「カチカチ山」(太宰治)のあらすじ(要約)[考察(解説),感想]

2017年10月25日

カチカチ山を太宰治が現代風にアレンジ!

お伽草紙 (新潮文庫)

お伽草紙「カチカチ山」収録

もくじ

  • 太宰治「カチカチ山」 – あらすじ
    • カチカチ山の舞台は河口湖畔
    • 純真な少女の兎とぶ男の狸
  • 考察・感想
  • 参考文献

太宰治「カチカチ山」 – あらすじ

カチカチ山の舞台は河口湖畔

 カチカチ山の舞台は、甲州、河口湖畔は舟津の裏山あたりだそうです。現在で言うと、ちょうど富士急ハイランドの北のあたりに浅川という地名があり、そこにある天上山あたりでしょう。


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純真な少女の兎とぶ男の狸

 さて、『お伽草子』では決まって、おなじみの昔話を太宰が検証していくところから始まります。カチカチ山では、何と言っても「婆汁」が有名です。捕らえられた狸が狸汁にされそうになったところを、逆にやり返し、お婆さんを婆汁にしてやるというくだりです。しかし、子供向けの童話、もしくは現代で知られる昔話では、婆汁の描写があまりに酷だということで、「狸か引っかき傷を負わせた」くらいになっています。

 しかし、そのために、矛盾が生じています。お婆さんと仲の良かった兎による、狸への仕返しがあまりに執拗すぎる、ということです。背中の柴に火をつけ、火傷の痕に辛子を塗り、泥船に乗せて溺死させるというのは、あまりに卑劣でねちっこいというわけです。そこで太宰は、兎は女だという解釈をします。女でも特に、若い少女、まだ恋愛経験もない、純真な少女だとします(作中では「16歳の処女」としています)。一方狸は、「愚鈍で大食の、野暮天」とします。そして、「愚鈍な男ほど危険な女に惚れやすい」と、太宰は言います。

 さて、お婆さんに捕まったところを、命からがら逃げてきた狸は、「逆に引っ掻いてやった」と兎に自慢するのです。すると兎は、「私とお婆さんは仲良しなのに、なんてひどいことを」と言います。狸が「勘弁してくれ」と言えば、兎は「お爺さんが落ち込んでいるだろうから、代わりに柴を刈りに行きましょう」と返し、それで許してやると言います。

 ここからの話は昔話のとおりです。兎はその間、いつもは「汚い」「臭い」だのと侮辱していた狸に対して、妙に寛容であり、その裏で残酷な仕返しをしていくのです。背中を焼かれた上に辛子を塗られて、狸は数日の間悶え苦しみますが、頑丈なために10日ほどで全快してしまいます。

 鈍感で無神経な狸は、復讐心を悟られまいための兎の寛容さを、そのまま自分への好意と受け取ったようで、兎の家を訪ねます。そこで兎は露骨に嫌な顔をし、極度の嫌悪で侮辱の言葉を浴びせます。しかし、狸は「カチカチ山は恐ろしいところだったが、お前も無事で何より。こうして二人でまたのんびりできる」といった調子です。

 そこでいよいよ兎は、狸を殺すべく、魚を獲りにいこうと河口湖へ誘い出します。泥船に狸を乗せ、自分は木の船で後から付いて行き、いよいよこれから狸を殺すという時です。兎は湖に浮かぶ島を見て「おお、いい景色」などとつぶやきます。そして、船が沈み慌てる狸を軽くあしらい、最後に頭をオールで殴り、狸が沈んでしまったところで、「おお、ひどい汗」とつぶやくのです。

カチカチ山②
<天上山からの河口湖畔> クリエイティブ・コモンズ・ライセンスこの 作品 は クリエイティブ・コモンズ 表示 2.1 日本 ライセンスの下に提供されています。http://www.flickr.com/photos/kuruman/4724194748/

 

考察(感想)

 この話の面白いところは、何と言っても太宰のキャラクター設定でしょう。馬鹿な男と怖い女という、ある意味で男女の典型例を、的確に描いています。この兎の行動をもって「的確」などと言うと、女性に怒られそうですが、男性の代表としての狸は殺されているのですから、大目に見てほしいところです(笑)。

  太宰は作中で、狸を殺す直前の兎をもって、「『青春の純真』とかいうものは、その胸中に殺意と陶酔が隣合わせて住んでいても平然たる、何が何やらわからぬ官能のごちゃまぜの乱舞である」と表現します。ここらへんは、女性にかぎらず言えることでしょう。その結果どのような行動を取るかは男女によって異なりますが、純真さというものは、悪にも善にも染まりやすいわけであり、たいていの場合はその両方が共存していて、心のバランスを保っているものです。

 最後に、物語の終わりにある、太宰の警句とでも言うべきものを書いておきましょう。
「女性にはすべて、この無慈悲な兎が一匹住んでいるし、男性には、あの善良な狸がいつも溺れかかってあがいている」

カチカチ山①
<天上山> クリエイティブ・コモンズ・ライセンスこの 作品 は クリエイティブ・コモンズ 表示 – 継承 2.1 日本 ライセンスの下に提供されています。http://www.flickr.com/photos/kosabe/5456964839

 

参考文献

太宰治

Posted by hirofumi