日本ハムファイターズの強さの秘密・球団経営(『監督・選手が変わってもなぜ強い?』レビュー)

2017年11月9日

 

  • ベースボールオペレーションシステムとは
    • ITで「試合」「スカウト」「査定」「トレーナー」まで分析
    • バイエルン・ミュンヘン、セレッソ大阪の評価システムを応用
    • 選手能力、性格、態度などもデータに取り入れる
    • 日ハムの監督採用基準はファンサービス
  • 日本ハムファイターズの球団経営
    • 藤井純一氏の経営改革
    • 選手・コーチへの厳格な査定
    • 積極的な営業活動で次々に利益を出す
    • 球場運営という課題

ベースボールオペレーションシステムとは

ITで「試合」「スカウト」「査定」「トレーナー」まで分析

 ベースボールオペレーションシステムは、ITによる情報管理です。管理項目は多岐にわたりますが、だいたいの分類を見てみましょう。

  1. 試合分析
  2. スカウト活動
  3. 選手査定
  4. 各球団別情報
  5. トレーナー情報

 このうち、システム導入の背景、選手査定、監督採用の基準などに注目して、その詳細を見てみましょう。

バイエルン・ミュンヘン、セレッソ大阪の評価システムを応用

 北海道移転の翌2005年に、日本ハムファイターズ常務執行役員事業本部長に就任したのが藤井純一氏です。彼はかつて、日本ハムが主要株主を勤めているセレッソ大阪にて取締役事業部長を勤めており、その際にドイツのブンデスリーガの名門バイエルン・ミュンヘンの選手評価システムを取り入れた経験がありました。

 ドイツのサッカーチームと言えば合理的なチーム経営に徹底しており、フランチャイズなども含めてビジネス面でも成功していることで有名です。それを元にして野球に取り入れたのが、ベースボールオペレーションシステムというわけです。

選手能力、性格、態度などもデータに取り入れる

 ベースボールオペレーションシステムの特徴は、選手の細かい能力分析の他にも、性格や態度もデータとして活用していることです。創造性、強気or弱気、コミュニケーション能力、礼儀・マナーなどといった項目について、あくまで客観的に分析し、選手評価に利用しているそうです。

日ハムの監督採用基準はファンサービス

 ファイターズの人事に関して気になるのは、監督が変わってもチーム力を維持しているところです。
特に、コーチ経験のない栗山監督が1年目でリーグ優勝したのは印象的です。栗山監督の就任には批判的な声も多かったですが、編成側の考えを聞けばそれも納得です。監督の採用基準は「ファンサービスができる人」だからです。

 この点について、解説者として長い間人気を誇っていた栗山監督は、まさに適任だったと言えるでしょう。テレビの出演経験は、視聴者(=お客さん)が喜ぶための基本姿勢を学ぶのに役立ったでしょう。
また、かつて大学の経営学部で教授をしていたこともプラスになったそうです。ヒルマン監督や梨田監督の就任についても、ファンサービスを軸にした人選の結果だったようです。

 チーム力の強化はベースボールオペレーションシステムでしっかり行い、その一方でフランチャイズのためのファン獲得を第一の目標として監督を採用する。この結果、監督が変わってもチーム力が変わらず、黄金時代を築くことができたのでしょう。

日本ハムファイターズの球団経営

参考サイト:

藤井純一氏の経営改革

 日本ハムファーターズは、2004年に本拠地を北海道に移したのをきっかけに、球団経営の改革に着手しました。2007年には初の黒字を達成するのですが、そこにはセレッソ大阪の社長などを経験していた藤井純一氏の力があります。

 

  • 2005年:株式会社北海道日本ハムファイターズ常務執行役員事業本部長就任
  • 2006年:同社代表取締役社長就任

 

 2011年まで社長職を務めて経営改革を行い、その後もアドバイザーとして貢献しています。

 当時の日ハム、というか各球団で当たり前となっていたのが、「球団の赤字はオーナー会社が補てん」という慣例でした。実際に多くの球団が赤字を抱えていて、それでも球団を持ち続けていました。それは、「広告費」という名目でした。

 しかし、スポーツビジネスの専門家である藤井氏は、それに異議を唱えます。当時の日ハムは年間数十億の赤字を出しており、過去一度予算達成をしたことのない企業でした。そこで、まず藤井氏は経費削減に乗り出します。

選手・コーチへの厳格な査定

「例えば、ある選手はファンから人気がある。その選手をクビにしたらファンが怒るんじゃないかと、実際には戦力外として考えているのに契約するということが球界にはある。でもぼくにはそれは考えられへん。11月に契約更改でクビにしても、2カ月間、貝になっておればいい。吉村さんに〝気にせんでクビ切ってええよ〟って言っていた。新しいシーズンになってキャンプが始まったら、クビにしたことなんかみんな忘れていますから」

引用元:「ファンを恐れない」球団黒字化への道【前日本ハム球団社長・藤井純一氏#4

 藤井氏からすると、かつて社長を務めたJリーグのチームと比べて、プロ野球では選手の査定は甘い。そこで、まずは選手査定を厳しくする。加えて、コーチ陣などにも同じように査定を行い、結果が出なかったり問題のある人物は出て行ってもらう。これによって経費削減と共に、チーム内の空気も引き締まったと言います。

積極的な営業活動で次々に利益を出す

 他にも、営業畑出身の藤井氏は、積極的に経営改善に乗り出します。例えば、球団オフィシャルグッズの販売です。これまでは代理店へ委託し、収入はロイヤリティという形でした。それを球団内部で完結させるというものです。しかも、商品の企画販売と商品管理まで行うと言う徹底したものでした。これによって利益率は大幅に上昇します。北海道のファンは初の地元チームを非常に愛しており、一度ファンになったらなかなか離れません。ですから、球団グッズは安定して収益をあげられる宝の山というわけです。

 他にも、現役引退選手による子供たちへの野球指導教室の有料化があります。これは反対意見も多くあったようですが、「価値のあるものには人は対価を払うもの」「お金を得るという意識があれば、指導の質も上がる」という信念のもと、実行します。結果的に人は以前と変わらず集まり、ここでも収益をあげることに成功しました。

 経営改革と聞くと大げさなことを想像してしまいますが、藤井氏が行ったのは「当たり前のこと」「身近なもの」です。こういう小さな積み重ねがあってこそ、球団と言う大組織を改革できるというわけです。

球場運営という課題

 一方で、藤井氏が果たせなかった課題がある。2017年現在も問題になっている、札幌ドームの運営権と、新ドーム建設問題である。日本ハムファイターズは球場の運営権を持っていない。そのために、球場での収益が限定的になっているのだ。これは日ハムだけの問題ではなく、近年はパリーグを中心に改善傾向にあるが、プロ野球界全体の問題でもある。

参考:

【札幌ドームの経営・運営】
  • 所有:札幌市
  • 運営:第三セクター「札幌ドーム」。(出資:市内財界団・札幌市)
  • 経営状態:開業以来黒字経営
  • 札幌市の意向:財政難もあり、札幌ドームを手放す考えは無い。

 運営権については、指定管理者制度を利用する手もあるが、札幌市がそれを受け入れる可能性は低い。それならば、新たにドームや球場を作って本拠地にしようという考えである。しかし、球場建設には何百億というお金がかかる。地方球場の改築と言う手もあるが、アクセスの悪さと言った問題もある。そういうわけで、ここ数年札幌市とファイターズがもめているのだ。

 この大きな問題が片付けば、ファイターズの利益は上がり、いろいろな面でチームはより強く・大きなものとなる。

【参考サイトいろいろ】