『下世話の作法』(ビートたけし)のレビュー・感想

2014年10月5日

凡人こそ品格を持て!?ビートたけしに学ぶ「品」と「粋」!

下世話の作法 (祥伝社黄金文庫)

 

『下世話の作法』のもくじ

 

内容説明

この本は私の『聖書』である。下品な俺だから分かる「粋」で「品」のいい生き方とは。よーく読んで、今こそ日本人の原点に戻りなさい。

目次

1 品―品がある人は分相応の生き方を知っている(「礼」がなくなって日本人は下品になった;ごはんは黙って食べよう ほか)
2 夢―夢をかなえたらそこで人生は終わる(手が届かないから「夢」って言うんじゃないの?;夢は人格まで変える ほか)
3 粋―本当のかっこよさは気の使い方に現われる(高倉健さんの「粋」は、どこから来るのか;フグの刺身をごちそうになったけど… ほか)
4 作法―サルがパンツを穿いた瞬間から作法が始まった(「ちゃんと」すること;礼儀知らずの芸人が増えたのはなぜなのか ほか)
5 芸―生き方を「芸」にできれば品はよくなる(芸人は社会の底辺にいる;「売れない理由」だけはたくさんある ほか)

引用元:下世話の作法 / ビート たけし【著】 – 紀伊國屋書店ウェブストア

 

参考までに……

 下世話という言葉は形容詞としての使い方もされています。

 本書のタイトルの「下世話の作法」であれば、「噂好き(な人)の作法」「噂話の作法」といったところでしょうか。庶民の噂話の中であっても、最低限の品は持とうというのがたけしさんの考え方です。たけしさんが幼少期を過ごした足立区島根町は、いわゆる下町であり、貧乏な人も多い地区でした。しかし、人々は品というものを持っていたと、たけしさんは言います。

『下世話の作法』の概要・レビュー

不況の時代のよりどころは「品と粋」!?

 今の時代、不況だ、カネがない、仕事がない、寝るところもないって、昔の足立区に逆戻りみたいになっている。昔はもともとが貧乏だから気にならなかったけど、一度豊かさを味わった今の人は不安でしょうがなくなる。自分のよりどころが消えたように感じるのかもしれないね。
 でも、よりどころはあるよ。
 それが「品」や「粋」だと思うんだけど。

引用元:北野武(2011)『下世話の作法』初版第1刷,祥伝社,p.13(前置き)より

 この本では、そのタイトルの通り、たけしさんが品や作法について語っています。実際に読んでみると、品や作法を軸としつつ、対象となるテーマにまとまりはなく、思いつくままに書き綴ったという印象が強いです。世の中の様々な事象の中から、品のあるものや良い作法、下品な人や無作法さを見つけ、その構造を紐解いていく、といったところです。

 

たけしさんが見た下町の職人/平凡のススメ

 下町の職人は仕事が終わると、決まって小汚い居酒屋で酒を飲む。いつも行く店が決まっていて、作業着のまんま酒を飲んで「ああ、うめえな」と呟く。その姿がかっこいいんだ。
(中略)
 それは人生を達観しているところがあるからだと思うよ。「俺はこれでいいんだ」って納得してる。「将来、この仕事で成功してワッと行こう」なんて全然考えてない。ある程度は食うに困らないし、贅沢はできないけど暮らしはまあまあだし。それで「毎日仕事帰りに酒が飲めるなんてさ、こんな幸せなことはねえ」って感じで飲んでいるの。そのへんの雰囲気がいいなって思う。

引用元:北野武(2011)『下世話の作法』初版第1刷,祥伝社,pp.44-45

 この話はなかなか深いものがあります。「俺はこれでいいんだ」と平凡な生活に満足できること。現状維持を幸せと感じられるのは、ひょっとするととても品のいいことなのかもしれません。夢や希望を語る一方で、格差が広がる現在の世の中では、特にそうでしょう

 

 これと関連した話をもう一つ紹介しましょう。

「なりたい自分になる」なんてこともよく聞く。それで「自分探し」のたびに出るやつがいる。そういうやつらって、本当は自分のことを良く分かっているんじゃないの。自分には何もないということがさ。
(中略)
 自分探しは全部プラス思考じゃないか。変だなあ、どうして逆の発想ができないんだろう。プラスじゃなくてマイナス思考で考えれば「こんなことをしてないで、もっと地道に暮らそう」となるけど、それだって自分探しのはずだよ。
 俺は何の才能もない、ただ普通に働いて結婚して、子供をつくりゃいいんだって何で考えないのかな。

引用元:北野武(2011)『下世話の作法』初版第1刷,祥伝社,pp.81-82

 自分探しの旅で自分を見つけたという人は、一体どれくらいいるのでしょうか。ほとんどは何も見つからなかったのかもしれません。そして、そこで現実を目の当たりにして、その先の生き方を考えるのでしょうか?

 初めから「才能なんてない」と考えて平凡な暮らしをできればいいのですが、それができないのが現代人です。だからこそ、自分探しの旅をして、結果何も見つからず。時間と金と労力を無駄にしてようやく、現実を受け入れる覚悟ができるのかもしれません

 

それでも成功したい人へ、たけし流「成功の秘訣」!

 成功の秘訣はね、いちばんなりたいものじゃなくて、その人にとっては二番目か三番目の、違う仕事に就くこと。じぶんにはもっとやりたいことがあるんだけど、今すぐにそれをできる能力はないから違うことをやってます。それぐらい自分を客観的に見られるやつのほうが、成功する可能性は圧倒的に高い。

引用元:北野武(2011)『下世話の作法』初版第1刷,祥伝社,p.89

 これは、たけしさんが他の書籍やテレビなどでよく話すことの一つです。大成功している人ほど、二番目や三番目にやりたいことで上手く行っているという話です。具体的な例をあげると、例えばたけしさんも尊敬している故黒澤明監督。 黒澤さんは映画の分野で世界的な成功と評価を受けています。しかし、本当は画家になる夢を持っていたことは有名です。

 他にも、平成の時代にお笑いの世界で天下をとった松本人志さんは、幼いころは漫画家を目指していました。お笑いに興味はあったものの、芸人になるきっかけは相方の浜田さんの誘いでした。それがなければ印刷所に就職する予定だったそうです。また、メジャーリーグの歴史に名を刻んだイチロー選手は、本当はピッチャーを目指していました。これもたけしさんの「二番目の法則」に当てはまると言ってもいいかもしれません。

 このような例はいろいろな分野でたくさんあります。その理由はいろいろあるでしょうが、たけしさんは「客観視」だと言います。二番目くらいに憧れる分野の方が、一歩引いた位置から冷静に分析できるということです。言い換えれば、やりたいことではなく、できることの中で自分に興味のあるものを選ぶのが、成功の秘訣というわけです

 

感想

 粋や品について、たけしさんが「肩の力を抜いて」語っているのが本書の特徴です。誰にでも共感できるような庶民的なエピソードが満載であり、まるで、酒の席でたけしさんが横に座って、作法についていろいろな話をしてくれるといった趣です。

 

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