『絆 冬は必ず春となる』(岩隈久志)のレビュー・感想

2017年11月3日

メジャー1年目の苦労と2年目の躍進、幼少時代からプロ入り後まで、岩隈選手を知る1冊!

絆 冬は必ず春となる

もくじ

『絆 冬は必ず春となる』のもくじ

 

内容説明

2013年MLBア・リーグ防御率3位、14勝の大活躍!メジャー最高峰の日本人右腕を支えた「希望」とは。メジャー挑戦の決断、世界で勝つための極意、そして東北復興への思い―。岩隈久志が全てを明かす!

目次

第1章 自分に勝てたから、メジャーリーグでも勝てた
ワールド・ベースボール・クラシックとメジャー挑戦
先発ローテーションとマイナー落ちのサバイバル ほか

第2章 世界最高峰の舞台で戦う
血マメに苦しみながら先発のマウンドに立ち続ける
ホームラン被弾の課題を乗り越える ほか

第3章 苦闘と栄光のジェットコースター
野球部の寮から脱走した高校生時代
二軍からスタートした無名のプロ野球選手 ほか

第4章 「絆」―勝利の原動力
勇気を与えてくれた家族の手作り絵本
「冬はかならず春となる」 ほか

第5章 「希望」―東北復興とこれからの岩隈久志
二〇一一年三月一一日東日本大震災
仙台で経験した東日本大震災 ほか

引用元:絆 / 岩隈 久志【著】 – 紀伊國屋書店ウェブストア

 

『絆 冬は必ず春となる』のおすすめポイント

メジャー挑戦のきっかけと、1年目の苦労

 岩隈選手は2007年頃からメジャーにあこがれを持ち始めており、2009年の第二回WBCでの活躍をきっかけに、メジャーでもやっていけるのではないかと考え始めたそうです。この辺の内容が第一章に書かれています。

 岩隈選手は1年目の2012年、中継ぎからのスタートでした。そして、好成績が認められて、後半からローテーション入りを果たします。結果9勝を挙げ(うち先発で8勝)、1年目としては十分な結果を残し、メジャーにも通用するというところを見せました。本の中で気になったところをいくつかあげていきましょう。

 

 

【スプリットの使い方】

 メジャーでは落ちる系の球はそれほど多用されませんし、日本と違ってあくまでストライクゾーンで勝負する習慣があります。これにひあ、100球制限など、少ない球数で投げ切る必要があるのも影響しています。そして、メジャーのキャッチャーはワンバウンドの捕球に慣れていません

 日本時代の岩隈選手は、キレのあるスプリットをワンバウンド気味に投げることが多かったので、それをメジャー用に変更する必要に迫られました。

そこで僕は、地面に着くかつかないかギリギリのところにスプリットを投げる練習をしました。その練習を見ていたピッチングコーチが、「それはいいボールだ」と言ってくれたのです。この一言で「あっ、メジャーではこの投げ方がいいのか」と自信を持ちました。

引用元:『絆 冬は必ず春となる 』(2014)岩隈久志,潮出版社,初版,p22

 

 

【配給・キャッチャーとのコミュニケーション】

 これもよく聞く話ですが、日本ではキャッチャーが配給を組み立てる一方で、メジャーではあくまでピッチャーが主役です。配給もピッチャーの意思が尊重されます。岩隈選手ははじめこれに気が付かず、キャッチャーまかせにして打ち込まれることもあったそうです。そこで、自分で配給を組み立てることを初めていったそうです。

マウンドの上で頭を回転させながら配給を選んでいきました。外側ばかりにボールを投げ続けるのではなく、外を投げた後は内側へ投げて変化をつける。高い球を投げたあとには、低い球を投げる。決め球は一番目がスプリット、二番目がスライダーという原則を決めました。

引用元:『絆 冬は必ず春となる 』(2014)岩隈久志,潮出版社,初版,p24

 

 また、キャッチャーとのコミュニケーションを積極的にとるようになったのも、成功の秘訣となっています。

「三振はあまり取らなくてもいいから、とにかく打ち取っていきたい。外を投げたあとは内側、高い球を投げたあとは低い球、というように変化をつけていきたい」とキャッチャーとのミーティングのときに自分が投げたい配給を事前に伝える。

 試合中にも「このへんでカーブを入れていこう」「緩い球を投げて相手を揺さぶっていこう」と伝えていきました。そうやって自分の意思を伝えていけば、キャッチャーも僕の配給の癖についてわかってくれるようになります。

引用元:『絆 冬は必ず春となる 』(2014)岩隈久志,潮出版社,初版,p26

 

2013年の大活躍と、ライバルの話

【球数をなるべく減らす】

 2013年は、岩隈選手にとって飛躍の年となりました。どうしても日本のメディアはダルビッシュ選手を取り上げてばかりでしたが、この年の活躍で野球ファンでない人への認知度も高まったように感じます。

  • 33試合(219回2/3),防御率2.66,14勝6敗,185奪三振
    ※サイヤング賞投票第三位

  この活躍の理由について、本人が語っているのは「打たせて取るピッチング」「省エネピッチング」です。

 一三年の僕の投球を分析すると、打者一人あたりの平均球数は三・五八球だそうです。一イニングあたりの球数は一四・一球と、メジャーリーグで最も少ないと聞きました。低めの制球によってなるべく打たせて取り、フォアボールはなるべく出さないように心がけています。

「バッターはここで振るだろうな」というタイミングで良いボールを投げれば、少ない球数でバッターを打ち取ることができるわけです。

引用元:『絆 冬は必ず春となる 』(2014)岩隈久志,潮出版社,初版,pp.47-48

 

 

【フォーシームとツーシームの使い分け】

「フロントドア」を二球連続で見せたあと、次に落ちるボールを投げる。最後は高めのフォーシームを決め球として一気に投げこむ。いくつもの作戦を頭の中で組み立てながら、バッターを打ち取っていきます。

 高めのボール球をねらってフォーシームを投げれば、バッターがスイングしたときにファールになりがちです。ストライクのカウントを稼ぎたいときには、フォーシームをわざとボールのコースに投げます。打たせてゴロを取りたいときは、フォーシームではなくツーシームを選んだりもします。

引用元:『絆 冬は必ず春となる 』(2014)岩隈久志,潮出版社,初版,p52

 

 フロントドアというのは、バッターの内角に投げる、ボールからストライクになる球のことです。岩隈選手の場合は、左バッターの内角に投げるツーシームということになります。

 このような投球術はメジャーではおなじみのもので、黒田選手はこのフロントドアをかなり高いレベルで使っています。

 

 

【ヘルナンデスとダルビッシュ】

 岩隈選手が本の中で何度か触れている選手に、マリナーズのエースのフェリックス・ヘルナンデスと、日本時代からライバル視しているダルビッシュ有選手がいます。この二人の一流選手には、大きな影響を受けているのがうかがえます。

三振の取り方にしても投球術にしても、ヘルナンデスはさすがにうまいのです。

不動の一番手であるヘルナンデスに、いかについていくか。チームの三番手ではなく、ヘルナンデスに次ぐ二番手としてついていくのが僕の当面の目標です。

一三年のシーズンが開幕したころ、「メジャーの一番手と二番手の中で良い状態なのはヘルナンデスと岩隈だ」「彼らはマリナーズのワンツーパンチだ」と紹介されたことがありました。とてもうれしい評価です。

引用元:『絆 冬は必ず春となる 』(2014)岩隈久志,潮出版社,初版,pp.67-68

 

 岩隈選手は他の選手のことは気にせず、黙々と投げているイメージがありますので、ヘルナンデスを意識しているという話は新鮮でした。岩隈選手に「さすがにうまい」「まずは二番手としてついていく」と言わせるあたり、実際に見るヘルナンデスのすごさは相当なものなのでしょう。

 イチロー選手の元チームメイトということもあって、日本人にはおなじみのヘルナンデス。むしろ彼はパワーで抑えるイメージがあったので、岩隈選手の話は意外なものでした。

 

幼少期からプロ入り、怪我と復活の21勝

 岩隈選手は小学校から野球を始め、高校は名門の堀越高校に進学します。しかし、中学時代は目立った成績は残せず、高校に入っても寮から抜け出したこともあるなど、決して順風満帆なものではなかったそうです。高校でも甲子園出場はかなわず、ドラフト5位で近鉄バファローズに入団します。

 2年目から出場機会を得て、3年目にはローテーション入り、4年目に15勝を上げ、一気にエースにまで上り詰めます。翌年も15勝をあげて最多勝と最高勝率のタイトルを獲得。この頃の活躍は誰もが知るところで、将来を渇望されるスター選手の一人でした。

 翌2005年に球団再編問題によってバファローズが消滅、岩隈選手は楽天へ入団することになります。そしてこの年の後半から、怪我との戦いが始まりました。そこから2年は不本意なシーズンが続き、岩隈選手も「もうダメだ」と諦めたこともあったそうです。この時期の話について、本の中で詳しく書かれています。悩みぬいた挙句、2007年オフに手術に踏み切り、これが後の復活、WBCでの活躍、メジャー挑戦につながっていきます。

 御存知の通り、2008年には楽天のエースとして21勝をあげ、岩隈選手は完全復活します。楽天では田中将大選手のお手本であり、ダブルエースとしてチームを支えます。

 

感想

 岩隈選手のメジャーでの試行錯誤、そして日本時代の怪我との戦いについて詳しく書いてあり、岩隈選手のキャリアをざっと振り返ることができます。特におすすめなのは、二章までのメジャーでの話です。活躍するためにどのような工夫をしてきたかが書いてあり、とても興味深い内容となっています。
 今年もすでに10勝をマーク(2014年8月13日現在)している岩隈選手、これからも素晴らしいキャリアを築いていくことを願っています!

 

【関連記事】

[article mode=”cat” id=”52″ numberposts=”5″ tail=”
“]