「HANA-BI」のあらすじ・解説

2017年10月1日

カンヌでグランプリを受賞した傑作「HANA-BI」!

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「HANA-BI」あらすじ/ストーリー

 刑事の西(ビートたけし)は、数カ月前に幼い息子を亡くし、妻(岸本加世子)もそのショックから入院中であった。見舞いのために病院を訪れた西は、そこで妻が不治の病であることを告げられる。追い打ちを書けるように、自分の代わりに張り込みをしていた同僚の堀部(大杉漣)が、犯人に撃たれたとの知らせが入る。その後、西は犯人を追い詰めるが、逮捕を焦ったために反撃を受け、部下を犠牲にしてしまう。

 堀部は一命を取り留めたものの、半身不随になってしまい、妻子にも逃げられてしまう。そして西は、子を失い、部下を失い、妻も失いかけている。罪悪感から西は辞職し、妻と静かに暮らしていくことにする。一方で、死んだ部下の妻への支援と自らの生活費のために、ヤクザから金を借りるようになる。

 やがて、返済が滞るようになり、ヤクザから逃げるようにして、西と妻は二人で旅に出る。

 

「HANA-BI」感想

■北野監督が世界的評価を確かなものにした本作。名前は知っていても、実際に見たことがないと言う人も多いかもしれない。それは非常にもったいない。間違いなく映画史に残る傑作で、高い芸術性を感じることのできる作品だからだ。

 本作は、北野監督のそれまでの作品を集約した内容となっている。まず、基本的な部分は処女作の「その男凶暴につき」とほぼ同じ。刑事が主人公で、病気の家族がいて、部下が死に、慕っていた同僚も傷つけられる。さらに、事件をきっかけに辞職し、ヤクザと対立し、最後は家族もろとも死ぬ、となる。

 音楽家でも小説家でも、処女作に作者のすべてがつまっている、と言われる。「その男凶暴につき」はまさにそれで、暴力、理不尽、怒りといったテーマがあり、表現方法にしても「少ないセリフ」「無駄な描写のカット」「陰鬱な色彩表現」などがあり、これらは監督が何度も繰り返し映画の中で描いている。

 話を戻すと、他にも「ソナチネ」で見られたような「芸術」というテーマも作品の随所にちりばめられている。本作の見どころの一つに、北野監督自身が描いた絵画が何度も登場する。ソナチネでは作品そのものを芸術として描いた一方、本作では半身不随になった主人公の同僚の刑事が、救いを求めるものとして絵画が登場する。その辺の違いはあっても、ソナチネで追及したものが本作でうまく消化されている。

■「HANA-BI」を語る上でもう一つ欠かせないのは、意図的に構成を複雑化させたている点だ。簡単に言うと、各シーンの時系列が入れ替わっている。こういう表現は小説でも映画でもよく見られるものだが、北野監督はこの辺が非常に上手い。

 無暗に複雑化させるわけでもなく、「このシーンを見てくれ!」という作者の嫌らしさもない。ちょうど人間が過去のトラウマを振り返るように、主人公の心情に沿うようにして、いろいろなシーンが順不同で登場する。この構成によって、作品全体が締まり、なおかつ各シーンが鋭く突き刺さって来る。

 何はともあれ、実際に見るのが一番。

 

北野武監督のインタビューから見る「HANA-BI」(解説・撮影秘話・映画論)

物語 」(北野武)より

作品のコンセプト、ストーリーについて

  • 「HANA-BI」は基本的には、女房との会話が一切ないっていうのから始まって。映像だけで、ふたりの語りを一切なくして、状況を本人たちの口で言わないようにして、かみさんは最期に「ありがとう」って言うだけ、っていうコンセプトだよね。
  • 「ありがとう」って言ったあと、「ドン、ドン」って撃って終わりっていう、エンディングがまずあって。そこにいくまでにどうしたらいいかっつうと、まず、なぜそこでかみさんと死ぬのか、って考えて、かみさんは末期ガンにしよう、って。で、そのかみさんの見舞いに行くために、張り込みを任せた同僚の刑事が撃たれて下半身不随になる。
  • かなりゴリ押しな映画なんだよね。細かく考えるとむちゃくちゃだなっていう。刑事が銀行強盗して、車買って、金配って、かみさん撃ち殺して自分も死ぬんだから、すげえ映画だけどね。だけど、それを淡々と撮って。ロードムービーみたいな感じもあるんだけどね。だから、セリフはあんまりいらなかった。

 

印象的なラストシーンについて

  • あの映画は、初めて女房がしゃべって、「ありがとう」って言って、海と空に、「ターン、ターン」とピストルの音がして終わり、っていうのが、シナリオ的にはいちばん最初の発想で。
  • 「ありがとう」のあとに、もうひとこと、「ごめんね」って入るんだけど。「ありがとう」だけで終わりの予定があったんだけどね(中略)「ありがとう」だけだと、かみさん、ダンナの行動は自分のせいだっていうのがわかってない感じがするのね。だから「ごめんね」って謝るっていうか、こういう状況にしたのは自分の責任もある、みたいな感じに。(中略)あの「ごめんね」があるから、そのあとダンナが方を抱けるんだと思うしね。セリフが1個だとちょっと無理だなっていうか。まして「ダン、ダン」はないだろうってのがあって。
  • ああいうシーンって、やっぱり照れるんだけど、照れてもまあいいかっていうのは、最期の死があるからだと思うよ。
  • かみさんを撃つときは、音だけにする予定だったんだけど、現場で、拳銃を抜くシーンを撮るか撮らないかで迷ってね。今考えりゃ、映さなくてよかったなと思ってるの。なにげなく肩抱いて、こう懐に手ぇ入れたら変じゃない。だから、あのあとは、観るほうに想像させないと、音だけにして。
  • この映画は、シーンのつなげ方は、相当気にしたかもね。車のとこに悪いのがいて、ぶん殴ったりなんかして、走るシーンがあって、青いトタン屋根の前に現れる、とか。ほいで、次は車椅子で動くとか、そういう順番をすごい気にしたんだよ。映像が重なっていくときに、違う匂いの映像を入れたくないっていうのがあって。駐車場のグレーと青の怪しい色と、海の青の色と。あと、同僚の刑事の家の青さとか、海とか、結構気にしたね。

 

 

武がたけしを殺す理由 」(北野武)より

これまでの作品との違い

  • 「ソナチネ」あたりまではこう、死ぬってことがあるんだけど、逃げていく死のような気がすんの。(中略)それで、今回の「HANA-BI」は向かっていったっていう感じだね、生きると死ぬとを自分でこう決断つけに行ったっていうか。逃避したんじゃなくて向かっていく感じあるけどね。

 

もう一つのエンディング

  • あれ初めはねえ、刑事が追っかけてくるでしょ? あれは本当はフェリーだったのね。フェリーに乗ってカミさんがベンチにいて、で、パッと見ると追っかけてきたふたりの刑事がいて、俺は空の拳銃を持ってて、いきなりこうやって向けると「撃っていいですよ」っつって、逸見さんのせがれ※1をボコンと殴って拳銃取り上げて、気絶してるから上にダンダンって二発撃つと寺島※2がふっとんで帰ってきて、それに拳銃を向けて向こうに撃たせて死んでしまうっていう。それで逸見さんのせがれが起き上がって「この拳銃空だったですよ」っつって「ああ、撃たされた」って感じでポカンとしてて、あとカミさんは死んでんだか生きてんだかわかんないようにフェリーの下で下向いてて終わりっていう。

※1……逸見太郎,※2……寺島進