終わり方はないだろう。ボヘミアンラプソディみたいな曲を持ってきたらはっきり言って台無しである。というのも、本作は、アメリカ市場を狙ったアルバムであり、黒人のルーツであるジャズで終わるというのはつまりそういうことなのだ。