日本ハムファイターズはなぜ強い?まとめ(IT技術,育成,球団・球場経営)

2018年3月24日

これで納得! ファイターズはなぜ強い?


監督・選手が変わってもなぜ強い? 北海道日本ハムファイターズのチーム戦略

ファイターズの強さの秘密・球団経営 – もくじ

抜群のコストパフォーマンスの強豪チーム
  • 低い年棒でソフトバンク・巨人に対抗できる唯一のチーム
  • IT技術を球団経営・チーム強化に利用
日ハムの監督採用基準
  • チームの強化方針は「育成型チーム」
  • 栗山監督はまさに理想の監督
日本ハムファイターズの球団経営
  • 藤井純一氏の経営改革
  • 選手・コーチへの厳格な査定
  • 積極的な営業活動で次々に利益を出す
  • 藤井氏が果たせなかった球場運営

 

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抜群のコストパフォーマンスの強豪チーム

低い年棒でソフトバンク・巨人に対抗できる唯一のチーム

 札幌移転から現在までのファイターズの強さと人気の裏には、「ベースボールオペレーションシステム」の存在があります。これは簡単に言えば、野村ID野球やアメリカのセイバーメトリクスと同じ、データ野球のことです。IT技術が発展したことに伴って、野球のチーム力強化に加えて、球団経営にもIT技術を応用しようというシステムです。

 このシステムは育成・ドラフト・選手査定にも利用され、日本ハムは少ない費用で最大限の結果を出しています。システムを取り入れた2006年から2017年の12年間でBクラスは3回のみで、リーグ優勝は5回(日本一2回)。この間の優勝回数はソフトバンクと並んで球界1位。一方で年棒総額の平均値は12球団の中でも下位(2016年時点では9位(※『球団経営がわかればプロ野球がわかる』伊藤歩(2017)星海社,第一刷pp78-79])。つまり、選手の総年棒は平均以下なのに、ソフトバンクや巨人といった強豪かつ年棒の高いチームと長期に渡って互角に戦えるチームです。

IT技術を球団経営・チーム強化に利用

 日ハムの「ベースボールオペレーションシステム」の基本はITによる情報管理で、球団経営・チーム強化の両方に活用されています。チーム強化のための情報を見ていくと―

  1. 試合分析
  2. スカウト活動
  3. 選手査定
    (ドラフト、育成含む)
  4. 各球団別情報
  5. トレーナー情報

引用元:『監督・選手が変わってもなぜ強い?』藤井純一(2012)光文社,初版第2刷,pp156-157より抜粋・一部加筆

 システムのすごい点を一つ紹介すると、3.の選手査定は自軍のチームに留まりません。全球団の選手に加えて、ドラフト候補の社会人・大学生・高校生を含む総勢850人にも及ぶデータ化を行い、選手起用、育成、ドラフト指名、トレードなどに活用しています(『監督・選手が変わってもなぜ強い?』藤井純一(2012)光文社,初版第2刷,p.161)。

 日ハムでは若い選手が次々と登場し、大胆なドラフト・トレードでも話題を集めます。時にはファンから批判を浴びるような主力選手の放出も、データによる査定と限られた資金からくる判断の結果と言えます

日ハムの監督採用基準

チームの強化方針は「育成型チーム」

 上述のベースボールオペレーションシステムを見てもわかりますが、日ハムは「育成型チーム」を志向しています。別の言い方をすれば、「無駄な金をかけずに自前の選手で勝つ」。となると、それを理解した監督が必要になります。

 その上で、日ハムが監督に求めているものに「ファンサービス」があります。この2つの条件をクリアした人が、これまでの監督というわけです。

(参考:『監督・選手が変わってもなぜ強い?』藤井純一(2012)光文社,初版第2刷,pp164-168)

栗山監督はまさに理想の監督

 これまでの監督はヒルマン監督、梨田監督、栗山監督。彼らはファンサービスという点ではいずれも優れていたと言っていいでしょう。また、「育成型チーム」という方針に対してどのような考えをもっていたかはわかりませんが、ヒルマン監督・梨田監督は指導者経験があり、いずれも組織やチームの和を重んじる人物なので、球団及びチームの方針への理解も想像できます。

 一方で、指導者経験のない栗山監督が1年目でリーグ優勝したのは印象的です。栗山監督の就任には批判的な声も多かったですが、解説者としてテレビ出演経験が豊富かつ人気のあった栗山監督は、まさに適任だったと言えるでしょう。テレビではスポンサーの意向や視聴者の意見などさまざまなしがらみと制約の中で、視聴者(お=客さん)を楽しませなければなりません。組織の方針に従ってチームを強化し、ファンサービスを積極的に行うという日本ハムファイターズの考えにピタリと合う人物です。

日本ハムファイターズの球団経営

参考サイト:

藤井純一氏の経営改革

 日本ハムファーターズは、2004年に本拠地を北海道に移したのをきっかけに、球団経営の改革に着手しました。2007年には初の黒字を達成するのですが、そこにはセレッソ大阪の社長などを経験していた藤井純一氏の力があります。

【藤井純一氏略歴】
  • 1973年:近畿大学農学部水産学科卒業。日本ハム株式会社入社
  • 2000年:大阪サッカークラブ株式会社(セレッソ大阪)代表取締役社長就任
  • 2005年:株式会社北海道日本ハムファイターズ常務執行役員事業本部長就任
  • 2006年:同社代表取締役社長就任
  • 2011年:同社代表取締役社長退任。
    その後はアドバイザーとしてチームに貢献の他、大学教授・講師、スポーツ関連事業など多岐に渡って活躍

 当時の日ハム、というか各球団で当たり前となっていたのが、「球団の赤字はオーナー会社が補てん」という慣例でした。実際に多くの球団が赤字を抱えていて、それでも球団を持ち続けていました。それは、「広告費」という名目でした。

 しかし、スポーツビジネスの専門家である藤井氏は、それに異議を唱えます。当時の日ハムは年間数十億の赤字を出しており、過去一度予算達成をしたことのない企業でした。そこで、まず藤井氏は経費削減に乗り出します。

選手・コーチへの厳格な査定

「例えば、ある選手はファンから人気がある。その選手をクビにしたらファンが怒るんじゃないかと、実際には戦力外として考えているのに契約するということが球界にはある。でもぼくにはそれは考えられへん。11月に契約更改でクビにしても、2カ月間、貝になっておればいい。吉村さんに〝気にせんでクビ切ってええよ〟って言っていた。新しいシーズンになってキャンプが始まったら、クビにしたことなんかみんな忘れていますから」

引用元:「ファンを恐れない」球団黒字化への道【前日本ハム球団社長・藤井純一氏#4

 藤井氏からすると、かつて社長を務めたJリーグのチームと比べて、プロ野球では選手の査定は甘い。そこで、まずは選手査定を厳しくする。加えて、コーチ陣などにも同じように査定を行い、結果が出なかったり問題のある人物は出て行ってもらう。これによって経費削減と共に、チーム内の空気も引き締まったと言います。

積極的な営業活動で次々に利益を出す

 他にも、営業畑出身の藤井氏は、積極的に経営改善に乗り出します。例えば、球団オフィシャルグッズの販売です。これまでは代理店へ委託し、収入はロイヤリティという形でした。それを球団内部で完結させるというものです。しかも、商品の企画販売と商品管理まで行うと言う徹底したものでした。これによって利益率は大幅に上昇します。北海道のファンは初の地元チームを非常に愛しており、一度ファンになったらなかなか離れません。ですから、球団グッズは安定して収益をあげられる宝の山というわけです。

 他にも、現役引退選手による子供たちへの野球指導教室の有料化があります。これは反対意見も多くあったようですが、「価値のあるものには人は対価を払うもの」「お金を得るという意識があれば、指導の質も上がる」という信念のもと、実行します。結果的に人は以前と変わらず集まり、ここでも収益をあげることに成功しました。

 経営改革と聞くと大げさなことを想像してしまいますが、藤井氏が行ったのは「当たり前のこと」「身近なもの」です。こういう小さな積み重ねがあってこそ、球団と言う大組織を改革できるというわけです。

藤井氏が果たせなかった球場運営

 一方で、藤井氏が果たせなかった課題がある。2017年現在も問題になっている、札幌ドームの運営権と、新ドーム建設問題である。日本ハムファイターズは球場の運営権を持っていない。そのために、球場での収益が限定的になっているのだ。これは日ハムだけの問題ではなく、近年はパリーグを中心に改善傾向にあるが、プロ野球界全体の問題でもある。

【札幌ドームの経営・運営】
  • 所有:札幌市
  • 運営:第三セクター「札幌ドーム」。(出資:市内財界団・札幌市)
  • 経営状態:開業以来黒字経営
  • 札幌市の意向:財政難もあり、札幌ドームを手放す考えは無い。

 運営権については、指定管理者制度を利用する手もあるが、札幌市がそれを受け入れる可能性は低い。それならば、新たにドームや球場を作って本拠地にしようという考えである。しかし、球場建設には何百億というお金がかかる。地方球場の改築と言う手もあるが、アクセスの悪さと言った問題もある。そういうわけで、ここ数年札幌市とファイターズがもめているのだ。

 この大きな問題が片付けば、ファイターズの利益は上がり、いろいろな面でチームはより強く・大きなものとなる。

【参考サイトいろいろ】