映画監督「北野武」のまとめ・年表[おすすめ作品,代表作]

2018年3月8日

原点回帰と国内市場・エンターテイメントへの挑戦
アウトレイジシリーズの誕生

アウトレイジ」(2010年6月12日公開)
どうやって殺すか?
生まれ変わった北野監督の原点回帰!

基本情報
【概要・見どころ】

 物語はシンプルで、関東一の巨大暴力団と、その傘下の複数の組、それからマル暴の刑事をからめたヤクザの権力争いというもの。巨大暴力団の山王会が、傘下の複数の組が争うように裏で手を引き、最後は良いとこ取りという構図。ビートたけし演じる主役の大友は、山王会の第三次組織の組長。上の組に嫌なことを押し付けられ、美味しいところはすべて持っていかれる。その大友の高校時代のボクシング部の後輩が刑事の片岡。彼は山王会ともパイプを持ち、ヤクザのいざこざをもみ消してては組から金を貰う。一癖も二癖もある狡猾なキャラクターに振り回された挙句、大友がブチ切れて(≒タイトルの「outrage」は和約で「憤慨」)山王会に喧嘩を売る。

 この映画の見どころは、北野監督もインタビューなどで語っていた「殺し方」「暴力描写」。人物をどうやって殺すか、いかにトリッキーな方法で痛めつけるか。実際に見てもらうとわかるけど、痛々しい描写が随所に見られ、所見では抵抗感を得るかもしれない。慣れてしまえば今度はその表現を楽しめるようになってくる。

 もう一つ、この作品は非常にスマート。まとまりがある。ストーリーはわかりやすくもビシッと締まっており、展開も早くてテンポがいい。作品全体の雰囲気は、同じく刑事とヤクザいざこざを描いたデビュー作「その男凶暴につき」に似ている。キャリアを経て、原点回帰をしたというのがピッタリな表現だ。

 さらに作品を面白くしているのは、個性あふれるキャラクター。椎根桔平、小日向文世、國村隼あたりが目立つが、一人として同じキャラはいない。ちょうど黒沢映画の七人の侍のように、しっかりと個性を描き分けている。こういう部分は、これまでの北野映画であまり見られなかった(そこをフィーチャーして描いた作品は無かった)と思う。このキャラクター主導の作風は、次作以降へと受け継がれていく。

『アウトレイジ』の解説

2011年

  • 3月11日……東日本大震災により、「アウトレイジビヨンド」がクランクイン直前で制作中断。
22012年
  • 4月……約1年遅れで「アウトレイジビヨンド」がクランクイン

アウトレイジビヨンド」(2012年10月6日公開)
「言葉の暴力」の追求!
初の続編で見せた新境地

基本情報
【概要・見どころ】

■警察と関西・関東のヤクザが、三つ巴の潰し合い!巨大組織のぶつかり合いを豪華キャストで描いた大作!

  • 世の中、絆、愛、支えとか、表面的なものばっかりでイライラした。こういう時こそヤクザ映画を撮ってやろうとやる気が起きた
    (ヴェネチア国際映画祭の記者会見にて)

 初の続編映画となった本作。前作の好評を受けて、国内市場とエンターテイメント性に狙いをつけた作品となっている。前作からは出演陣が倍増しさらに豪華に。これだけの人数を描き分けるのはなかなか大変そうだが、そこは俳優の演技力でしっかり形になっている。大物俳優がすぐ殺されたり、中堅の人気俳優がチョイ役で出てきたり。何とも贅沢な配役をしている。

 前作と比べてストーリーや構成は複雑化し、巨大組織の一筋縄ではいかない権力争いを存分に楽しめる。話の構図の中心にあるのは、東西の巨大暴力団組織の権力争いだ。そこに刑務所から出てきたビートたけし演じる大友と、彼を利用して巨大組織を潰そうとする刑事の片岡(小日向史世)が絡んでくる。決して自ら手を下さない西のボス、裏で手を引きすべての人間を利用しようとする刑事、わずかな隙を突かれて権力の座から転げ落ちる東のボス、もやもやした感情を抱えたまま着実に復讐を果たしていくムショ上がりの元組長。

 CMなどでも話題になったのが、関東弁と関西弁での罵りあいのシーン。あの辺は、エンターテイメント性が非常に高い演出となっている。各所で登場人物が怒鳴るのだが、そのセリフ回しも工夫されている。一言で印象に残るフレーズ、早口言葉みたいな罵声。芸人として舞台で客を沸かせた監督ならでは。

 前作のストーリーをうまい具合に拾って、世界観をさらに大きく、深くしている。そして、2017年には3作目が公開される。今作で描き切ったと思わせた世界を、次作でどのように展開させるのか楽しみで仕方ない。

『アウトレイジビヨンド』の解説

龍三と七人の子分たち」(2015年4月25日公開)
久しぶりのコメディ映画!
老若男女が楽しめる良質エンタメ!

  • 北野監督初「コメディ・ヤクザ映画」
  • 引退した元ヤクザのジジイがオレオレ詐欺にキレ、仲間を集めて組を再結成!

 元ヤクザのじいさんがオレオレ詐欺に引っかかるという、突拍子もない切り口から始まるこの映画。現役時代の組員を再結集させ、爺ばかりの組を復活。現代風のインテリヤクザと抗争を始める。タイトルは七人の侍からとっており、個性のあるキャラクターで楽しませるコメディとなっている。

 北野監督にとっては米で映画は初めてではないが、ストーリーが成立した「まとも」なコメディがこれが初めて。そう言う意味でも、非常に新鮮味のある作品に仕上がっている。

 北野監督はこれまでに何度も「コメディが一番むずかしい」と言っていますが、この作品では「日本のコメディ映画」をしっかり作り上げていると思います。日本のコメディ映画というのは、あくまでも見ている人を楽しませるもの。老若男女が楽しめる明るい雰囲気で、誰も傷つけないストーリー。一方で海外のコメディは鋭い風刺が利いていたり、コメディの仮面をかぶった芸術作品だったりします。北野監督としては、この作品の延長線上に、そういった海外コメディ映画を見据えているのではないでしょうか? 

『龍三と七人の子分たち』の解説

アウトレイジ最終章」(2017年10月7日公開)
三部作の完結!

基本情報
■超大作をどう終わらせるか?

 アウトレイジシリーズもついに3部作で完結というところまできた。正直なところ、全作ビヨンドの時点で物語は壮大なものとなり、最後はきっちりとオチもついた。「あそこから続きを描くのは大変だろうな」と思っていた。全作のスケールを超えるのは無理だし、全作と同じ言葉の暴力を描くのも苦しいところがある。公開前はどんな終わらせ方をするのか非常にワクワクしていたのを覚えている。

 実際に観てみると、なるほどと頷くところがいくつもあった。アウトレイジ(=怒り)ということだが、最終章では本気で怒っている人間はほとんどいない。皆過去の出来事に縛られ、殺す方も殺される方もあっさりとしている。アウトレイジシリーズの法則から外れた描き方である。

 本作で人々が戦う理由は、怒りではなくルールと組織である。極限の怒りを超えた先には、ヤクザの世界でありながらサラリーマンにもにたルールと組織に縛られるのだ。そして、無感情で仕方なしに殺し合いをする。これが、北野流の大作完結作の描き方である。なんとも皮肉が利いている。

 また、本作では怒りよりも切なさが前にでている。監督自身も言っていたが、ソナチネににた世界観を持っている。この描き方によって、完結編としての存在感を放つことができている。さすがの一言である。

『アウトレイジ最終章』の解説