TPP交渉の今後と代替案

アメリカ抜きのTPPの可能性
RCEP,FTAAPなどの代替案

TPPがビジネス、暮らしをこう変える

TPPの米離脱の問題点とは?

 アメリカのTPP離脱で騒がれているけど、実際に何が起こるのか? 問題点は何なのか? それをおさらいしてみる。

  1. そもそもTPPが発効できない可能性
  2. アベノミクスの計画はTPP前提だった=経済成長のチャンスを失う
  3. TPPは中国を牽制する意味もあった

 

 日本にとって大きな問題点はこの3つ。一番の問題は、そもそもTPPが発効できないというもの。発効要件として「参加国のGDP合計が85%以上」というものがある。TPP参加国を見ると、先進国はアメリカ、日本、カナダ、オーストラリアといったところ。あとは南米や東南アジアの中進国が多い。世界でも2番目の大国アメリカは、TPP参加国の総GDPの6割を占める。ここが抜けると、当然発効要件を満たすことができない。

 2つ目はアベノミクスが狂うということ。今のところアベノミクスは一定の成果を上げている。4年後のオリンピックも含めて、景気は間違いなく上向いてきた。有効求人倍率や株価の上昇としてそれははっきり出ていた。そんな良い流れの中で、大きな経済成長のチャンスであるTPPが頓挫するというのはかなり痛い。政府もTPPありきで経済政策を進めてきたので、間違いなく悪影響は出てしまう。日本にとってはやはりここが一番痛い。

 正直なところ、TPPによって絶対に経済が上向くというわけじゃない。ただ、日本ならTPPがあってもなくても、どっちでも経済を上向かせる力はある。問題は、「TPPに参加する」ことを前提に、ここまで経済政策を進めてきたこと。数年かけて準備してきたことが、少なくとも一部は無駄になってしまうから、国にとって大きな損失となるわけだ。

 3つめはアジアにおける中国の牽制。特に今は領海をめぐって中国と日本が衝突することが多い。そこで、中国が参加しない巨大な貿易協定を組むことで、外交上の手札が一つ増えるということ。これは中国相手にさまざまな分野で交渉を行う際に、必ず役立つはずだった。中国はTPPとは別に、アジア圏での大型貿易協定を進めているので、そことの対抗という駒も失ってしまう。

 このように、環太平洋、アジア、自国、3つの面で日本にとって問題が起こってしまうというわけだ。

TPPの代替案と「RCEP」

 TPPは環太平洋戦略的経済連携協定ということで、太平洋をぐるりと囲む国々の協定。この他にも世界にはいろいろな自由貿易協定がある。そのうち、東アジア地域を中心としたものにRCEPがある。一言で言えば、日中韓印豪NZとASEAN諸国の間での大型自由貿易協定。こちらにはアメリカは参加しないが、アジアの大国が含まれるために、総GDPや貿易規模においてTPPに匹敵する。

 RCEPの特徴を見ていくと……

  1. TPPよりも自由化率は低い
  2. 労働分野、環境分野の自由化は対象外
  3. 合意は来年以降(発効はさらにその先になる)
  4. 中国が主導権を握る可能性

 

 まず大きいのは、ASEANの途上国が多く参加するため、途上国でも入りやすい協定となっている。過度な自由化をしないことや対象外の分野を設けるなどがそれだ。これから成長する国々が多く参加することで、アジアの成長を日本が取り込める可能性も大きい。

 一方で、問題点はまだ合意すらされていないこと。発効までは数年かかってしまう。加えて、RCEP参加予定国の中では経済規模で中国が圧倒的。すでに中国は、RCEPで主導権を握ろうという動きを見せている。交渉を上手くやらないと、中国に良いところをもっていかれるだけでなく、外交の際にRCEPを手札の一つとして使うのは間違いない。

TPPの代替案とFTAAP

 RCEPでは中国に主導権を握られてしまう。そこで、もう一つの選択肢としてFTAAPがある。

 その名の通り、アジアに太平洋地域を加えた、TPPやRCEPよりも更に大きな自由貿易協定。まだまだ構想段階のもので、FTAAPに向けて二つの流れがある。一つはTPPを基礎にアジア諸国を加える。もう一つは、RCEPを中心として拡大していく案。TPPとRCEPは条件面で前述の違いがある。TPPが基礎になると、途上国は入りにくい。一方、RCEPを中心とすると、間口の広い協定となる。

 ただ、アメリカと中国が条件面で合意できるかという大きな問題点がある。貿易摩擦が激しく、世界情勢においても覇権を争う大国同士なので、協定を結ぶにはかなり時間がかかる。

FTAAPを見据え、RCEPで交渉を上手くやるのが現実路線

 TPPが実質的に発効不可能となった今、日本はどのような手を打つべきか? 現時点でトランプ次期大統領は「他国と二国間交渉を進めていく」と明言している。日本はアメリカと貿易交渉を進めつつ、アジア地域の成長を取り込まなければならない。そこには中国の存在がある。

 RCEPでは中国が主導権を握り、自国に有利な交渉を進めようとしてきた。そこで、日本はTPPをちらつかせて中国を牽制してきた。ところが、TPPが頓挫してしまい、日本は駒を失ってしまった。こうなれば、RCEPで中国と上手く交渉していくしか無い。参加予定の中韓印豪NZ、そしてASEAN諸国の中で、日本と協調できる国を見つけていき、交渉において中国に対抗できるようにするのが目標となるだろう。

 今後の経済成長を考える上で、アジアの途上国の成長を取り込むことは一番大事と言っていい。ASEAN諸国がRCEPに乗り気なことを考えると、今のところ参加しない理由はない。ここでいかにして中国を牽制し、交渉を上手く進めるか。これに、日本の経済の未来がかかっていると言っても過言ではない。

 

参考:TPPのメリット・デメリット

【TPP基本情報】

【最新動向】

 

【メリット】

  1. 輸入品を安く購入できる(肉、野菜・果物、乳製品など主に農業)
  2. 輸出UP(主に製造業)⇒国内企業の雇用・収入UP
  3. 海外での競争力向上(逆に非参加の場合、例えば韓国家電製品との競争力失う)
  4. 途上国の市場に参入できる

【デメリット】

  1. デフレの可能性
  2. 農業へのダメージ
  3. 規制緩和による食の安全低下(遺伝子組換え、添加物など)
  4. 医療保険の自由化・混合診療の解禁により、国保制度の圧迫や医療格差が広がりかねない


混合診療の解禁⇒
公的保険の負担増→公的保険料・負担率引き上げ/医療保険自由化の影響→民間保険の需要増
⇒公的保険の範囲が縮小