大成長路線を目指す、トランプ大統領の経済政策

リスクを伴う大成長路線に賭ける

トランプ熱狂、アメリカの「反知性主義」

オーソドックスな経済政策

 トランプ大統領の就任で何が変わるか? 日本にとって影響が大きいのは、やっぱりTPP(貿易)、軍事、為替の3つだ。じゃあアメリカ国内ではどうか? 反トランプ派が特に騒いでいるのは彼の差別的で過激な発言だけど、実際に何が変わるかってのに目を移せば「経済と外交」になる。トランプの主義主張はいろいろあるけれど、一つ大きなテーマが「自国の経済を保護しつつ成長路線を取る」ってこと。TPP離脱を匂わせたり、移民に排他的な姿勢や、為替に関して対中・対日を牽制しているのも、結局は自国経済の保護につながってくる。

 一方で、国内では何をするか? これはちょうど日本がやってるアベノミクスと同じで、ある意味スタンダードな経済政策。アベノミクスの3本の矢では「金融緩和」「財政政策」「規制緩和による民間投資促進」がある。トランプがやろうとしてるのは、「金融緩和」「インフラ投資」「法人減税」などがある。インフラ投資は国の金使って需要を創出しようってことだから、財政政策とやることは似てる。法人減税は、民間企業が動きやすくするって意味じゃ、規制緩和と方向性は同じ。極論や暴言ばかりが取り上げられるけど、トランプの経済政策は案外オーソドックスなものだ。

 もちろん、いいことばかりじゃない。成長のためのリスクを背負うってことが問題視されてる。また、本当に実行できるかどうかっていう問題もある。この辺をしっかり見ていくのが重要だろう。

 

オバマ政権とトランプ政権の経済政策比較

 トランプの経済政策を見る上で、オバマ政権はどうだったか? オバマは2008年のリーマン・ショック直後に就任したとあって、金融に関してはかなり慎重な姿勢をとっていた。その象徴として金融規制のためのドッド・フランク法ってのがあったんだけど、トランプはそれを撤廃しようという考え。安定をとるか、リスク承知で成長を目指すか。

 リーマン・ショック後の世界の経済は、安定しつつもジリジリ後退していく印象が強かった。日本も同じだったけど、アベノミクスで無理矢理にでも成長を目指してようやく経済が上向いてきた。それでも、日銀は無茶な金利政策をしていたし、物価はいまだに上がらない。ちょっとやそっとの経済政策じゃ、簡単には経済は上向かないってのが今の状況。

 税制について言えば、オバマ政権は社会保障を充実させようという方向性だった。保険医療制度改革のオバマケアがその象徴。一方で、トランプはオバマケアの見直しを考えている。そして、大幅な法人減税も同時に主張。その他、低所得者向けの減税なども言及している。ただし、トランプの税制についての考えはまだ見通しが立っていないのが現状。減税して財政支出を増やせば、当然政府の赤字は膨らんでしまう。それをカバーできるほどの経済成長ができるかどうかがポイントになる。

トランプノミクスはアメリカを復活させるか?

 オバマ政権では金融規制や社会保障の充実から言って、リスクを回避しようっていう意図があった。これに対してトランプは、経済成長を第一に掲げる。そのために金融緩和して、法人税も減らす。景気変動や財政赤字のリスクを承知で、経済成長に賭ける。加えて、TPP脱退、為替での対中・対日の牽制によって、自国の産業を保護する。とにかくアメリカ国内の経済成長に特化しようという考え。

 経済成長が実現するには時間がかかる。アベノミクスでもそうだけど、その間国民をどう納得させるか。その時々で起こる問題をどうかわしていくか。野党の反発にどう対処するか。考えてみれば、アベノミクスは今のところかなり上手くいっている。何より、平均賃金や有効求人倍率の上昇で、国民が実感できているのが評価できる。日銀の金融政策とか、格差拡大とか、財政赤字とか、ケチをつけようと思えばいくらでもできる。でも、日本で長期政権を築いて、はっきりとした方向性を示して、一定の成果を出しているってのはすごい。

 もし、アベノミクスがアメリカで起こればどうなるか? まず経済規模で日本より大きいので、成果は日本の数倍になる。加えて、アメリカは世界経済の中心だから、それが世界中に波及する。そうなれば願ったり叶ったり。

 たしかに、トランプは極端なことを言っているところはある。選挙時に言っていた公約も、修正する部分は多々ある。でも、成長路線だけは一貫して欲しい。そこを見失わず、足並み揃えた政策を取れれば、経済成長のチャンスは大いにある。