ベースボールオペレーションシステム(BOS)とは?[日本ハム,吉村浩,GM,ドラフト,育成]

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ベースボールオペレーションシステム(BOS)とは? – もくじ

  • ベースボールオペレーションシステムとは何か?
    • 限られた資金で効率的に戦力を上げる
    • IT技術を球団経営・チーム強化に利用
    • 全球団の選手・社会人学生までデータ化
    • 選手の性格・態度も分析
    • システムの効果はチーム成績が物語る
  • ベースボールオペレーションシステム開発の経緯
    • 吉村浩氏の貢献
    • システムの核は吉村浩氏の頭脳
    • バイエルンミュンヘン,セレッソ大阪の評価システム
  • システムの活用例・詳細
    • 現役・アマチュア選手を同じ指標で比較
      新人はファームで1年戦える選手に絞る
    • スコアラー・スカウトの膨大な情報
  • まとめ

ベースボールオペレーションシステムとは何か?

限られた資金で効率的に戦力を上げる

 プロ野球でのデータ活用にはいくつかの流れがあります。順番に並べていくと、「野村ID野球」「アメリカのセイバーメトリクスの影響」そして「ベースボールオペレーションシステム(日本独自の本格データ分析システム)」です。日本ハムファイターズが他球団に先駆けて2006年に導入し、今では同様のシステム利用は多くの球団で採用されています。

 データ利用の目的は、例えばチーム運営に関しては「限られた資金を効率的に使って戦力を上げる」と共通しています。他にも目的はたくさんありますが、出発点はここです。さらに応用して、効率的な球団経営にも生かすという面もあります。

IT技術を球団経営・チーム強化に利用

 日ハムの「ベースボールオペレーションシステム」を例にあげると、ITによる情報管理は球団経営・チーム強化の両方に活用されています。

【チーム運営】

①試合分析 ②スカウト活動 ③選手査定(ドラフト、育成含む) ④各球団別情報 ⑤トレーナー情報

【球団経営】

⑥チケット販売 ⑦マーチャタイジング(グッズ販売等) ⑧ファンクラブ運営 ⑨お客様窓口 ⑩管理部門

監督・選手が変わってもなぜ強い?』藤井純一(2012)光文社,初版第2刷,pp156-157より抜粋・一部加筆

 球団経営とチーム運営を分断せず一体化しているところがポイントです。あくまでチームは球団という組織の一部であり、組織単位で戦略を練っていき、同じ方針のもとで動いていくという狙いがあります。

 例えばお金を使ってチーム編成をするのは球団である一方、選手を起用して戦うのはチームであり、選手たちの努力によって球団の収入は左右されます。球団とチームの情報管理を一体化すれば、これらの面で統率がとれ効率的に運営できるというわけです。

全球団の選手・社会人学生までデータ化
選手の性格・態度も分析

 一つポイントをあげると、3.の選手査定は「自軍の選手」「全球団の選手」「ドラフト候補の社会人・大学生・高校生」まで及び、総勢850人にも及ぶデータ化により、選手起用、育成、ドラフト指名、トレードと多岐に渡り活用しています(『監督・選手が変わってもなぜ強い?』藤井純一(2012)光文社,初版第2刷,p.161)。

 さらにその内容は「能力分析」に加えて「性格・態度」(創造性、強気or弱気、コミュニケーション能力、礼儀・マナーなど)を客観的に分析し、選手評価に利用しています。

システムの効果はチーム成績が物語る

 システムを取り入れた2006年から2017年の12年間でBクラスは3回のみで、リーグ優勝は5回(日本一2回)。この間の優勝回数はソフトバンクと並んで球界1位。一方で年棒総額の平均値は12球団の中でも下位(2016年時点では9位[※『球団経営がわかればプロ野球がわかる』伊藤歩(2017)星海社,第一刷pp78-79])。つまり、選手の総年棒は平均以下なのに、ソフトバンクや巨人といった強豪かつ年棒の高いチームと長期に渡って互角に戦えるチームです。

ベースボールオペレーションシステム開発の経緯

吉村浩氏の貢献

参考:日本ハム日本一の陰に吉村GM有り 共闘3人が語る

【吉村浩 経歴】
  • 1964年山口県出身。
  • 早稲田大学卒業
  • スポーツ紙記者を経て渡米。
  • 1992年 NPBパ・リーグ事務局在籍。
  • 1999年 米デトロイト・タイガースGM補佐(~2001年)
  • 2002年 阪神・総務部在籍(~2004年)
  • 2005年 日本ハムファイターズGM補佐就任
    高田茂氏がGM就任、2007年からは山田正雄氏。
    藤井純一氏が常務執行役員事業本部長就任。翌年球団社長に
  • 2015年 日本ハムファイターズGM就任。チーム統轄本部長・取締役兼務。

 日本ハムファイターズの改革は、球界に顔の広いGMの高田茂氏、球団社長の藤井純一氏、そして球団の頭脳である吉村浩氏が中心となって進めていきました。日ハム躍進の立役者と言って良いでしょう。

 さて、吉村浩氏はネットやメディアでの情報が少ないですが、日本の球界では良く知られた人物。若い頃にメジャーリーグでGM補佐をしたというのは驚きです。こんな経験をしている野球関係者はごく少数でしょう。

ベースボールオペレーションシステムの核は吉村浩氏の頭脳

 そして、ベースボールオペレーションシステムは吉村氏の知識と経験が核となっているようです。デトロイトタイガース時代に学んだ本場のチームマネジメントの手段を元に、様々なアレンジを加え、初期投資に実に2億円の費用をかけ完成します。さらに、データシステムは情報がツ年更新されます。毎年その費用は数千万にもなるようです。

 ベースボールオペレーションシステムの詳細部分は企業秘密となっていますが、そのヒントとなる情報はいくつかあります。

「吉村君が、ある球団のデータを持ってきた。主力になっている高卒野手は、1年目からファームで年間何打席以上、立っています。で、何年後に1軍で活躍していますとか。投手なら年間何イニング以上を投げていますとか。それはすごいデータだった」

引用元:日本ハム日本一の陰に吉村GM有り 共闘3人が語る

 実際に日ハムでは、すでに活躍している選手の二軍時代の成績などを遡って調べ、活躍する選手とそうでない選手を見分けることができるようです(『監督・選手が変わってもなぜ強い?』藤井純一(2012)光文社,初版第2刷,pp159-162参考)。

バイエルンミュンヘン,セレッソ大阪の評価システム応用

 先ほどもちらっと紹介しましたが、北海道移転の翌2005年、日本ハムファイターズ常務執行役員事業本部長に就任したのが藤井純一氏です。彼はかつて、日本ハムが主要株主を勤めているセレッソ大阪にて取締役事業部長を勤めており、その際にドイツのブンデスリーガの名門バイエルン・ミュンヘンの選手評価システムを取り入れた経験がありました。

 ドイツのサッカーチームと言えば合理的なチーム経営に徹底しており、フランチャイズなども含めてビジネス面でも成功していることで有名です。ベースボールオペレーションシステムいはそういった海外サッカーのシステムの要素も入っているわけです。

(『監督・選手が変わってもなぜ強い?』藤井純一(2012)光文社,初版第2刷,pp159参考)

ベースボールオペレーションシステムの活用例・詳細

現役・アマチュア選手を同じ指標で比較
ドラフトはファームで1年戦える選手を獲得

7パーセント──。

 この数字は、ファイターズが独自に調べた“レギュラー以外の選手がゲームに出る割合”なのだという。ファイターズではこの7パーセントという数字をもとにチームを編成してきた。要するに、控えの選手が試合に出る割合は7パーセントなのに、その部分に多額の投資をしてもコストパフォーマンスに見合わないという発想で補強を考えてきたということだ。
(中略)
「今、ウチにいる選手と、これからドラフトにかけようという選手を同じ指標で比較できます。だから、ドラフトで獲りたい選手がファームの試合に出られるレベルにあるかどうかをチェックできるんです。ウチが育成枠を使っていないのは、育成というシステムが未知数だということもありますが、それよりも彼らのレベルではプロの試合に出られないからなんです。(中略)ウチは獲った後、一定のレベルに達したら、ファームのレギュラーとして1年間、使うという方針ですから(中略)。打てる、打てないに関係なく、1年間、ファームのレギュラーとして試合に出る力のある選手だけを獲るんです」(2013年山田正雄GM)

引用元:【プロ野球】日本ハムの強さの秘密。 常勝の礎を築いた「7パーセント」のこだわり

 ここにも、「限られた資金で効率よく戦力を高める」というシステムのそもそもの目的がうかがえる。ドラフト選手はどうしても「将来性」に注目しがちだが、あくまで現役選手と同じ条件で比較し、最低限ファームでレギュラーを張れる選手を獲る。育成面でも徹底的に無駄を排除していることがわかります。

 ※高田茂氏、山田正雄氏についてはこちらの記事もおすすめです。

スコアラー・スカウトの膨大な情報

 ちなみに日本ハムのスカウトは、その多くがスコアラー経験者でもある。プロの選手のデータや、クセを見抜く目で、アマ選手に点数をつけていく。

「全国に散らばったスカウトから、毎日いろんな選手のデータが積み上がっていくわけです。例えば中田でいうと、今日の試合では総合で80点の『即戦力クラス』という評価が入る。でも別の日に違うスカウトが見に行くと、スタンスを崩していて50点。『3年後なら使える』という評価がくだされるかもしれない。そうしたデータが、全国のあらゆるアマ選手別に、毎日毎日集まってくる。それをこまめに集計し、何度も何度も会議を重ねる」

引用元:「中田の4番」も「斎藤の開幕投手」も「パ・リーグ優勝」もすべて計算ずくだった「日本ハムモデル」勝てる組織はこう作る

 これだけのデータ蓄積と分析があれば、チームも強くなるはずです。システムがすごいのはもちろんですが、それを支える現場の職員の方の努力あってのことです。

まとめ

 各球団が独自にベースボールオペレーションシステムを開発・利用している現在。毎年のように進化していき、もはやプロ野球はデータの戦いと言ってもいいくらいです。

 一つ思うのは、ベースボールオペレーションシステムとについてファンや一般人が触れる機会はほとんどないということ。専門家の方がそういった著書を書いてくれたらなあ、と。最近は野球の経営に関する本も増加していますが、これからさらに一歩突っ込んだ本を出して欲しいです。