桑田真澄氏の修士論文の要旨(「新・野球を学問する」レビュー・感想)

公開日: : 最終更新日:2014/08/12 野球の本

桑田真澄氏の大学院の研究成果と修士論文
「『野球道』の再定義による日本野球界のさらなる発展策に関する研究」

新・野球を学問する (新潮文庫)

新・野球を学問する (新潮文庫)

 もくじ

 

早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士課程への入学

早稲田大学独自の「大卒認定」を受け、入試資格を得る

 早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士課程は2006年に開設、トップスポーツマネジメントコースでは、プロスポーツ経験がある方などに特別に入学を認めているそうです。

①トップレベル(日本代表等)の実績を3年以上有するスポーツ選手。
②スポーツビジネス関連企業、一般企業、スポーツ団体、プロスポーツチーム、企業スポーツ
チーム等において、通算5年以上の実務経験を有する者。
③弁護士、公認会計士、税理士の資格を有する者。

(「2014年度早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士課程1年制(秋期・春期)入学試験要項―2.修士課程1年制の入学者に求められる要件」より引用)

 

  • 「スポーツの法と契約」「経済学」「経営と戦略」「統計学」「MBAエッセンシャル」「健康スポーツマネジメント特論」「スポーツクラブビジネス特論」などの授業を受ける

(参照:「修士課程1年制演習講義科目」)

 

  • 前期後期通して成績はほとんど「A+」を取得、2009年度のコース「総代」に選ばれる。
    ※総代は、在籍学生のうち平均点が最も高い人に与えられる(≒主席)。

 

日本の野球黎明期と飛田穂洲の「野球道」

戦時中の野球弾圧と、野球保護のための武士道精神

  • 「野球道」を知るために飛田穂洲(1886年~1965年)を研究

彼は1886年(明治19年)生まれで、早稲田大学に入学して野球部に入ります。1919年(大正8年)には総代野球部の監督に就任して、その後は野球記者として活躍します。西洋伝来のベースボールを「野球道」と日本的に解釈して、のちの野球界に大きな影響を与えることになる人物

(「新・野球を学問する (新潮文庫)」より)

 飛田穂洲が生まれたのは日本野球の黎明期。明治維新以降の日本は西洋化が進む一方で、日清戦争などを経て帝国主義国家となっていきます。そして、伝統的日本文化を見直す流れが生まれ、野球も武士道精神と結びつくようになったそうです。

(参照:「武士道―明治時代以降の武士道の解釈」)

 

  • 飛田穂洲の「野球道」
    「練習量の重視」②「絶対服従」③「精神の鍛錬」

 桑田さんは「野球道」を「練習量の重視」「精神の鍛錬」「絶対服従」としています。これには、当時の時代背景が関係しています。国内で野球が急速に人気を獲得したことに加えて、第二次世界大戦前後は敵国からきたスポーツということで、野球弾圧が起こります。そこで、飛田穂洲は、野球記者という立場から野球を擁護するため、「野球は兵士育成に役立つ」という理論を作り上げたそうです。
 ちなみに、日本初のプロリーグ「日本職業野球連盟」が1936年に発足するものの、1944年には一時休止。戦争を挟んで、現在のNPBへとつながっていきます。

(参照:「日本野球連盟」)

 

 

現役プロ野球選手270人へのアンケートと、桑田真澄氏による「野球道」の再定義

現代版「野球道」は「スポーツマンシップ」へ

  • 桑田真澄の「スポーツマンシップ」
    ①「練習の質の重視(サイエンス)」②「尊重(リスペクト)」③「心の調和(バランス)」
    • 練習の質の重視……効率的・合理的な練習、スポーツ医学など←プロ・アマ規制の緩和
    • 尊重……指導者・先輩の体罰やいじめ、対戦相手への野次を無くす
    • 心の調和……野球だけでなく勉強や遊びもバランスよく行い、精神を鍛錬する。自律心を育てる

 

新たな「野球道」を考えるに至った、プロ選手へのアンケート結果

  • 2009年シーズンオフ、6球団270人のプロ野球選手へアンケート調査を行う
  • プロ選手の高校時代の平均練習時間は、平日4.5時間、休日7.3時間。うち70人は9時間以上!

 桑田さんはもちろん、時間が長すぎると指摘。自分がPL学園にいた時も時も同じように長かったが、監督にかけあって練習時間を3時間にしてもらった。その後、PLの黄金時代が始まったそうです。

「9時間も集中できないから、短時間で集中して練習したい。さぼりたいのではなくて、その後に、自分がやりたい練習をするのはどうでしょうか」と話したんです。「たとえば、3時間で全体練習を終わって、ぼくはランニングをしたり、シャドーピッチングをする。清原君だったら、室内に行って打ち込みをするとか。体調が悪い人は休養にあてて、次に備えるとか。自分で考えて練習をするっていうことが、大事じゃないでしょうか」という話をしたんですよね。
(中略)
「桑田はPLでとてつもない練習量をこなしてきたからプロでも活躍できた」と思っている方もたくさんいると思うのですが、じつは高校時代から、ぼくは効率的で合理的な練習に取り組んでいたんですよ。

(「新・野球を学問する (新潮文庫)」より)

 

  • 練習時間中に喫煙していた指導者は約半数、選手の前で飲酒していた指導者も10%強!
  • 指導者・先輩からの体罰は約半数
  • 一方で、体罰を「必要」「時には必要」と思っている選手は8割を超える
  • 中高時代のオーバーワークによる怪我の経験は約半数、怪我を押してのプレーの強要も約3割
  • これらのアンケート結果から、飛田穂洲の「野球道」のうち、「練習量の重視」「絶対服従」は、練習時間やオーバーワーク、体罰など、現在まで引き継がれていたことがわかった。

 

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