「走れメロス」(太宰治)のあらすじ(要約)[考察(解説),感想]

2017年10月25日

古代ギリシャを舞台に、男の友情を描いた名作

走れメロス (新潮文庫)

走れメロス (新潮文庫)

もくじ

  • 太宰治「走れメロス」 – あらすじ
    • 「走れメロス」の背景
    • 暴君が支配する町と激怒するメロス
    • 家族と友人のために走るメロス
    • 暴君を動かした熱い友情
  • 考察(解説)
  • 感想
  • 参考文献

 

太宰治「走れメロス」 – あらすじ

「走れメロス」の背景

  「走れメロス」は、1940年、太宰が31歳の時に発表された作品です。中期の作品にあたります。中期の作品は他に、「富嶽百景」「女生徒」などがあり、この頃は太宰の私生活も安定していたこともあり、明るく健康的な作品が目立ちます。中でもこの「走れメロス」は、信頼、友情、正義などを描いています。そのためか、教科書にも採用されるなど、知名度も非常に高いです。

暴君が支配する町と激怒するメロス

 走れメロスについては、時代は古代ギリシャ、舞台は現在のイタリアのシチリア島となっています。メロスは都から離れた村で、羊を飼って暮らしています。メロスは(おそらく)20代の若者で、親も女房もなく、16歳の妹と二人暮しです。

 妹は結婚を控えており、メロスはご馳走や衣装を買いに、シクラスという市へやってきます。しかしシクラス市の妙にもの寂しい雰囲気に違和感を受け、住人を捕まえて訳を尋ねます。すると、王であるディオニスが、人を殺すと言います。王は人が信じられず、息子も妹も大臣も、果てには皇后まで殺したそうです。そして今でも臣下の者を疑い、彼らから人質をとっておき、命令に背くと殺すと言います。

 これに激怒したメロスは、一人城に入っていき、間もなく警備の者に取り押さえられます。そして、たまたま携帯していた短剣が見つかって大騒ぎになり、すぐさま処刑されることになります。しかしメロスは結婚式があるので、三日だけの猶予を請います。そして、人質として、シクラスにいた友人である石工のセリヌンティウスを差し出します。もし三日たって帰らなかったら、彼を殺していいというわけです。そんなメロスに、王は「遅れてきたら人質を殺すが、お前は許してやろう」などとそそのかします。

家族と友人のために走るメロス

  メロスはすぐさまシクラスを後にし、村まで休みなく走り続けます。日没後に市を出て、翌日の昼前にようやく村に着きました。そして妹に結婚式は明日にしろと言い、そのまま眠ってしまいます。夜に目を覚ましてからは、急な話に戸惑うお婿さんを朝までかかって何とか説得し、そのまま昼に式を挙げます。式の途中で雨が降り始め、やがて大雨になりますが、式は大いに盛り上がり、メロスはこのまま村人たちとずっと暮らしていきたい、と思います。しかし彼は途中で宴会を抜け、羊小屋で一眠りし、夜明け前に村を出ます。

 メロスはこの日の日没までに、シクラスへ帰らねばなりません。途中、反乱した川を命からがら乗り越え、山賊と戦い、メロスはどんどん進んでいきます。しかし、午後になって激しく照りつける太陽に、メロスの足は止まってしまいます。立ち上がることすらできないほど消耗したメロスは、「よく頑張った」「もういい」と諦めてしまいます。そのうち、「裏切るつもりはなかった」「このまま村で暮らすのも悪く無い」などと考え、果てには何もかもどうでもよくなり、メロスはその場に倒れこんでしまいます。

暴君を動かした熱い友情

 しかし、耳元で聞こえた水の音に目を覚まし、湧き水を口に含んでメロスは復活し、メロスはものすごい勢いで走っていきます。道行く人の噂話もかまわず、全裸になって、血を吐きながらメロスは走ります。やがて、夕日を受けて光るシクラスの塔が見えたところで、セリヌンティウスの弟子に出会います。弟子はもう間に合わないと言いますが、メロスは構わず走ります。そしてギリギリのところで間に合い、そのまま死刑場へと入って行きます。喉が潰れて声が出ないメロスは、そのまま、はりつけにされかかっていたセリヌンティウスの足に抱きつきます。そんなメロスに、セリヌンティウスは「一度だけ君を疑った」と言い、殴れと言います。この光景にさすがの王も心打たれ、「仲間に入れてくれ」と言うのでした。

考察(解説)

  作中に出てくるシクラスは、古代ギリシャの都市「シクラサ」からきています。現在で言う、イタリア南部のシチリア島にあるこの都市は、紀元前4世紀、作中にディオニス王として登場する「ディオニュシオス1世」の時代に繁栄します。当時はシチリア島全土を支配していたそうです。

 また、作品のエピソードは太宰の実生活での体験からきているようです。

おわりに(感想)

 始めから終わりまで、物語の王道とも言える展開を持つ作品で、ひねりや癖のある太宰の作品を期待して読むと、拍子抜けするかもしれません。ただ、その分、物語には隙がありません。人物の設定、展開、描写など、すべてに無駄がないと感じました。このような王道の物語を書くことの方が、実は難しいことなのかもしれません。

A24 地球の歩き方 ギリシアとエーゲ海の島々 2015

参考文献

太宰治

Posted by hirofumi