IRON MAIDEN(アイアン・メイデン)まとめ【おすすめアルバム,名盤,レビュー】

2017年11月8日

ポップさとプログレ嗜好が加わった全盛期

 5th発表後、ツアーとそのライブアルバムの発売を挟んで、バンドは新たな作品作りに入る。長いキャリアを持つバンドは、ライブアルバムの発売を挟んで大きく成長したり、音楽性を変えたりということが多い。アイアン・メイデンは力で押す曲調から、洗練された曲調へと変化する。ただ、180度変化したというわけではない。3rdで見せたヘビーさ、5thで見せた大作志向は残しつつ、ポップさやプログレ的な音を取り入れるようになった。結果、曲のバリエーションや作品の完成度はさらに成熟し、バンドの全盛期を迎えることとなる。

 もちろん、3rdから5thの時点ですでにバンドは完成されているし、その時期を全盛期と呼ぶことも多い。確かに、曲の勢いやテンションの高さは5thがすごい。ただ、曲の構成の複雑さ、演奏技術、アルバムの完成度まで含めれば、6th,7th発表時が全盛期にふさわしい。

 

Somewhere in Time 』(‘86,6th)

Somewhere in Time

 このアルバムは、アイアン・メイデンの音楽性の変化を告げる重要な一枚となっている。特にその象徴となっているのは、ギターシンセの導入。ギターの音色は流麗であり、いい意味で無機質な音色を奏でている。シンセの音は近未来的な世界を想起させるのだが、それがジャケットにも表れている。上の画像じゃジャケットの表しか見えないけど、裏も合わせて一枚の絵になっている。ネオン入り乱れる大都市のビル街に、サイボーグかアンドロイドがいて、空飛ぶ車と宇宙船も見える。このジャケットをそのまま音にしたようなアルバム。

 今作の音楽性を具体的に説明すれば、前作に引き続き大作志向。加えて、アイアン・メイデンらしい疾走感とハードさが基本にありながら、洗練されたスマートな音を奏でている。曲同士のつながりも大きく、あたかもメドレーを聞いているような気分になる。一言で言うとプログレ的な要素が強い。この傾向は次作も引き継がれるが、プログレっぽさはこちらの方が強い。間奏もふんだんに取り入れている。ちなみに、今作の作曲者にブルース・ディッキンソンはクレジットされていない。ほとんどの曲をスティーブ・ハリスが書き上げ、残りをエイドリアン・スミスが担当という構成。アルバムのポイントとなる曲はスティーブが担当している。つまり、彼のプログレ志向がモロに出た作品。

 個人的にはプログレが大好きなので、このアルバムはかなり気に入った。初めて聞いた時点ですぐに。ただ、プログレの悪い点である冗長さに加え、お上品すぎる音は人によっては拒否反応を起こすかもしれない。しかし、元々がハードでノリのいい音なので、ちょうどいいバランスに落ち着いていると思う。何より、個々の曲のクオリティはかなり高い。また、意表をつく展開、隙間なく埋め尽くされた音、雪崩れ込むような演奏などは圧巻。アルバムがあっという間に終わるという感覚は、この作品が一番かもしれない。

 音楽性の似ている次作との比較をすれば、次作はポップさと簡潔さが加わり、コンパクトにまとまっている。と言っても作品として軽くなるというわけでなく、曲のバランス面で非常によくまとまった作品となっている。ただ、プログレに慣れている人、プログレ好きな人なら、今作の方を気に入る可能性は高い。HR/HMに分類されるバンドが、ここまでプログレできるとは思ってなかった。正直、びっくりした。

  • caught somewhere in time」#1(Harris)
    7分を超える大作。シンセの音で幕を開け、マシンガンのようなリズムで進む、疾走感溢れる曲。アルバムの印象を決定づける曲。
  • heaven can wait」#4(Harris)
    長尺の割にポップな曲で、サビのシンプルなメロディと爽やかなギターが印象的。後半に合唱とギターソロを含む間奏部を挟む。次作を予感させる曲。
  • the loneliness of the long distance runner」#5(Harris)
    しっとりとしたギターのメロディから始まる曲。ハードな導入部に続き、前半で間奏を挟み、曲の中間部分で高揚感を掻き立てる素晴らしいギターソロが聴ける。全編通してシンプルでしっかりとしたリズムがあり、ギターをフィーチャーした曲。
  • alexander the great」#8(Harris)
    アルバムの中で最長(8分超)の曲。静かな導入部から徐々に曲を構築していき、様々な展開を見せる間奏部へと繋がる。この部分が本作中で最もプログレ的。終盤の盛り上がりは必聴。アルバムのラストにふさわしい壮大な曲。

 

 

Seventh Son of a Seventh Son』(‘88,7th)

Seventh Son of a Seventh Son

 3rd、5thと並んで最高傑作にあげられるのが今作。特徴としては、6thにて取り入れたギターシンセを今作でも導入。SFチックな雰囲気を醸し出し、アイアン・メイデンにしてはお行儀の良い音づくりになっている。加えて、コンセプト・アルバムであり、個々の曲の展開にも工夫が見られる。叙情的なメロディーも多く見られ、これまでの作品とは一線を画す内容になっている。加えて、ポップさを兼ね備えた曲もある。

 基本的な音楽性は変わっていないものの、ギターシンセの効果とコンセプトアルバムという点は大きい。3rdで見せた攻撃性でもなく、5thのパワーと高揚感でもない。プログレに見られるような、芸術志向、精神世界の追求などがこのアルバムの色だ。

 また、楽曲の成熟度、アルバムの完成度で言えば、間違いなく今作が一番と言える。パワースレイブで見せたような大作あり、簡潔でポップな曲あり、意表をつく展開を持った曲あり、力で押す曲あり。様々なバリエーションの曲を上手く並べ、全体の雰囲気はコンセプトとギターシンセで統一。はじめから終わりまで飽きのこない、非常によく練られた作品となっている

  • moonchild」#1(Smith, Dickinson)
  • infinite dreams」#2(〃)
  • can i play with madness」#3(Smith, Dickinson, Harris) 
    本作中最もポップな曲。曲調はストレートなロック。印象的なサビのメロディーが特徴。前編を通して爽やかで疾走感のある曲。演奏時間は3:30ほどと非常にコンパクト。
  • the evil that men do」#4(〃) 
    #3と同じくシンプルで、心地よいメロディーを持つ。ブルース・ディッキンソンの伸びやかな歌声が楽しめる。
  • seventh son of a seventh son」#5 (Harris)
    約10分の大作。厳かで神聖な雰囲気を感じさせる曲。中盤からは5分を超えるインストへと転調。水を打ったような静けさの後に、激しい展開を迎える。#2と対をなす、今作を象徴する曲。
  • only the good die young」#8(Harris, Dickinson)
    シンプルでスピード感のあるリズムが印象的な、アルバムの最後を飾る曲。

 

⇒page3「2000年代のアイアン・メイデン」

洋楽

Posted by hirofumi