映画監督「北野武」のまとめ・年表[おすすめ作品,代表作]

2018年5月21日

主要作品網羅!個別解説付き!


映画監督、北野武。 [ 北野武 ]

もくじ

PAGE 1(このページ)

初心者におすすめ北野映画ランキング!
北野武監督の主要映画作品一覧!
  • 衝撃のデビュー作と国際的評価の獲得
    • その男、凶暴につき
    • ソナチネ
  • 事故からの復活。「世界の北野」へ。
    • キッズ・リターン
    • HANA-BI
    • 菊次郎の夏

PAGE 2

  • アメリカ進出と国内でのヒット作誕生。
    エンターテイメント3部作の時代。

    • BROTHER
    • Dolls
    • 座頭市
  • 自己投影の3部作。大学教授就任と功労賞の時代。
    • TAKESHIS’
    • 監督・ばんざい!
    • アキレスと亀

PAGE 3

  • 原点回帰。アウトレイジシリーズの誕生。
    • アウトレイジ
    • アウトレイジビヨンド
    • 龍三と七人の子分たち
    • アウトレイジ最終章

北野監督の映画手法

 

初心者におすすめ北野映画ランキング!

『BROTHER』(2001)
ハリウッドの手法を採用
「ファッキンジャップくらいわかるよバカ野郎!」


BROTHER [DVD]

ストーリー

組の抗争に巻き込まれて居場所をなくしたヤクザが、アメリカに渡って黒人・メキシコ人と手を組み、新たな組を作ってマフィアと戦う

見どころ

 この映画の面白いところは、北野映画の良さがありつつ、ハリウッドの手法を取り入れたことで商業作品となっている点です。北野映画ではおなじみのヤクザものですが、アメリカに渡ってマフィアと抗争するということで、いつもの作品とは雰囲気が少し異なります。ストーリーはシンプルで、雰囲気も全体としてスッキリしています。「ヤクザもの」と言うよりも「マフィアもの」と言った方がいいでしょうか? 

 主人公の男は、かつて留学したまま消息不明になっていた弟のもとへ行きます。そこで弟の仲間と、かつての舎弟を加えた数人からスタートして、組を大きくしていきます。オーソドックスな展開ですが、その成り上がっていく様が爽快です。最終的には本場のマフィアにボコボコにされてしまいますが、そのままでは終わらないのも面白いところです。

 北野映画は主にヨーロッパやロシアで高い人気を誇りますが、この作品をきっかけにアメリカにもファンが増えていったそうです。また、日本人、黒人、メキシコ人といった有色人種が手を組んで、白人に立ち向かっていくということで、中東や韓国の映画祭ではかなり好評だったそうです。

『HANA-BI』(1998)
ヴェネチア国際映画祭グランプリ!
ファンでなくとも絶対に見ておきたい名作


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ストーリー

 主人公の刑事は、子と部下を失い、妻も不治の病で余命わずか。彼は部下の死に責任を感じて辞職し、ヤクザから金を借りて妻と最期の旅に出る。

見どころ

 言わずと知れた北野監督の代表作。北野映画の中でも作品全体の物悲しさと芸術性が際立っています。邦画洋画関わらず、古今東西の映画の中でも見ておいて損はない名作になっています。ストーリー、描写、シーンの美しさ、全体の構成、どれを取っても完成度が高い作品です。

 主人公はヤクザにも物おじしないやり手の刑事ですが、同僚や妻の前では穏やかで、人思いの人物として描かれています。また、主人公はほとんどセリフが無いのも特徴的です。基本的に北野映画は無駄なセリフがなく、会話がなくても成立するような撮り方をしています。その中でも特にセリフの少なさが目立ちます。

 他の作品との関連について言えば、個人的にはデビュー作「その男、凶暴につき」の完成形だと思っています。処女作で見せた北野映画の形を、この作品で完成させたという印象が強いです。

 

『菊次郎の夏』(1999)
ヤクザものだけじゃない!
感動のロードムービー!


菊次郎の夏 [DVD]

  • ノミネート:カンヌ国際映画祭パルム・ドール
ストーリー

 両親が離婚し、父を事故で亡くし、今は祖母と二人暮らしの少年。夏休みに彼は、遠くに住む母を訪ねて旅に出る決心をする。その身を案じた近所のおばさんは、元チンピラの遊び人である夫の菊次郎に、旅の世話をさせることにした。

見どころ

 北野映画の中でも少年と中年男性の友情を描いた作品ということで、ファンの間では賛否が分かれている作品です。しかし、個人的には一番気に入っている作品の一つです。

 基本はロードムービーであり、内気な少年と破天荒な中年オヤジが心を通わせていく様が描かれています。のんびりとした映画ですが、随所にコメディの要素があり、抽象的な描写なども挟み、いいアクセントになっています。監督自身も「これまでにないことをやろう」と考えていたそうです。

 北野映画というと「ヤクザ」「暴力」という印象が強いかと思いますが、この映画を見れば印象は180℃変わると思います。とてもいい映画です。

『その男、凶暴につき』
衝撃の処女作!
「何の仕事してるんですか?」「鉄砲の通信販売」


その男、凶暴につき [DVD]

  • 監督:北野武、脚本:野沢尚
  • 当初は深作欣二監督、ビートたけし主演、野沢尚脚本という予定のところ、紆余曲折あって自らメガホンを取ることになり、監督デビューを果たした。
ストーリー

 捜査のためには暴力も辞さない刑事の我妻。ある日、警察署の管内で麻薬の売人が殺される。我妻は麻薬取引の首謀者を見つけるが、その一方で、同僚の1人が麻薬を横流ししている事実を知る。

見どころ

 監督デビュー作であり、北野映画の原点である作品です。無駄な説明の省略、セリフの少なさ、突発的で加減のない暴力描写など、その後の北野映画の基本となる要素がすでに出来上がっています。

 主人公は刑事ですが、ドラマや映画に見られる「典型的な刑事」とは真逆の人物像を描いています。非行少年を暴力で追い詰め、同僚から金を借り、違法な賭け事をし、凶悪犯を車で轢くというまさに破天荒な人物です。しかし、それらが逆に、主人公の人間性のリアルさを引き立たせています。

 全体の雰囲気は静かで陰鬱でありながら、要所での暴力描写がいいアクセントになっています。暴力描写は典型的なアクション映画と比べると地味ですが、その分、観ている方が痛みを感じるように工夫されています。

北野武監督
主要映画作品一覧

衝撃のデビュー作
国際的評価の獲得

その男、凶暴につき』(1989年8月12日公開)
処女作にして高い完成度!
北野映画の基本がここに詰まっている!

基本情報
  • 監督:北野武、脚本:野沢尚
  • 出演者:ビートたけし、白竜、川上麻衣子
  • 音楽:久米大作
  • 当初は深作欣二監督、ビートたけし主演、野沢尚脚本という予定のところ、紆余曲折あって自らメガホンを取ることになり、監督デビューを果たした。
後の『HANA-BI』へとつながる衝撃のデビュー作!

 紆余曲折あってお笑い芸人から監督デビューを果たすことになったたけしさん。この作品は処女作とは思えないほどの完成度を誇っており、後の名作『HANA-BI』の原型とも言える、北野映画の基本がつまっている。各シーンの衝撃度で言えばキャリアの中でも屈指。

 前フリのない唐突で加減を知らないアクション、無駄なセリフの排除など、徹底的に映画の「不自然さ」を排除する姿勢がうかがえる。とにかく名作なので、まずはここから見るべき!

『その男、凶暴につき』の解説

ソナチネ』(1993年6月5日公開)
海外からの高評価!
北野映画の芸術性が花開いた名作!

基本情報
北野武ファンに人気の、国際的評価を得た映画「ソナチネ」

 落ち目のヤクザが組の構想に巻き込まれ、沖縄にて死に向かって突き進んでいくというストーリー。あらすじだけ聞くと過激なアクションなどをイメージしがちだが、中心となるシーンは沖縄の海沿いに建てられた小屋での生活と、砂浜でヤクザ達が遊ぶというもの。

 監督によると「沖縄という場所は(その歴史から言って)死を感じさせる場所」。その沖縄の綺麗な海と広い砂浜で、死が迫っている中でヤクザが小学生のように遊んで過ごす。ここに、北野監督独自の死生観や芸術観がある。

 キャリアを通じても、芸術性の高さでは上位に食い込む。国際的な評価も大きくなり始めたころの名作。

『ソナチネ』の解説

1994年
  • 8月2日……バイク事故を起こして重症。その後半年間の休養を余儀なくされる。

 北野監督はこの頃、私生活やタレントとして自身について行き詰まっていた。映画もソナチネという名作を生んだものの、海外と国内との評価のギャップに苦しむ。そういった中で起こってしまった事故。

 結果として、この事故は監督としてのたけしさんのキャリアの分岐点となる。事故後の復帰作で国内で高い評価を受け、その後にヴェネチアでの金獅子賞受賞となる。

北野監督のインタビュー等

今、振り返ってみると、仕事のしすぎで神経がぴりぴりして、へとへとになってたってこともあると思う。新境地を拓くなんて不可能だと思ったし、堂々巡りをしてるような気分だった。(中略)なにか新しいこと、新鮮な空気を探し求めてた。(中略)少しずつ、重要な局面に近づいていったんだね。限界に達してたんだろうな。で、ミニバイクに乗って。事故起こして、転倒して……。

引用元:「Kitano par Kitano: 北野武による「たけし」 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)」より

この頃はね、もう私生活もみんな……仕事も過渡期であったり……テレビのタレントとしてのだいたいのとこは、みんな終わっちゃった感じがあって。人気はあるんだけど、これだという番組は、みんなやめてたとこで。

引用元:「物語」(北野武)より

事故からの復活と北野映画黄金時代
「世界の北野」へ

キッズ・リターン』(1996年7月27日公開)
日本でも高評価を得た快作!
ボクシングと出会う不良少年の青春映画!

基本情報
■溌剌とした「生」を描いた青春映画

 これまで一貫してヤクザものを描いてきた北野監督。事故後の復帰作では、ボクシングに出会った不良の高校生を描く青春映画となった。ソナチネなどに顕著だが、事故以前の北野監督は「死に突き進む」人間の姿を描いていたが、以降は「死と向き合う」、もっと言えば、誰にしも訪れる死という結果を知りつつ、どうやって人生と向き合うか。そういう作風に変わってきたと感じる。

 もちろん、事故以降の作品でも死に突き進む人物は登場する。しかし、あくまでも現実的に生きる者たちが描かれており、仮に死ぬにしても「どう死ぬべきか?」という描き方。「死ぬにも作法がある」と語っているかのように見える。

 本作は死を感じさせる要素は皆無だが、一方で生きる中での辛さや苦しさを描いている。また、主人公たちは過ちを犯して退廃的な道に足を踏み入れるが、ギリギリのところで踏みとどまって最後は「ゼロ」、つまり振り出しに戻る。以前の北野映画なら「どうせダメになるならとことんまで」となっていたのが、「ダメになるなら一回振り出しに戻ろうか」というスタンスをとっている。キッズ・リターンの作品としての意義があるとしたら、ここだろう。

北野監督のインタビュー等

「キッズ・リターン」は、一生心に残るような経験を描いた映画だね。撮影中は、タイムマシンに乗ってるような気分だったよ。事故を起こして、そのあと動けなくなって。「キッズ・リターン」は、そんな俺の社会復帰の映画になったんだ。

 救いの、償いの映画になった。新しい出発の印になる、シンプルな映画にしたかった。人を楽しませて、芸術的にもある程度のレベルに達したもので、できることなら世界の評論家たちから評価されたいと思ってたの。

引用元:「Kitano par Kitano: 北野武による「たけし」 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)」より

HANA-BI』(1998年1月24日公開)
「世界の北野」へ!
芸術性を完成させた最高傑作!

■ヴェネチアでグランプリを受賞した傑作「HANA-BI」!

 本作では再び主人公は刑事、ヤクザとの争いを描く原点回帰の作品となっている。ストーリー、演出、構成、どれをとっても申し分ない最高傑作だ。特徴的な点を上げれば、構成が少々複雑になっている点。幾つかのシーンを時系列をバラバラに組み合わせ、特定のシーンを強調させる手法を取っている。映画を始めとした芸術作品ではよく見られるものだが、その効果を最大限に発揮させる監督の手法はさすがと言う他ない。

 加えて、作中には北の監督自身が描いた絵画がいくつも登場する。これがまた作中で非常に優れた演出効果をもっており、作品に芸術的な要素を付与している。監督のあらゆる芸術性がつめこまれているのも、本作の大きな見どころである。

 もうひとつ、この作品はデビュー作『その男、凶暴につき』を進化させたものである。主人公が刑事で、仲間を殺されてしまい、妻は病気でほとんど会話ができない。刑事をやめてヤクザに立ち向かっていくという点も、すべてデビュー作を踏襲している。北野映画では仲間や家族が障害を抱えているというという設定が多く見られる。監督自身の価値観を語る上でも、何か重要なファクターになっているのだろう。

 いずれにしても、北野映画の精神と手腕が凝縮された傑作は必見!

『HANA-BI』の解説

北野監督のインタビュー等

「HANA-BI」で金獅子賞をとったことで、いろんなことが変わったよ。みんなが俺のことを本当の監督として見はじめるようになったもん。それに、事故を起こす前は、多かれ少なかれ、俺には自殺願望があったような気がする。(中略)死という考えに直面しながらも、すべてから逃げてたんだよね。「HANA-BI」では逆に、死っていう運命を受けいれようとした。(中略)自分の抱える不安や怖れと向き合って、それを手なづけていく方法を見つけられたんだよ。

「HANA-BI」がどれだけ俺の再スタートを助けてくれたか(中略)この映画を撮ることが、新しい出発になるって感覚はあったね。そのチャンスをつかむべきだって。
(「Kitano par Kitano: 北野武による「たけし」」より)

 絵でいえば、俺の前の映画なんかは、ほとんど印象派っていうか、印象派を飛び越えちゃって、コンテンポラリーのマヌケなやつみたいな(中略)「HANA-BI」は、やや、印象派のいいとこに戻ったって感じ、あるかもわかんないね。

引用元:「物語」(北野武)より

菊次郎の夏』(1999年6月5日公開)
感動のロードムービー!
北野流の芸術性を涙と笑いで描いた傑作!

  • 監督・脚本:北野武
  • 出演者:ビートたけし、関口雄介
  • 音楽:久石譲
  • 国際映画祭での上映:カンヌ国際映画祭コンペティション部門
    (※パルム・ドールの最有力候補に挙げられるも、惜しくも受賞を逃す)
■北野武が描くおっさんと少年のロードムービー

 この映画は一年に一回くらいのペースで見続けているが、その度に泣いてしまう。映画ではほとんど泣くことがないのに、この映画は感動する。泣き上戸の人が見たらカラカラになってしまうだろう。

 幼いころに両親が離婚し、父親は事故で無くなってしまい、祖母に育てられている少年が主人公。近所の知り合いの中年の女の、遊び人の旦那が監督演じる菊次郎である。この菊次郎と共に、母を訪ねて旅をするという話なのだが、一筋縄ではいかない。詳しくは作品を見てほしいが、菊次郎が旅費を競輪ですってしまうシーンなどは腹をかかえて笑ってしまう。

 無口で寡黙な少年と、背中に入れ墨のあるおっさんが、ふとしたことから心を通わせるというところが本作のテーマになっている。この頃の北の監督の撮影手法やアイディア、演出能力は絶頂に達しており、はっきり言って何をやっても素晴らしい。どのシーンを切り取っても芸術的である。わりかしシンプルかつ王道のストーリーでいかに見るものを惹きつけるか。その辺が、この映画のみどころじゃないかと思う。

 正直なところ、今作はある意味で「HANA-BI」を超えている。そう言ってもいいくらいの傑作である。

『菊次郎の夏』の解説

北野監督のインタビュー等
  • 「HANA-BI」が成功に終わったあと、”クール”すぎたり、いかにも暴力的な映画からは少し距離を置いて、もっと曖昧な映画を作りたいって思ったんだ。たけしには、心温まるような、子供時代の話なんか撮れっこないだろうって思ってた人たちは、この「菊次郎の夏」を観て驚いただろうね。コマーシャル的にどうなんだっていう、試験的な作品でもあった。
  • 1999年にカンヌ映画祭で上映されたときは、クローネンバーグが審査委員長だったんだよね。デヴィット・リンチがものすごく気に入ってくれたらしいと聞いたときは嬉しかったな。審査員の中には、「菊次郎の夏」がグランプリになるんじゃないかって言ってくれた人までいたんだけど、その希望は叶わなかったね。

Kitano par Kitano: 北野武による「たけし」」より

  • 「今度の映画はボブ・ディランがアコースティック・ギターからエレキ・ギターに持ち替えたときなんだ」って言い張ってるんだけど
    ※参考:「ボブ・ディラン-エレクトリックへの転換」(wikipedia)
  • 商業映画のふりをしてどうやって、そおっと汚くアートをやってほくそ笑むかっていう作戦に出ようかと思ってるんだけどね(笑)。アートのふりした商業映画っていっぱいあるじゃない? だからその逆をやろうかなあと思ってる。

武がたけしを殺す理由」より