「入門 考える技術・書く技術」のレビュー(文章の書き方/ロジカルシンキング)

 ビジネスから大学のレポートや作文まで使える、読み手に伝わる文章術!

   この本は、コンサルティング企業でライティングのコースを担当していたバーバラ・ミントという人物が書いた「考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則」の入門編です。原著の翻訳を担当した方が、その内容を噛み砕き、よりわかりやすくまとめた本となっています。

 ビジネスマン向けの「報告書」「提案書」などを想定していますが、入門編ということで、いろいろな文章を書く際に役立ちます。ビジネスの文章は何より「相手に伝えること」「相手に納得してもらうこと」が重要です。したがって、無駄なく相手に伝わりやすい文章を書くためには、ぴったりの本となっています。

 また、文章を書く際に、目的と問題点をしっかり把握する方法についても書いてあります。論理的に考えて文章を書くということで、ロジカルシンキングの基礎についても学ぶことができます。

もくじ

 

「OPQ分析」で読み手の疑問に答える

OPQ分析で読み手の目的・問題・疑問を分析する

 読み手を想定して文章を書く際には、読み手の抱える問題や疑問を把握する必要があります。そこで役に立つのが「OPQ分析」です。読み手はまず目的を持っています。例えば「小説を書きたい」という目的があったとしましょう。目的を持っているということは、現時点では目的を達成するにあたって問題を抱えているはずです。例えば「書き方がわからない」といった問題です。そして、問題を解決するにあたって、読み手が自然と持つであろう疑問があります。ここでは「小説の基礎を学ぶには?」としましょう。

  • OPQ分析
    • Objective…… 目的:「小説を書きたい」
    • Problem …… 問題:「書き方がわからない」
    • Question …… 疑問:「小説の基礎を学ぶには?」
    • Answer  …… 回答:「ハウツー本と小説を読んで基礎技術・知識を確認する」⇒文章のメッセージ(結論)
      メッセージは具体的に、何をすればいいか示す

  ここまでがOPQ分析の中心です。読み手を想定して、目的・問題・疑問を分析します。これをしっかり行うと、文章の中で伝えるべきメッセージがしっかり見えてきます。そのメッセージとは、疑問に対する回答になります。例えばここでは「小説のハウツー本と小説を読む」としましょう。

伝えるべきメッセージが決まったら、根拠を用意する

 メッセージが決まったら、その根拠を用意します。

  • 「ハウツー本と小説を読んで基礎知識・技術を確認する」
    • 根拠1……ハウツー本は基礎知識・技術が学べる
    • 根拠2……小説はプロが書いたお手本である
    • 根拠3……基礎技術・知識を小説の中で確認できる

 根拠は当然ながらメッセージに説得力を持たせる物を選びます。ただ、根拠を探す中でより良いメッセージが思いついたら、その都度メッセージに修正を加えていってかまいません。これを繰り返すことで、より良いメッセージが見つかります。

メッセージ(結論)を最初に書いて文章をわかりやすく

OPQ分析を導入部分にし、メッセージ(結論)と根拠を最初に書く

  •  例文(導入~冒頭)

     小説が好きな方は、一度は自分で小説を書いてみたいOと思ったことがあるでしょう。しかし、そこで問題となるのは「どのように書けばいいか」P。ということです。小説に限らず、何かを始める際には基礎を学ぶことが大切です。では、小説の基礎を学ぶ方法は何があるでしょうかQ

     ここでおすすめしたいのは、小説のハウツー本を読んで基礎を学び、その上で小説をじっくり読んでみることメッセージです。その理由は3つあります。まず、ハウツー本は基礎知識・技術が学べます根拠1。次に、小説はプロが書いたお手本だから根拠2です。最後に、ハウツー本で得た基礎技術・知識を小説の中で確認できます根拠3

 

 日本語の文章では、説明を長々とした上で、最後にようやく結論を持ってくることが多いです。文章の流れとしては美しいですが、相手に伝わるかどうかは別です。その点、最初に結論と根拠を簡潔に示せば、読み手にとっては知りたい情報がすぐにわかりますし、その先の文章で何が説明されるのかあらかじめ確認できます

根拠について順番に説明していく

  • 例文(根拠の説明)

     ハウツー本では、小説を書くにあたっての基礎知識・技術が学べます根拠1ハウツー本の多くはプロの作家が書いています。そのために、その内容には説得力があります。また、その内容は必ず知っておくべき基礎知識の部分と、読者を楽しませるための技術の部分に分かれています。

     次に、小説を読むことも重要です。小説はプロが書いたお手本になります根拠2そもそもの目的である「小説を書くこと」が1つの形となっているので、生きた教材として活用できます。また、出版されている本は作家と編集者によって何度も内容がチェックされています。そのために、一定のレベルが保たれています。

     最後に、ハウツー本で得た基礎知識・技術を小説の中で確認根拠3できます。知識や技術が実際の作品の中でどのように使われているかを確認することができます。

論理的な考えをするために役立つ方法

個別の事例から結論を導く「帰納法」

 例えば、ある問題に対して「Aをすべき」という解決方法を勧めるとします。その際、「A」が問題解決に役立つことを説明しなければなりません。そのためには、Aのメリットを挙げていきます。

  • Aをすべき(根拠をあげる)
    • Aのメリット①
    • Aのメリット②
    • Aのメリット③

 他にも具体的な話を例に、帰納法を見ていきます。

  • 近年の日本の教育では、英語が重要視されてきている(同じ種類の考えに注目する)
    • 2011年に小学校で英語が必修化された
    • 有名企業では、TOEICスコアを採用基準の1つにしている
    • 2006年にセンター試験で英語のリスニングが開始された

 日本の教育のうち、「英語」に注目して根拠があげられています。

 記事の前半で書いた小説の文章も、「基礎知識・技術」に注目しているので、帰納法になります。

一般的に正しいとされる前提から結論を導く「演繹法」

  • 例1
    • 「人間は生物だ」(前提1)
    • 「生物はやがて死ぬ」(前提2)
    • ⇒「人間はやがて死ぬ」(結論)

 前提が間違いなく正しいので、結論も正しいものが導けるのが演繹法です。これを小説の話にしてみると、次のようになります。

  • 例2
    • 「小説の基礎知識・技術はプロが知っている」(前提1)
    • 「プロの知識・技術はハウツー本や小説に書かれている」(前提2)
    • ⇒「小説の基礎知識・技術を知るためにはハウツー本と小説を読むべき」(結論)

  当たり前のことを言っているようですが、ここで重要なのは前提が本当に正しいかどうかです。ある結論を導き出した際に、前提が本当に正しいか、例外はないか確認するのに役立ちます。

  • 間違いの例
    • 「哺乳類には人間や犬がいる」(前提1)
    • 「人間や犬には毛が生えている」(前提2)
    • ⇒「哺乳類には毛が生えている」(結論)

  一見正しいように見えますが、イルカなど毛のない哺乳類もいます。前提1が不十分なために結論が間違っているのです。この考えで行くと、例2の小説の文章ももう少し前提を工夫する必要があります。基礎が出来ていなくても、有名な芸能人が書いたというだけで売れている小説もあり、そこからは基礎知識・技術が必ず得られるわけではありません。