「クリスマス・キャロル」のレビュー・感想

2014年8月12日

イギリスの国民的作家ディケンズによる、クリスマスに起こる不思議な出来事

クリスマス・キャロル (新潮文庫)

 

もくじ

あらすじ

 ケチで陰気で皮肉屋の老人スクルージは、数年前に共に事務所を経営していた友人と死に別れ、今は家族持ちの書記の男と仕事をしている。クリスマスの前夜、街はにぎわい始め、事務所には寄付金集めの男や、スクルージの甥がやってきて、お祝いの言葉をかける。書記の男も、翌日に、一年でたった一度の休日をとり、家族でお祝いをする予定だった。しかし、スクルージはクリスマスを祝う気などさらさらなく、彼らに嫌味と皮肉の言葉を浴びせていた。
 彼は仕事を終えて家に帰ると、ふとしたことがきっかけで、死に別れた友人マーレイのことを思い出す。そして、彼の前にマーレイの亡霊が現れる。亡霊は怒り、叫び、苦しんでいる様子で、彼に生き方を改めるように告げ、これから三人の幽霊がやってくることだけ言い、消えていった。その後、スクルージは三人の幽霊と共に、「過去・現在・未来」のクリスマスを旅することとなる。

 過去のクリスマスでは、幼い頃の心の綺麗な自分を見て、愛や優しさといったものを思い出す。そして、過去の悲しい思い出を見て、ひどく後悔をする。現在のクリスマスでは、貧乏ながらも楽しく暮らす書記の家族に、ささやかな幸せを見る。また、甥の家族のパーティーでは、甥の口から自分への同情の言葉を聞く。また、彼らの持つ朗らかさや善意などを目にする。これらの旅から、スクルージの心情は徐々に変化していく。人を愛する気持ちや、感謝、そして、人を助けることの大切さを思いだし、心を入れ替えようと決心した。
 しかし、未来のクリスマスで、彼は自分の死を目にすることになる。未来では、彼は誰に看取られることなく、孤独に死んでいった。わずかに残った遺品も乞食に奪われるという、ひどい最期だった。そして、彼の死に心を動かされた者はといえば、彼が金を貸していた貧乏な夫婦くらいだった。ひどい未来を目にし、スクルージは幽霊に救いを求めた。
 目を覚ました彼は、すっかり改心し、クリスマスの街へ出て行った。そして、心からクリスマスを祝い、人びとに感謝と善意をふりまいていった。

 

 

解説

 

 (参考:「クリスマス・キャロル」「チャールズ・ディケンズ」)

考察・感想

 【比喩の多様について】

 この小説は描写や説明の中で「例え」を多く使い、独特の言い回しによって面白さを出している。しつこいくらいに比喩を使うため、作品には独特の雰囲気やリズムがある。

【キャラクターについて】 

 この物語での大きなテーマは、「二面性」だと思う。例えば、主人公の過去と現在における二面性、また、彼を取り巻く人々が彼の前で見せる姿と、家族の前で見せる姿の二面性などがそうだ。ただ、それは人びとの表の顔と裏の顔を見せ、批判的に捉えるといったものではない。むしろ、人間である以上、二面性を持っているのは当たり前で、それをありのままに描くことで人びとの正直さを表現している。だから、物語に出てくる人々には非常に良い印象を持つことができる。

 さらに、貧乏な家族や、朗らかな人びとを描くことで「幸せ」や「喜び」といったものを見直そうという意図が見て取れる。貧しい家族の幸せな様子を強調することで「幸せ」について、朗らかで善意に満ちた人びとを描くことで「喜び」について、それぞれ見直そうという意図が見て取れる。つまり、何ものにもとらわれない、純粋な意味での「幸せ」や「喜び」が描かれている。それらが嫌味で皮肉ばかり言う、守銭奴の主人公と対比されている。このような意味で、物事の価値観についても「二面性」を描いていると思った。