『菊次郎とさき』(ビートたけし)のあらすじ・レビュー

2014年9月20日

ビートたけしが両親を語る!笑いと感動の自伝的小説!

菊次郎とさき (新潮文庫)

もくじ

『菊次郎とさき』のもくじ

 内容説明

「おまえなんか、死んじまえ!」事あるごとに息子を厳しく叱り飛ばし、強烈な思い出を遺して 逝った母。人一倍照れ屋で小心者、酒なしには話も出来なかった父―。病床の母を見舞う道すがら、幼き日からの父母との記憶を辿る「SAKI」。母の通夜 後、号泣した著者が溢れんばかりの愛情で綴った「北野さきさん死去」など、懐かしく暖かい珠玉の三篇。兄・北野大があとがきを添える。

目次

SAKI
KIKUJIRO
北野さきさん死去

引用元:菊次郎とさき / ビートたけし【著】 – 紀伊國屋書店ウェブストア

 

『菊次郎とさき』のあらすじ

 物語は、北野武が入院中の母「北野さき」を訪ねて、軽井沢へ向かう場面から始まる。訪問の前日に電話をした際、母はいきなり金をせびってきた。看護婦さんたちに向けて商品券と、小遣いをくれとのことだった。平日のグリーン車の中で、武は昔の母との思い出を振り返っていた。

 

 貧乏な家庭にあって、異常とも言えるほどの教育熱心だった母。勉強をさせようとする母と、なんとかして勉強から逃れて遊ぼうとしていた幼い頃の武。その戦いは大学入学まで続き、武は母の希望通り、明治大学工学部へ進学する。教育熱心な母にとってそれは「勝利」だった。しかし、そこから武は道を逸れ始める。大学2年の時に武はこっそり家を出て、安アパートで初めての一人暮らしを始めたのだ。もちろん、母には全くの内緒だ。

 ところが、大学にもアルバイトにも行かない自堕落な生活になり、あっというまに家賃を数ヶ月滞納。大家に呼び出され、「おまえみたいなばかはどこにいるか」と一喝される。話を利いてみると、引っ越ししてすぐ母親がやってきて、「武が家賃を滞納したらうちに請求してくれ」と言ったそうだ。そして、これまで毎月母親が金を払っていてくれたのだ。武はまたしても、母親に「完敗」してしまった。その後、武は大学を辞め、浅草のフランス座で芸人となる。これは武にとっての「大勝負」だった。母の呪縛から解かれること、当時は今よりもずっと大きな存在だった大学を辞めること。これでようやく、母との戦いは終わるのだと、武は思っていた。

 芸人として成功し、月給が100万を超えた頃、武は久しぶりに母に会った。母を見返すつもりで、「小遣いだ」と30万を渡すと、「30万で偉そうな顔しやがって」と返ってきた。それを期に、毎月のように電話がかかってきて、毎回小遣いをせびるようになった。日本一のタレントとなった武が事件を起こし、何度も世間を騒がせるたび、母はテレビを通じて「馬鹿野郎」と毒を吐く。そんな母を見ていると、未だに2人の勝負は続いているのだと、武は感じていた。

 

 病院につくと、母さきは相変わらずだった。武の顔を見るなり小言を言ったかと思えば、病室の他の患者の噂話を始め、帰り際には自分の葬式の指示までする。呆れ半分で病院を後にした武だったが、帰りの道すがら、母親から渡された包を開けて、彼は言葉を失った。

「最後の勝負は、おいらが九分九厘勝ったはずだったのに、最終回にひっくり返されたというわけだ」

 

解説・感想

 たけしさんの自伝的小説の中でも、知名度の高いこの作品。初出は『新潮45』の97年5月号。その後、99年の12月に単行本として刊行されます。その間、99年の8月に北野さきさんが死去してしまいます。母親の死の前後に執筆と刊行がなされており、その内容に重みを感じる作品となっています。

 また、単行本の刊行にあたって、「KIKUJIRO」「北野さきさん死去」が書きおろしとして加えられています。

参考:菊次郎とさき – Wikipedia

 

 メインである「SAKI」は、文庫本でページ数50pほど。短編であり、コンパクトにまとまった内容です。病院に向かう武さんが、幼いころの母や家族との思い出を回想していき、病院で相変わらずの母に会う。しかし、最後に母から渡された包みに、武さんと母さきさんの関係を集約したような、「あるもの」が入っているというわけです。

 作品のテーマは「母と子」、「さきさんと武さんの勝負」といったところです。勉強をさせて2人の兄のように理系の技術者や研究者にしようとする母と、それに反発し、大学を中退して芸人になる息子となっています。実際に読む際には、是非この「勝負」というものに注目すると、より楽しめるかと思います

 

 また、この作品では、北野武及び北野家について、そのあらましをざっと知ることができます。幼いころ住んでいた下町の話、祖母や祖父など北野家のルーツ、兄弟のエピソード、母さきと父菊次郎の半生などなど。

 ビートたけし(北野武)さんの小説作品の中でも、まずはこれを読んでおきたいという一冊です。非情に良い作品です

 

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