「皇帝の使者」(フランツ・カフカ)のあらすじ・考察(解説)

2014年3月31日

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はじめに

 カフカの寓話や短編小説には、抽象的な作品が多いです。この作品も、「カフカ寓話集」に収められているものの一つです。そもそも、寓話というのは、例えば動物などの話を使って、教訓的な内容を表したものです。もう少し細かく言うと、本来表したい内容を、別の物事に託す形で表現した物語です。物語全体が一つの比喩だと思えばいいでしょう。 ( ※ちなみに、日本の昔話などにも寓話的な要素があります。特に寓話といえば、イソップ物語が有名なようです。アリとキリギリス、ウサギとカメなどは、いかにも教訓的な内容です) ですから、寓話集に収められている作品は、表面的にはどれも抽象的であり、その上で「裏の意味」「本当の意味」なるものを持っています。この「皇帝の使者」もまた同じです。

 

 

考察(解説)

 さて、いきなり結論から入りますが、この物語の「本当の意味」、物語を通じて表現したかったことは、「宗教、道徳、法律などといったものの、社会における状態」だと私は思います。物語の要約を簡単にしましょう。まず、死にかけの皇帝がいて、死の床において「君」へ向けて伝言を送るべく、使者を遣わしたというものです。 使者は強靭な肉体を持った者で、あっという間に「君」の元へとたどり着きます。しかし、実際にはそうはならず、使者は無限迷路とも言える宮殿の中をさまよっていて、何時まで経っても「君」のもとへはたどり着かないと言う話です。 ポイントとなるのは、皇帝とちっぽけな「君」という関係性と、宮殿や首都といった物の中をさまよい、何時まで経ってもたどり着かない使者です。さ らに、それでも使者を待っている「君」もポイントでしょう。古い作品であるため、話に登場する単語を少し変えつつ、説明していきましょう。 まず、皇帝というのは政治や武力におけるトップ、現在の日本で言えば首相がいいでしょう。彼の言葉というのは、その国のルールです。それくらいの力を持っています。実際、内閣が法案を提出し、国会で審議が行われて、法律はつくられていきます。ですから、伝言および使者は法律などと考えていいでしょう。 ちっぽけな君のような国民を思って、首相は国のルールを決めます。しかし、そのようなルールは、まず成立するまでに時間がかかり、実際に施行されるまでもまた時間がかかります。加えて、法律が施行されればすぐに効果が出るかと言えば、そうでもありません。そして、効果が発揮されても、結局は大して国民の役に立たないということもよくあります。この辺りが、使者がさまよっている部分にあたります。 そして、使者は何時まで経ってもやってこず、ついには皇帝が死んでしまいます。それでも使者を待ち続けているというのも、いかにも国民らしいでしょう。

おわりに(感想)

 このように、カフカの作品は一見するとわけがわかりませんが、じっくり考えていくと、本当の意味がわかってきます。また、ここで述べた考察はあくまで管理人の個人的な意見であり、人によって解釈の仕方は無限です。皇帝と君の関係性、使者の役割などが、ここで紹介した考察以外の何かに、ピッタリはまることもあるでしょう。そのような意味では、何度でも楽しめる、読むたびに発見がある物語だと言えます。

参考文献

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