IRON MAIDEN(アイアンメイデン)まとめ【おすすめアルバム,名盤名曲,レビュー】

2018年1月13日

ポップさとプログレ嗜好が加わった全盛期

 5th発表後、ツアーとそのライブアルバムの発売を挟んで、バンドは新たな作品作りに入る。長いキャリアを持つバンドは、ライブアルバムの発売を挟んで大きく成長したり、音楽性を変えたりということが多い。アイアン・メイデンは力で押す曲調から、洗練された曲調へと変化する。ただ、180度変化したというわけではない。3rdで見せたヘビーさ、5thで見せた大作志向は残しつつ、ポップさやプログレ的な音を取り入れるようになった。結果、曲のバリエーションや作品の完成度はさらに成熟し、バンドの全盛期を迎えることとなる。

 もちろん、3rdから5thの時点ですでにバンドは完成されているし、その時期を全盛期と呼ぶことも多い。確かに、曲の勢いやテンションの高さは5thがすごい。ただ、曲の構成の複雑さ、演奏技術、アルバムの完成度まで含めれば、6th,7th発表時が全盛期にふさわしい。

Somewhere in Time』(1986年[6th])
ギターシンセ導入&プログレへの接近!
★★名盤★★

Somewhere in Time

 

【アルバム解説】

 このアルバムは、アイアン・メイデンの音楽性の変化を告げる重要な一枚となっている。特にその象徴となっているのは、ギターシンセの導入。ギターの音色は流麗であり、いい意味で無機質な音色を奏でている。シンセの音は近未来的な世界を想起させるのだが、それがジャケットにも表れている。上の画像じゃジャケットの表しか見えないけど、裏も合わせて一枚の絵になっている。ネオン入り乱れる大都市のビル街に、サイボーグかアンドロイドがいて、空飛ぶ車と宇宙船も見える。このジャケットをそのまま音にしたようなアルバム。

 今作の音楽性を具体的に説明すれば、前作に引き続き大作志向。加えて、アイアン・メイデンらしい疾走感とハードさが基本にありながら、洗練されたスマートな音を奏でている。曲同士のつながりも大きく、あたかもメドレーを聞いているような気分になる。一言で言うとプログレ的な要素が強い。この傾向は次作も引き継がれるが、プログレっぽさはこちらの方が強い。間奏もふんだんに取り入れている。ちなみに、今作の作曲者にブルース・ディッキンソンはクレジットされていない。ほとんどの曲をスティーブ・ハリスが書き上げ、残りをエイドリアン・スミスが担当という構成。アルバムのポイントとなる曲はスティーブが担当している。つまり、彼のプログレ志向がモロに出た作品。

 個人的にはプログレが大好きなので、このアルバムはかなり気に入った。初めて聞いた時点ですぐに。ただ、プログレの悪い点である冗長さに加え、お上品すぎる音は人によっては拒否反応を起こすかもしれない。しかし、元々がハードでノリのいい音なので、ちょうどいいバランスに落ち着いていると思う。何より、個々の曲のクオリティはかなり高い。また、意表をつく展開、隙間なく埋め尽くされた音、雪崩れ込むような演奏などは圧巻。アルバムがあっという間に終わるという感覚は、この作品が一番かもしれない。

 音楽性の似ている次作との比較をすれば、次作はポップさと簡潔さが加わり、コンパクトにまとまっている。と言っても作品として軽くなるというわけでなく、曲のバランス面で非常によくまとまった作品となっている。ただ、プログレに慣れている人、プログレ好きな人なら、今作の方を気に入る可能性は高い。HR/HMに分類されるバンドが、ここまでプログレできるとは思ってなかった。正直、びっくりした。

【収録曲】
  1. Caught Somewhere In Time(Steve Harris)
  2. Wasted Years(Adrian Smith)
  3. Sea Of Madness(Adrian Smith)
  4. Heaven Can Wait(Steve Harris)
  5. The Loneliness Of The Long Distance Runner(Steve Harris)
  6. Stranger In A Strange Land(Adrian Smith)
  7. Deja-Vu(Dave Murray, Harris)
  8. Alexander The Great(Steve Harris)
【各曲解説/動画で試聴】
  • caught somewhere in time」#1(Harris)
    7分を超える大作。シンセの音で幕を開け、マシンガンのようなリズムで進む、疾走感溢れる曲。アルバムの印象を決定づける曲。
  • heaven can wait」#4(Harris)
    長尺の割にポップな曲で、サビのシンプルなメロディと爽やかなギターが印象的。後半に合唱とギターソロを含む間奏部を挟む。次作を予感させる曲。
  • the loneliness of the long distance runner」#5(Harris)
    しっとりとしたギターのメロディから始まる曲。ハードな導入部に続き、前半で間奏を挟み、曲の中間部分で高揚感を掻き立てる素晴らしいギターソロが聴ける。全編通してシンプルでしっかりとしたリズムがあり、ギターをフィーチャーした曲。
  • alexander the great」#8(Harris)
    アルバムの中で最長(8分超)の曲。静かな導入部から徐々に曲を構築していき、様々な展開を見せる間奏部へと繋がる。この部分が本作中で最もプログレ的。終盤の盛り上がりは必聴。アルバムのラストにふさわしい壮大な曲。

Seventh Son of a Seventh Son(第七の予言)』(1988年[7th])
成熟したサウンドとハイクオリティな楽曲!
★★★最高傑作★★★

Seventh Son of a Seventh Son

 

【アルバム解説】

 3rd、5thと並んで最高傑作にあげられるのが今作。特徴としては、6thにて取り入れたギターシンセを今作でも導入。SFチックな雰囲気を醸し出し、アイアン・メイデンにしてはお行儀の良い音づくりになっている。加えて、コンセプト・アルバムであり、個々の曲の展開にも工夫が見られる。叙情的なメロディーも多く見られ、これまでの作品とは一線を画す内容になっている。加えて、ポップさを兼ね備えた曲もある。

 基本的な音楽性は変わっていないものの、ギターシンセの効果とコンセプトアルバムという点は大きい。3rdで見せた攻撃性でもなく、5thのパワーと高揚感でもない。プログレに見られるような、芸術志向、精神世界の追求などがこのアルバムの色だ。

 また、楽曲の成熟度、アルバムの完成度で言えば、間違いなく今作が一番と言える。パワースレイブで見せたような大作あり、簡潔でポップな曲あり、意表をつく展開を持った曲あり、力で押す曲あり。様々なバリエーションの曲を上手く並べ、全体の雰囲気はコンセプトとギターシンセで統一。はじめから終わりまで飽きのこない、非常によく練られた作品となっている。

【収録曲】
  1. Moonchild(Adrian Smith, Bruce Dickinson)5:40
  2. Infinite Dreams(Adrian Smith, Bruce Dickinson)6:09
  3. Can I Play with Madness(Smith, Dickinson, Harris)3:31
  4. The Evil That Men Do(Smith, Dickinson, Harris) – 4:34
  5. Seventh Son of a Seventh Son<>(Harris) – 9:53
  6. The Prophecy(Dave Murray, Harris) – 5:05
  7. The Clairvoyant(Harris) – 4:27
  8. Only the Good Die Young(Harris, Dickinson) – 4:41
【各曲解説/動画で試聴】
  • moonchild」#1(Smith, Dickinson)
  • infinite dreams」#2(〃)
  • can i play with madness」#3(Smith, Dickinson, Harris) 
    本作中最もポップな曲。曲調はストレートなロック。印象的なサビのメロディーが特徴。前編を通して爽やかで疾走感のある曲。演奏時間は3:30ほどと非常にコンパクト。
  • the evil that men do」#4(〃) 
    #3と同じくシンプルで、心地よいメロディーを持つ。ブルース・ディッキンソンの伸びやかな歌声が楽しめる。
  • seventh son of a seventh son」#5 (Harris)
    約10分の大作。厳かで神聖な雰囲気を感じさせる曲。中盤からは5分を超えるインストへと転調。水を打ったような静けさの後に、激しい展開を迎える。#2と対をなす、今作を象徴する曲。
  • only the good die young」#8(Harris, Dickinson)
    シンプルでスピード感のあるリズムが印象的な、アルバムの最後を飾る曲。

Brave New World』(2000年[12th])
メイデンサウンド健在!

Brave New World

【アルバム解説】

 このアルバムは、メンバー編成という点でバンドにとって重要な位置づけにある。7thを最後に90年にエイドリアン・スミスが脱退し、ヤニック・ガーズが加入。93年にはブルース・ディッキンソンが脱退。8thから11thまで(’90~’98)のアルバムではディッキンソンを欠いたメンバー編成となった。その後、この12thにてエイドリアン・スミスとブルース・ディッキンソンが復帰。ヤニック・ガーズもそのままバンドに残り、トリプルギター編成となる。

 バンドにとってとりわけ存在感の大きかったブルース。彼が不在の間はメタルの停滞という背景もあって、バンドの勢いもいまいち。その時期を経て再び黄金期のメンバー編成に戻り、気合の入った第一作目というわけ。特にこのアルバムで目立つのは、音の太さと音質の良さ。タイトでメリハリのある音が前編で楽しめる。一方で、尺の長い曲が多いのが気になる。7分を超える曲が4曲、6分以上も加えれば10曲中7曲。曲はよくても少々冗長に感じてしまう。今後聴きこんでいけばその印象も変わるかもしれない。

【収録曲】
  1. The Wicker Man (Smith/Harris/Dickinson)4:36
  2. Ghost Of The Navigator (Gers/Dickinson/Harris)6:50
  3. Brave New World (Murray/Harris/Dickinson)6:18
  4. Blood Brothers (Harris)7:14
  5. The Mercenary (Gers/Harris)4:42
  6. Dream Of Mirrors (Gers/Harris)9:21
  7. The Fallen Angel (Smith/Harris)4:00
  8. The Nomad (Murray/Harris)9:05
  9. Out Of The Silent Planet (Gers/Dickinson/Harris)6:25
  10. The Thin Line Between Love & Hate (Murray/Harris)8:26